まいたびレポート2019年6月19日~28日 
「初夏のクロアチアハイキングとモンテネグロ 10日間」


今回の旅は、美しいアドリア海に面したクロアチア。アドリア海と聞くだけでなんとなく美しい海を想像しませんか?皆さんのそんなイメージを裏切らないほどクロアチアは海も山も美しい国だと断言できます。面積は日本の7分の1くらいと、とてもコンパクトですが、南北にとても長い地形をしています。一時期、日本でもかなり観光ブームとなりましたが、今はヨーロッパからの観光客が非常に多く、大変な人気です。日本からの直行便がほしいところですが、ありませんので、どこかを経由していくしことになります。

まずは、首都のザグレブへ。クロアチアはもともとユーゴスラビア共和国の一部でしたが、悲惨な内戦を経て1992年に独立。私が高校で世界史を習っていたころはまたユーゴスラビアだったということです。少しだけ前のように感じるのですが。
目立った産業もない小国のクロアチアが進んだ道は、観光残業に力を入れることでした。その甲斐もあり、今では世界中から本当に多くの観光客が訪れるようになり、年間の観光客は人口の3倍以上にもなるということです。アジアでは韓国からの観光客が日本よりもはるかに多く、45万人ともいわれています。
私たちは午前中にザグレブに到着して、市内観光。クロアチアの空気のように爽やかで日本語のかなり上手なクロアチア人女性ガイドに案内してもらいました。カラッとした空気の中、初夏の日差しに照らされた石造りの建物が目にも鮮やかで、いかにも初夏のヨーロッパらしい清々しい気候でした。空は霞まず真っ青。公園では色とりどりの花が咲き、人々は屋外で食事をしたり、ワインやビールをのんびり楽しんでいる光景があちこちにあります。個人的にはこの時期が本当に大好きです。

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ザグレブの街の中も至る所にそんな優雅な光景が当たり前のようのあり、散策がとても楽しい街です。ところで、クロアチアがネクタイの発祥の地であることはご存じでしたでしょうか?

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クロアタというクロアチアでは有名なブランドがあります。意外と知られていない事実です。市内のとあるネクタイ屋さんの入り口には、赤と白のチェック柄のクロアチア国旗のデザインに似た巨大なネクタイが吊るされていました。聖マルコ教会の屋根瓦も、同じようにおしゃれなチェック柄です。統一感のあるオレンジ色のレンガ屋根はどこでも街の雰囲気を損なわない美しさがあります。

妖精の住む水上村
3日目は、クロアチアでも3本指に入る有名な観光地のプリトビッツェへ。その途中で、ラストケという小さな小さな集落に立ち寄りました。ここは“妖精の住む水上の村”と言われていて、日本旅行業協会が選んだ「ヨーロッパの美しい村30選」のひとつです。時代の流れに取り残されたような古民家を囲むように、集落のあちこちに清らかな小川が流れ、水辺に浮かぶ集落にはまるで本当に妖精でも住んでいるような、おとぎ話に出てくるような雰囲気がありました。水辺とやさしい緑が心を和ませてくれます。
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水の楽園 世界遺産プリトビッツェ
午後は、世界遺産のプリトビッツェの散策。階段上になった石灰岩の大地を水がいく筋もの白糸のようになって流れ、エメラルドグリーンの池にはたくさんのマスが泳いでいます。森の中の地面の上を水がそのまま流れているような、そんなところがこのプリトビッツェの美しさのひとつと言えます。
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私たちは下から上の湖へとハイキングを楽しみ、その後、リチェコ・レシチェニへ。この村に宿泊して翌日のヴェレビット国立公園でのトレッキングに備えました。片田舎の宿泊施設でしたが、「うさぎ追いし♪~」の童謡に出てくるような里山で、川の土手は自然のまま。川の中には水草がゆらめき、日本なら間違いなくホタルでも飛んできそうなそんなのどかな雰囲気に包まれた場所です。立ち寄ったラストケと同じく、童謡に歌われそうな空気に満ち満ちているのです。

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石灰岩の殿堂
翌日はいよいよクロアチアでの本格的なトレッキング1回目。途中で車両を乗り換えて、石灰岩大地の上へ。見渡す限り石灰岩の岩だらけで、白っぽい特徴の甲斐駒ヶ岳や燕岳とも違うやはり独特の地質と地形です。岩の間につけられたトレイルを縫うように歩いていくと、岩と岩の隙間からチョウノスケソウのような野草が顔を出し、白い岩肌の上でとても目立ちます。
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避難小屋まで来た時、地元のクロアチア人のグループに出会いました。こんなころで日本人に会うとは思っていなかったことでしょう。歩きながら数組のハイカーと会いましたが、ポーランドから来たというハイカーまでいました。よく考えれば、日本よりはポーランドのほうがよっぽど近いですね。クロアチアでは人気のトレッキングコースのようです。


