まいたびレポート2017年4月16日~28日 
サンチャゴ巡礼ポルトガルの道と
 北ポルトガル歴史紀行
 12日間」
~聖地サンティアゴ・コンポステーラに向かうもうひとつの道~


3年前に書いたサンチャゴ巡礼ポルトガルの道の文章を加筆修正、さらに写真を追加して再び思い出してみました。写真をクリックすると大きな画像で見られますので、ぜひクリックしてみてください。

熊野古道とサンチャゴ巡礼の道は伝統的な巡礼の道を観光資源として1998年に「姉妹道提携」という形を結びました。その当時おそらく今ほど熊野古道は日本でも知られておらず、2004年に「熊野古道を含む紀伊山地の霊場と参詣道」という形で世界遺産に登録されてから、さらにはインバウンド増加によってかなり知られるようになってきたような気がします。お互いが世界でも珍しい道の世界遺産として交流を深めていく中で、2015年に初の共同事業として共通の巡礼手帳まで作られるようになりました。

ポルト旧市街を経ていざサンチャゴ巡礼へ
サンチャゴ巡礼の道は熊野古道と同様に聖地のコンポステーラを目指して複数の道があります。その巡礼の道の中で2番目に多く歩かれているのがポルトガルの道です。 ポルトガルの道はリスボンから歩くことができますが、それを歩くと600km以上。 歩きたい気持ちはあってもなかなか簡単なものではありません。ツアーではスペインとの国境にあるヴァレンツァという小さな町から約115kmを歩きます。 それでもツアー全体の日数は長いので、内容は盛りだくさん。国境の街からスタートする前にリスボンから北上しながら歴史あるスポットをいくつか訪れてきました。 城壁に囲まれた町・オビドス、修道院でのお菓子作りの発祥とも言われる世界遺産のアルコバッサ修道院、ドウロ川沿いの古都の風景がとても美しいポルト、かつての宗教的中心地ボンジェスス教会、 絶品のシーフードを味わう通称“緑のワイン”で知られるヴィアナ・ド・カステロなど、お隣のスペインと同様にポルトガルにも沢山の見どころと、私たちの舌を唸らせる食文化に溢れています。

   オビドスの街かど(アズレージョが施された城壁内部) 
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          世界遺産アルコバッサ修道院
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   ポルトのサン・ベント駅構内にある美しいアズレージョ
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   世界遺産ポルトの旧市街
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   ポルトのサン・ベント駅構内にある美しいアズレージョ
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    ヴィアナド・カステロにて
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   アズレージョが美しいミゼリコルディア教会
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ポルトガルとスペインの間にはミーニョ川が流れており、それが国境になっています。ポルトガル側にはヴァレンサという町があります。かつてスペインからの侵入を防ぐために作られた城塞で、星形になっています。まるで五稜郭のようです。

   国境の町ヴァレンサ
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ヴァレンサから橋を渡りいざスペインへ!
橋の中ほどに国境を示す標識があり、つい遊び心が疼いて、ポルトガルとスペインを行ったり来たり。 国境ですから。それともうひとつ、このわずかな境で1時間の時差があるのです。うっかり忘れると大変なことになりますからご注意下さい。渡るとすぐに115kmを示す巡礼路でおなじみの標石が目に入ってきます。この標石に書かれた距離が少しずつ縮まるのを楽しみ歩いていくのです。 それと巡礼のスタンプ。行く先々で捺してもらうことの出来るスタンプは、数が増えていくと、不揃いな個性的なスタンプが踏破の励みになり、そして、最後はもう芸術品です。
 
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トゥイ~ポリーニョ~美しい春のガリシア地方を行く
スペイン側に入ってすぐにある町がトゥイ。石畳みを歩き大聖堂を通り、町の路地をぬけて森の中へ。まだ少しひんやりとした朝の空気の中を歩いていきます。 この先を抜けるとどんな景色が見えるのか、村が見えるのか、畑が広がっているのか、どれくらい距離が縮まったのかなど、そんなことをいつも思いながら歩いています。 ただ景色を見ているというよりも、いろいろなものを感じながら探しながら歩くのがこの巡礼の楽しさではないかと思います。

