2020年夏は、日本列島はスポーツの祭典で大きく盛り上がるはず。
そんな時に、念願の富士登山の夢を実現するのはいかがだろうか。
3776メートルの頂で、あなたもアスリートと同じように会心のガッツポーズをしてみよう。
だが、中高年の登山未経験者に富士山は高嶺の花だ。

「どうしたら私も登れるのか」。

富士山の魅力とともに、中高年者のための富士山攻略術を考えたい。

富士宮口山頂から太平洋方面を望む。雄大な景色が広がる
<山頂からの絶景>

全身で感じる大展望と自然美

 東海道新幹線に乗ると、富士山が見えるのとそうではないのとでは旅情の深まりがまるで違う。見えれば「遠くまで来たな」と素直に思う。見えなければ「残念!」と落胆する。大空を二分するようにスーっと引かれた稜線のなんと美しいことか。雪をたたえた山頂から麓(ふもと)までを遠望すると、その威風堂々とした姿に私の心にも勇気がみなぎってくる。「富士山のように堂々と生きたい」と。


朝焼けの富士山。登山者から歓声が上がった

 そして、富士山は登っても楽しいことばかりだ。まず、登山そのものが楽しい。3776㍍に登るのは、誰にとっても一筋縄ではいかない。山頂直下の急傾斜地を歩いていると、「一体いつまでこの苦しみは続くのか」と息も絶え絶えの中で思う。「楽しい」と書いておいて「苦しい」と言うのも逆説的だが、正確に記せば「挑戦の楽しさ」ということになる。日本1の山を攻略するためには、体力をつけ、登山の技術を身につけなければならない。高所の天候に合わせた装備も必要であり、高山病に対処する知識も必要となる。その上で、富士山に全身全霊で取りつく。だからこそ、山頂に立った時の喜びはとてつもなく大きい。それは何度登っても感じるものだ。自分の総合力で挑む冒険といっていいかもしれない。
 2つ目の楽しみは、大展望と自然にある。漆黒の闇を切り裂いて現れる太陽の輝き、波頭きらめく太平洋、荒々しい岩の殿堂である噴火口、そして、日本中の山々を従えていることを実感する高々度。その眺めは稀有壮大であり、自分で歩いて登った者しか体験できない絶景中の絶景なのだ。飛行機の小さな窓から見るのとは違う、桁外れの感動に体がしびれてしまう。また、高山性植物のフジハタザオ、オンタデ、ムラサキモメンヅルといった花々を愛でるのも大きな喜びだ。

大迫力の噴火口
<荒々しい富士山の噴火口>

仲間との語らいが癒しのひととき

 3つ目の楽しみは、仲間との語らいにある。山小屋に到着したら、夕食までの時間をアルコール片手にゆっくりと過ごす。非日常の時間と空間で、肩の力も抜けて会話も弾む。この時間は私にとっては至福のひと時であり、ストレス発散の妙薬になっている。2020年も富士山に登り、大いに英気を養いたいと思っている。【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】



●筆者プロフィール●
 1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長




2月2日(日)
初心者のための安心安全富士登山2020開講

「私でも富士山に登れた」と、中高年の皆さんに大好評の富士登山教室を2020年も開催します。山岳ツアーのパイオニア・毎日新聞旅行が誇る登山ガイドらが初心者や“お久しぶり登山”の中高年の皆さんを富士山にお連れします。
 机上講座は東京会場(東京都千代田区)、大阪会場(大阪市北区)ともに2月中を予定しています。3月~7月から毎月実技講座を開き、低山から日本アルプスへステップアップします。

お問い合わせ・詳細は、東京・大阪の毎日新聞旅行ホームページへ。

東京・毎日新聞旅行(まいたび) https://www.maitabi.jp
大阪・毎日新聞旅行 https://www.mainichisinbun-ryokou.com/

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