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だいぶ下ってきたところで、森に入るとそこはなんとブナの森。まだまだ幹の細いブナ林でしたが、整然と立ち並ぶブナの幹と新緑の緑がとても印象的でした。
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ヨーロッパのベスト観光地ザダル
ハイキング後、港町のザダルへ。ザダルは数年前にヨーロッパのベスト観光地に選ばれたことがあるお墨付きの町です。翌朝からこの町の旧市街を散策しながら観光。午前中のまだ早い時間だったこともあり、観光客の姿はまばらで街の中は静かでしたが、カフェだけは、遅い朝食をとる人達で賑わっていました。ガイドさんが言うには、クロアチアの人たちは何をするにもコーヒーがないと話が進まないとか。「まあ、ちょっとコーヒーでも飲みながら・・」といった感じでしょうか。だからいろいろなことがのんびりなのだということです。まさにカフェはクロアチアの人々にとっては大切な社交場。歴史的には、ヴェネチア共和国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン=トルコ帝国など、東西双方の文化の影響を受けてきました。そんなクロアチアの複雑な背景の一部がこの国のコーヒー事情に現れています。こういう発見と実感が実際に足を運んで感じられる旅の大きな魅力です。
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雲一つない出てこない快晴のザダルを後にして、さらにアドリア海沿いに南下して世界遺産の町トロギールへ。海に面した街はどこも魚介類をアピールするレストランが多く、歩いているとついつい看板に惹かれてしまいます。それがお昼時ならなおさらです。空腹時にデパ地下を歩くようなもので、どれもこれもおいしそうに見えてしまいます。白い大きなパラソル付きのテーブルを店の前に出している店がほとんどで、外の新鮮な空気を吸いながらの食事はやはり味が違うのでしょう。食べのものおいしさというのは味そのものよりも、食べる環境に大きく左右されるんですよね。

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(※パラソルの下で撮影したため食事の色がやや赤みを帯びています。)

冷えた白ワインやビールがこれ以上ないというくらいぴったりの食事と空気、そしてうっとりしてしまうよう雰囲気。初夏の日差しが、すべてをおいしく包み込んでくれていました。
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昼食がメインで立ち寄ったトロギールでしたが、塔の上から街並みを見渡すと、空も海も汚されることもなく碧く、そしてオレンジ色の屋根が何世紀も前からあまり変わることなく今に残っていることに人々の思いが伝わってくるようでした。

古代から中世のままのスプリット
この日は終日海沿いの美しい街々を観光しながらの移動で、次に訪れたのがスプリット。こちらも旧市街は世界遺産。ローマ帝国のディオクレティアヌス帝に由来するこの町の興りは、なんと3世紀~4世紀。日本であれば、聖徳太子が生きていた時代よりさらに前からあるものを見ていることになります。もちろん、時代の変遷とともに修復されたりしたものもあるでしょうが、その当時のものも確かに残っているのです。時代はずっと後にはなりますが、アドリア海沿いを移動していると塩野七海さんの小説「十字軍」の光景が目に浮かびました。鎧を着て歩いていたら間違いなく中世でしょう。

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そして、城壁の中は中世の構造そのものです。周りは壁に囲われていて、人だけが歩けるような路地が残り、お店や人は現代のものですが、そうでなければまだ中世にいるような錯覚に陥ってしまいそうなくらい映画のセットも顔負けの本当に素晴らしい世界遺産です。さらに驚くのが、この旧市街にいまだに住んでいる人がいるということです。ここの住むというのはすごいことだと思います。
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海と山に挟まれたリゾート
この日の宿泊は、古代から一気に飛んで現代のリゾート地マカルスカ。私たちが訪れた時はすでに夏休みの時期で、家族連れも多く町全体がとても賑やかでした。ホテルから海まで30秒、ホテルとつながる建物をくぐるともう目の前が海です。最高のロケーションにわくわくしながら、さっそくお楽しみの夕食へ出かけました。ちなみにこの日は、自由食ですが、皆さん一緒に街をあるきながらのレストラン探し。海沿いの遊歩道にはテーブルがずらりと並べられて、どこで食べてもオーシャンの特等席。まさに食事をする環境としては文句なし。くつろぐことに関してはやはり日本人はかなわないと思うばかり。

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私たちも自分たちの特等席を探して、ここもいいなー、そっちもいいなーと歩くこと5分。目にしたレストランは小さな港越しに山が見える場所。ここしかない!と一瞬で惹かれました。座るのはもちろん外のテーブル席。どんな料理でも絶対おいしく食べられそうな雰囲気でした。さっそくアラカルトで注文。徐々に茜色に染まる空、グラーデーションになって暮れゆく空を見ながら、クロアチアの新鮮なシーフードを味わう時間は最高でした。食事もお酒も進んでしまいました。
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アドリア海の大展望
そんなロマンティックなひと時の翌日は、まさに前日の夕食時に見ていた山に登ることに。
車でかなり上まで上がってしまうので、歩き始めるとそれほどアップダウンはありません。
静かで気持ちのよいトレイルには時々リンドウなどの花が咲き、道が海側に寄るとそこはアドリア海がのぞめる展望ポイント。途中にはここの住人のシャモアに出くわすことも。そんな感じで道は続き、最後は小さなピークへ。
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最後のひと登りをすると、私たちのホテルも、昨日食事をしたレストランも、そして沖には島々も見渡せる、石造りの避難小屋がある大パノラマの展望台。
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沖合は紺碧に、岸に近い浅瀬はエメラルドグリーンになり、そこに子供用の遊具が浮いているのまで見えます。この水平線の遥か先にあるイタリアまで見えてしまいそうな、そんな透き通ったアドリア海の絶景でした。1時間近くこの特等席にいたでしょうか。しっかりと目に焼き付けてから街に戻りました。