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この時期はちょうど春。歩く道すがらいろいろなところに花が咲いていました。道端、畑の中、小川のほとりなど、歩いていると本当に色々なところに目がいきます。 フランスの道も歩きましたが、ポルトガルの道を歩く巡礼者の数は、フランス人の道より明らかに少ないです。それでも一日のうちに何組にも出会います。彼らも同じようにコンポステーラを目指しているかと思うとやはり親近感を感じます。 だから、言葉を交わした時は当然、たとえ言葉を交わさずとも見えないかすかなつながりを感じてしまうのは私だけでしょうか。歩けば歩くほど、「ブエン・カミノ(よい旅を)!」と自然体で挨拶できるようになるのです。

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この日のゴール、ポリーニョに到着後車で港町ヴィーゴへ。巡礼中のもうひとつの楽しみ、それがガリシア地方自慢の料理の数々です。 海に面したガリシアは肉も魚もほんとうに日本人の口に合うことを今回の巡礼の旅でも実感しました。スペインからだけではありませんポルトガルからもうすでにそうでした。

今日はどんな食事にするか、ガイドと相談しながらその場でほとんど決めました。こうしていると食事にはまず飽きません。 毎回お客さんも楽しみにしてくれました。逆にそれができるほど、ガリシアの食事はバラエティーに富んでいると言えます。是非、この空気の中で歩いて味わって頂きたいものばかりです。

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レドンデーラ~ポンテベドラ 中世から残る古道歩きを満喫
巡礼2日目、ポリーニョからレドンデーラへ。バイカモが咲く清らかな流れの横を歩くのがとても気持ちのよい朝でした。 フジの花、新緑、また昨日とは違う景色や人と出会い、そして峠を越えるとこの日の目的地レドンデーラの町が。巡礼の歩き方の定番ですが、途中にいくつもあるカフェに立ち寄って休憩をします。そこでは必ずといっていいほど、同じように巡礼者が休憩する憩いの場になっています。次々と現れる巡礼の目印にも個性があり、巡礼者を励ましているかのようなものも時にはあります。

   清らかな流れに咲くバイカモ
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どの町も村もこんな巡礼の旅でなければ、ただ車で通りすぎるだけの場所ですが、そんな場所を地元の人のように歩いていくのは何とも言えない楽しさがあります。きらびやかな観光地もそれになりもちろんいいものですが、このローカルな感じがなんとも巡礼中はいとおしいとも言えるような時間です。

この日もローカルな海辺の隠れ家的なレストランで昼食を美味しく頂きました。こんな隠れ家的なレストランをこの旅では何度も訪れました。大きな団体ツアーでは絶対ありえない話でしょう。レストランとも顔なじみの現で、現地をよく知ったガイドのおかげです。静かな海を見ながら、同じようにテーブルを囲むのは地元の人。

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巡礼3日目、この日も新しい面白い発見がありました。田舎の家の門の横によくPANと書かれているのを目にしました。 ガイドに聞くと、田舎ではパン屋が遠いので配達してくれるシステムがあるというのです。日本の牛乳配達のようなものでしょうか。PANはお宅の表札ではなく、食べ物のパンなのです。皆さん「へーーーおもしろい」との声が出たのは言うまでもありません。 中には、パンの彫刻そのものが壁に張り付いていたお宅もありました。これはさすがに分かりやすい。でもまさかパンを配達しているとは日本人には思えないのです。逆に欧米人が牛乳の宅配ボックスを見たらどんな風に思うのだろうかなどと考えたりしながら歩いていました。

