寄稿講師同行ツアー「風来人」
『戦国廃城を歩く~川崎市の城を訪ねる~』講師・大竹正芳)


◆はじめに

 去る7月21日の日曜日、『戦国廃城を歩く』は川崎市多摩区の城跡巡りをいたしました。私が講師を務めるこのシリーズは七年間続いているお城を訪ねる講師同行ツアー(風来人シリーズ)です。関東、静岡、甲信を中心に他社では絶対行かないような名も知れない古城歩きをしているため、これまで城跡めぐりをされていた方々にも「一人だと行きづらい場所にバスで行ける」と好評です。

 今回は身近な城を訪ねました。最初に訪れたのは、よみうりランドの裏山にある小沢城でした。読売ジャイアンツ球場に行く坂道のカーブのコーナーに城の入り口があります。

小沢城入り口付近
小沢城入り口付近


小沢城址案内板
小沢城案内板


◆戦国時代前期ー小沢城、自然地形を生かした寺尾城跡

 
下見で調べて、ここから入るのが一番行きやすいルートでした。前回からお世話になっている添乗員が前もって現地を訪ね、直ぐ近くに穴場の駐車場を見つけられて予約をしていました。そのため城跡にはスムーズに行けました。
 小沢城は尾根を雛壇状に造成して、尾根道の両端には堀切(尾根道を掘り割る堀)で切られ富士塚、小沢峰、浅間山の三つの山頂を中心に城郭が展開しています。また、麓には穴澤天神社が鎮座しています。山の斜面を大きく造成しているのですがあまり技巧的ではありません。戦国時代前期のありようが見て取れます。

 ここから20分程バスで移動して今度は菅馬場の寺尾台団地に向かいました。団地がある台地は下から見るとちょっとした小山です。その台地の北端に寺尾城跡があります。この城の道路から台地に登る道がお城の大手通です。道はV字に掘り割られた切通し道で、崖側は上幅1.5mほどの土塁になっています。道は途中で折れ曲がり、道を見下ろす形で城兵に守らせるための平場が斜面を造成して設けられています。道を登りきると遊歩道が設けられた原っぱになっています。別段、お城らしいところがありません。このお城は自然地形をそのまま利用した天然の要害でした。敵が昇ってくる坂道さえ押さえればよかったわけです。おそらく古いタイプの要害に違いありません。本来なら台地続きに堀が設けられていたはずですが、今ではマンションが立ち並び、改変されています。マンションの中の公園には発掘で見つかった九世紀の夢殿のような八角堂の基壇が再現されています。

寺尾城の大手通
寺尾城の大手通


 お昼は登戸駅前の中華のお店でから揚げ定食を食べました。お昼はいつもちょっと穴場的な場所をツアー企画担当者がセレクトしてくれます。お食事にはコーヒーなどのドリンクがつき、ご飯とスープはお代わり自由でした。

食事1
食事2


◆桝形山城と日本民家園

 午後は生田公園の日本民家園の裏山にある桝形山城に行きました。ここも自然地形の要害ですが整備され公園になっています。本丸跡のエレベーター展望台で上に上がると関東平野が見渡せます。この日は残念ながら霞がかかっていて、晴れていれば見ることが出来る新宿副都心や池袋サンシャインシティ、東京タワー、スカイツリー、横浜ランドマークタワー等が見れませんでした。少し残念ではありましたが、ずっと雨続きの中、この日だけ曇りでした。

『戦国廃城を歩く』は7年間続けていますが、豪雪で中止になったことが過去一度だけで、雨天はほとんどありません。ジンクスは未だに守られています。

 桝形山城を見た後は麓の日本民家園を自由行動で時間をとって見学しました。日本各地の古民家が二十五件移築されていて、たいへん見ごたえがありました。

桝形山城展望台の風景
桝形山城展望台からの風景


川崎市立日本民家園
川崎市立日本民家園

◆おわりに

 帰りのバスも渋滞にも巻き込まれず、無事に予定より早く新宿駅前に到着しました。バスの中では次回以降のツアーのご案内と申込書が配られました。ご案内のチラシには企画担当者より心のこもったメッセージが書き込まれていました。我々スタッフ一同はこのようにお客様に楽しくてより良い旅がご提供できるように日々頑張っております。今後とも、まいたびと「戦国廃城を歩く」を是非ともごひいきにして頂きますようよろしくお願い申し上げます。

戦国廃城を歩く・同行講師 大竹正芳

ごあいさつ1

ごあいさつ2



■コース
新宿駅前8時発=<貸切バス> =(首都高速・中央自動車道)稲城=小沢城(比高52m、歩程1時間▽神奈川県と東京都の県境に所在する鎌倉幕府御家人小澤氏の城と伝わる)=(菅)寺尾城(比高66m、歩程40分▽寺尾若狭守の城という)=桝形山城(比高60m、歩程1時間▽北条早雲の陣城として利用、武田信玄に攻められたときは地元の横山氏が籠城したという)=川崎市立古民家園(歩程1時間▽日本各地から江戸時代の古民家20棟以上が移築されている)=(東名道・首都高速)=新宿19時頃着

 
 ※その他の風来人ツアーは下記URLからご確認ください。




●筆者プロフィール●
大竹 正芳(おおたけ せいほう) 日本画家・歴史研究家
<略歴>
• 1965年 伊東深水の内弟子、大竹五洋の長男として生まれる
     深水に「正芳(まさよし)」と名付けられる
• 1990年 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業
• 1993年 歴史考古学者(日本城郭史学会代表)西ヶ谷恭弘氏に師事 
• 1994年 鎌倉芸術館にて個展
• 1996年 NHK「堂々日本史」にて真田丸の復原考証協力
• 1998年  銀座スルガ台画廊「五月展」
• 1999年  ギャラリー元町、ギャラリーGOKURAKU亭にて個展
• 2001年  池袋東武、上野松坂屋、水戸京成の各デパートにて個展
• 2002年  池袋東武、上野松坂屋、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2003年  池袋東武、上野松坂屋、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2004年  池袋東武、上野松坂屋、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2005年  池袋東武、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2006年  池袋東武、上野松坂屋、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2007年  池袋東武、船橋東武、上野松坂屋、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2008年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2009年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2010年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
     江ノ島展望灯台の名称に応募した「江ノ島シ―キャンドル」が採用される
• 2011年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2012年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2013年  池袋東武、船橋東武、渋谷東急本店、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2014年  池袋東武、船橋東武、藤沢小田急の各デパートにて個展
• 2015年  船橋東武、吉祥寺東急、藤沢小田急、柴田悦子画廊にて個展
• 2016年  池袋東武、船橋東武、神戸大丸、藤沢小田急の各デパートにて個展
     上野松坂屋にて三人展
• 2017年 船橋東武、神戸大丸、藤沢小田急での個展予定

他、展覧会、歴史出版物の挿絵、共著、学術論文、講演等多数 現在、大竹五洋日本画教室、湘南アカデミア「ボタニカルアート」講師
日本城郭史学会委員、毎日新聞旅行「戦国廃城を歩く」講師