「アドリア海の真珠」ドブロブニクへ
すっかり海と山の景色が日常になっていた私たちですが、まだその光景は終わりません。
クロアチアで一番有名な観光地と言っても過言ではないドブロブニクです。「アドリア海の真珠」とも言われ、宮崎駿監督のアニメ「紅の豚」、「魔女の宅急便」の舞台ともなったといわれる世界遺産です。移動中でも素通りするにはもったいないほどの美しい景色。深く切れ込んだ入り江をゆっくりと進む船、一日中絶景を見ることができる道端の蜂蜜屋など、「海も山も素晴らしいクロアチアをたっぷりと味わっていけ」と言われているような景色が連続していました。
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ドブロブニクに到着後、街の展望台となっているスルジ山へ。ここはとても有名な場所ですが、ここを下るとオレンジ色の瓦屋根に統一されたドブロブニクの街並みと海の景色を堪能することができます。天気は文句なしの快晴。本当に素晴らしい海と城壁に囲まれているのがよくわかります。何百年も変わらず守り続けられてきた歴史が手に取れるかのように、そしてミニチュアのように眼下に広がっていました。
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未知の国モンテネグロ
8日目は、クロアチアを離れてお隣の国モンテネグロへ。なかなか馴染みのない国ですが、福島県ほどの大きさの国で、クロアチア同様にかつてはユーゴスラビアの一部でした。2006年にセルビア・モンテネグロから現在のモンテネグロ共和国に国名を変更した若い国です。このモンテネグロのクロアチアに近いコトルという町の旧市街が世界遺産に登録されていて、お目当てはコトル湾の最奥にある旧市街です。
町の正面は海に、そして背後には険しい山が覆いかぶさるように迫る天然の要害です。スプリットやドブロブニクと同じく、旧市街は城壁に囲まれその城壁を歩くことができるので、そこに登って町を展望してみました。城壁へと続く門をくぐり、市街に入ると細い路地が迷路のように入り組み、車両が走ることもない城壁内は中世の空気が残されているかのようです。石段を上がっていくと、眼下には深い碧色(みどりいろ)を湛えたコトル湾、そして“旧市街色“とも言ってもいいほど当たり前となったオレンジ色の屋根瓦。コトル湾は大型のクルーズ船が入港できるほど水深の深い入り江になっているのがわかります。

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抜けるような青空にうかぶカモメのオブジェも、お土産の魚もとても気持ちよさそうでした。
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ランチはやはり“決めないメニュー”選びでいろいろなものを皆さんと分け合って食べました。クロアチアに負けないほど美味、美味です。
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ドブロブニクに戻り、夕食はやはり海のそば。何度食べてもおしい生ガキをご要望に応えて夕食にも注文し、レモンでさっぱり。注文したスカンピ(テナガエビ)まで景観を損なわないようなオレンジ色です。
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翌日はいよいよクロアチアの最終日。午前中に旧市街をガイドさんに案内してもらいながらの観光。周囲2kmほどの城壁に囲まれ、海洋貿易のよって発展してきたドブロブニク。一時は内戦により、危機遺産にもなった街はその後、市民や世界中からのボラティアの協力があって修復されてきました。新しいものを簡単に建設することよりも、戦争などによって破壊された残骸の中から、建築材料を選んで街を復興するというもっと手間のかかる方法でその街並みは維持されてきたのです。自由都市として常に自治を志してきたドブロブニク市民の誇りと、尊厳がこの景観からにじみ出てくるようで歴史の重さを感じました。

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そんな大人の勉強の後は、ドブロブニクの美しい海を楽しまないわけにはいきません。
空港へ向けて出発するまでの間、午後は皆さんと近くの海へ散歩に出かけました。
6月とはいえギラギラと太陽が照り付け、近くの浜辺では多くの海水浴客がいて真夏と変わらない光景です。岩場でも甲羅干しをする人たち、町のすぐ近くでこんなにも美しい海があることに驚くばかりです。アドリア海沿岸は全体的にこういう景色が続いているので、リゾート地として人気が出るのは当然ですね。

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私は参加した皆さんにその気にさせられて海へドボン。まったく泳ぐ準備をしていませんでしたが、出発までに乾かして着替えればいいと割り切ってアドリア海で泳がせていただきました。おかげさまで少し早い夏のいい思い出になったことは間違いありません。

首都のザグレブから南下しながら見てきた自然と街々。深い歴史あり、山あり、そして透明度の高いアドリア海がまるで糸のようになって、最後にクロアチアにコトルを加えた1枚のスカーフのような布が織りなされたようでした。目には見えないそのスカーフを私たちはしっかりと巻いて、ドブロブニクのオレンジ色の屋根を空から見送りました。

(文と写真:渡辺和彦)