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行程半ば、とても風情がある中世の橋を渡りました。河口に近い川にかかるその橋は、今でこそ部分的に新しくはなっていますが、横からみた石造りのその姿はやはり時代を感じさせてくれます。どんな人たちがここを渡っていたのだろうか。仕事で通る人、走ったり橋から飛び込んだりして遊びまわる子供たち、甲冑をつけた兵士も通ったのだろうか、などと橋の佇まいに否応にも想像をかきたたせられました。

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この日の宿は、少し大きな町ポンテベドラ。古い街並みも残り、さながらミニコンポステーラのような街並みです。 到着したのが土曜日ともあって、子どもたちも多くとても賑やかな雰囲気に溢れており、散歩も楽しめる町でした。

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カルダス・デ・レイス~パドロン 巡礼の道での出会いと喜び
巡礼4日目、ポンテべドラからカルダス・デ・レイスへ。巡礼の道では至る所でホタテ貝のオブジェや目印を見かけますが、渡る橋桁にまで大きなホタテ貝がついていたのには驚きました。 そう、中世から巡礼のシンボルといえばホタテ貝。巡礼者はその証としてホタテ貝をぶら下げて歩くのが通例です。巡礼者に対する温かい気遣いが嬉しいのです。巡礼中はこういう“見えない支え“や励ましをとても強く感じます。 これも巡礼の大きな楽しみのような気がします。それをさらに実感する出来事がありましたので、翌日のレポートで紹介します。

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下の写真の料理はポルトガルではとても有名な干しダラ、バカリャウのグリルです。身がとても厚く、かなりの美味でした。 それを本場のポルトガルでなくスペインで堪能するとは。恐るべしガリシアです。
   
   バカリャウ(干しダラ)のグリル
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豪快な炭焼き肉の盛り合わせ
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この日の宿は、「王様の温泉」を意味するカルダス・デ・レイスという田舎町。その名の通りローマ時代にはここで温泉が利用されていたとか。 ホテルには温水プールがあり、さらに町の中にも足湯があるなど、巡礼中にそれを求めてわざわざ立ち寄る巡礼者もいました。

   温泉の町カルダス・デ・レイ

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巡礼5日目、カルダス・デ・レイスからパドロンへと温泉地を後にして出発。この日は巡礼ならでは嬉しい出会いがありました。 いつものように片田舎の住宅がまばらな道を歩いていると、色々な言語で「WELCOME」を書いた紙が窓にたくさん貼られている建物が目に入りました。 当然、日本語がないかと探していると「ようこそ」という文字を発見!その時、窓が開いて中から手招きをされ、入ってみるとそこは保育園。手招きしたのは先生でした。
中にお邪魔すると、先生は英語で「ここは巡礼の道の途中にある保育園で、せっかくの機会なので子どもたちに色々な国の人を紹介したいんだ」と私たちに説明してくれました。 つまり、先生は巡礼者が年中通りかかるのを活かして、この片田舎の園児たちにちょっとした国際交流の機会をつくってあげていたのです。その発想に驚き、そしてとても素晴らしい教育だなと感嘆しました。 子どもたちは先生の言うことをよく聞いていました。シャイな子、ひとなつっこい子などさまざま。先生からのリクエストがあり、お客様と日本の童謡を歌って聞かせ、お礼に子どもたちから小さなホタテ貝をもらいました。小さな子どもたちとの大きな出会い。私たちにとっても、とてもいい思い出になった“巡礼の出会い“となりました。

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コンポステーラ~フィニステレ岬 巡礼のフィナーレと「地の果て」
巡礼6日目最終日、巡礼中最長の25kmを歩きます。これまでもそうでしたが、長い日には途中で昼食を挟みまた歩くので、歩きっぱなしよりは随分と楽です。 その証拠に、出発前には不安がっていた方も最後まで歩くことができました。歩きながら田舎では大きなお宅をたくさん目にします。土地が安いからとガイドはいうのですが、日本では豪邸といえるような立派な大きさと敷地です。 そんな家がいくつも並んでいるのです。中にはプール付きのお宅も。それを見ると本当に安いのかもしれないと思いたくなります。

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そんなお宅のひとつに見事なシャクナゲが咲いていたり、道端からノウサギが出てきたりと、ガリシアが緑豊かな州だというのをあらためて感じながら、最後には森をぬけて聖地コンポステーラへ。
もういよいよコンポステーラも近くなり、この日の昼食もアラカルト。ガイドも認める絶品の生ハム、見ただけでもおいしさが伝わるようなパエリア、オリーブオイルたっぷりのサラダ、そして鹿肉のステーキ。ちょっと昼食にしてはたのみすぎました。


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予定以上にお腹もいっぱいになり、コンポステーラまであと一息。次第に交通量も増え、ゴールの町が近くなっていくのがよくわかります。遠くには大聖堂の尖塔が見え、車の往来の多くなった都会の道を歩き、町の中心にある大聖堂へと全員でゴールしました。 相変わらず大聖堂の修復作業は続けられているものの、聖地であることには変わりはありません。115kmを歩ききった喜びはやはりひとしおです。ガイドと共に喜びを共有し、夜はみんなで旧市街のバルへと繰り出しました。この街のバルは外から覗いても、中に入って食べてもとても雰囲気がいいので、大好きです。今でもこの町の路地の光景が目に浮かびます。

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翌日は、“地の果て”と呼ばれるフィニステレ岬へ。コンポステーラからこの海まで歩く巡礼の道もあり、もうひとつの巡礼終着点となっている場所です。 途中、中世の橋が残る風光明媚な田舎に立ち寄りながらフィニステレへと向かいました。

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目的地のフィニステレに到着。車を降りると岬は海に向かって細長く伸び、エニシダが海にむかって岬を覆うかのように一面に咲き、その岬の先端にかわいらしい灯台がぽつんと立っていました。空は快晴、海は真っ青、足元には黄色い花々、そしてその景色の中に灯台が1本という映画のワンシーンのような光景。 「地の果て」と呼ぶにはもったいないような景色です。まだ4月だというのに少し暑いくらいの日差しがなんとも心地よく、地の果ては素晴らしい場所です。

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この日の昼食は、ここフィニステレにて。日本では珍しいカメノテやマテ貝、厚みのあるバカリャウのグリルは何度食べてもおいしく、ここでもいただいてしまいました。ガリシアの食材の豊かさにはガイドも自信をもっている通り素晴らしいものがあります。
灯台の近くにあるカフェに入ると、白い壁には灯台の絵が描かれていました。ガリシアは海に面しているために灯台が有名で、それを辿りながら歩くコースもあるとのこと。ガイドも一押しだと言っていました。いつか歩いてみたい道です。

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コンポステーラを後にして、再び世界遺産のポルトに戻りました。帰国の飛行機はここから飛ぶので、もう1泊。今度は自由な時間をポルトで過ごすために皆さんと旧市街を散歩しながら、メトロも走るドン・ルイス1世橋を歩きました。橋の上から眺める旧市街とドウロ川の流れの光景は中世から大きく変わってはいないのでしょう。橋は19世紀後半に造られたものですが、ここから見るオレンジ色の屋根の光景が目に焼き付きました。

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   ドン・ルイス1世橋
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   コンポステーラの大聖堂内
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   ※ステンドグラスは別の教会のものです。

2度ポルトに滞在した私たちのツアーもあっという間に終わりとなりました。
サンチャゴ巡礼として初めて歩いたフランスの道も素晴らしいものでしたが、こちらのポルトガルの道もやはり同じように忘れがたいものばかりです。あの時出会った保育園の子どもたちはもう小学校に通っていることでしょう。
片田舎で国際交流をしてくれた先生は、入園してくる子どもたちに変わらず国際交流の機会を与えている光景が今でも目に浮かぶようです。この巡礼で歩いた街々に、またいつか戻ることができたら写真をもって先生に会ってみたいものです。そうコンポステーラの大聖堂に祈りを託しておきます。

(文と写真:渡辺和彦)