まいたびレポート2017年7月2日~13 日 
「高山植物の宝庫
 大姑娘山5025m登頂と九塞溝&黄龍
 12日間」


今回は2017年7月に行った中国四川省の大姑娘山をご紹介します。
この年は忘れられない大きな災害が中国でありました。8月のお盆の頃、四川省で発生したM8.8という巨大地震です。震源に近かった九塞溝は非常に大きな被害を受けました。私たちはその約1か月前に訪れていましたので、帰国後にこのニュースに接したときは非常に驚いたことを覚えています。

登った山の名前はタークーニャンと呼びます。
標高は5000m以上もありますが、雰囲気的には穂高のような感じです。「5000m」という標高で、まずは腰が引けてしまう方が多いかと思いますが、難しいところはまったくなく、もうこれで5000mかといった感じで標高の割にはとても登りやすい山です。
そして、この山の周辺は非常に花が多く「高山植物の宝庫」としても人気があります。

海外では標高の割には登りやすい山がネパールをはじめとしてたくさんあることも大きな特徴です。
是非登ってみてもらいたいものです。

日本から直行便で成都へ
日本からは四川省の省都成都へと直行便で、わずか4時間。
今回はこの山の他に、世界遺産の九塞溝と黄龍を巡りました。大地震の前でしたので、問題なく美しい景色を楽しむことができました。
見どころはエメラルドブルーの美しい水と滝の景観です。
階段状になった大地の上に100を超える池や湖と滝が流れています。その涼しげな景色を見ながらのんびりと散策ができます。ただし、この九塞溝は標高が2000m~3000mのところに位置しているため、高所に弱い方は高山病にも注意が必要です。まずはロープウェイである程度の標高まで上がってからの散策になります。そのあとは必要に応じて園内を巡回するシャトルバスなどを利用しながら巡ります。
P1090144

P1090153

P1090160

P1090207


どの池や湖もうすい絵の具でも垂らしたかのような淡くやわらかな色合いで、上高地の大正池のようです。
水面近くには魚もたくさん泳いでいますので、きれいな水だということがわかります。

P1090229

P1090261

P1090300

花咲く幽玄の黄龍
九塞溝と並ぶ黄龍はさらに標高の高いところにあります。
3000m~3600mにあるため、富士山の中腹から8合目にいるかのようです。不規則な細胞のように浅く仕切られた石灰岩の棚田を、淡い色の水がゆっくりの流れている景観が幻想的でとても美しいです。
私たちが訪れた時の天気は曇りでしたが、それでもとてもきれいな色でしたので、晴れていたらさらに見栄えがしたことは間違いなさそうです。

P1090385

P1090409

人間が美しいと思って作るものではなく、美しいと感じる景色が自然に出来上がるというのが不思議です。この石灰岩の棚田を遠目に見たり、時々間近に見ながら徐々に下へと高度を下げていきます。短時間なので、高山病はあまり心配ないと思われます。

今回の黄龍はこれだけで終わりません。美しい景色に文字通りさらに花を添える貴重な野草に出会うことができました。野鳥も豊富で、途中で見かけた野鳥はベニマシコでしょうか?昼間から赤ら顔で、スズメを赤くしたような鳥ですが、杭の上でフィ、フィと鳴いていました。

P1090364

P1090422

P1090430


P1090439

下のほうに下ってくると、まだまだ囲いが出来上がっていく途中のような場所もありました。上流のような立派な棚田になるには相当な年月がかかりそうですね。

そして、その近くにランの仲間のホテイアツモリソウの群落が咲いているのを見つけたのです。日本では絶滅危惧種に指定されていて、非常に希少な野草ですが、ここではよほど生育環境がいいのか生き生きとそれもたくさん見ることができました。1株でもかなりのインパクトですが、こういうのを“わんさか“咲いているというのでしょうか。

P1090484

P1090506

P1090499

P1090540

驚いたのはこれだけではありません、その先には小柄の黄色いレブンアツモリソウまで咲いていたのです。ここは中国ですから日本の固有種とは違うと思いますが、わかりやすくとりあえずこの名前にしておきます。

P1090532

P1090518

これには相当興奮しました。あっちにもこっちにもアツモリソウだらけなんていうことは日本では考えられません。レブンアツモリソウは名前の通り礼文島の冷涼な環境で生育するランで保護されていますが、ここではそういった雰囲気はありません。かといって誰かが盗掘するというような感じでもないです。
自然にたたずむ姿、本当にいい時期に出会いました。

愛嬌たっぷり熊猫(パンダ)
こうして興奮冷めやらない黄龍を後にして、成都へと戻り大姑娘のある西へと移動しながら、途中パンダの繁殖センターに立ち寄りました。
どんなポーズも愛くるしいパンダはやはり人気があって当然でしょう。自然と不思議なポーズで寝ていたり、並んで笹をただむしゃむしゃ食べる姿だけでもほほえましくなる愛嬌たっぷりの動物です。

P1090579

P1090580

P1090593

P1090603

いざ大姑娘山へ
登山のベースとなる村もなかなかの標高。以前に比べて少し発展してきれいになった気がしました。
久しぶりに来た大姑娘の登山口には管理事務所が設けられ、ほんの一部だけ木道が敷かれるなど、時間の経過を感じる対面となりました。荷物は相変わらず馬が運んでくれますので馬に感謝です。
P1090618

P1090634

登山道には以前と変わらず野草が咲いて、一安心。過度に整備されるとやはりがっかりとしてしまいます。ベースキャンプまでは登山道というほどのものではなく、行程差も少なくまったく苦にならない道です。高度に慣れるための足慣らしのようなものです。

P1090631

P1090640

P1090648

ベースキャンプを少し下に見下ろせる場所まで来ると、さらにいろいろな花が咲いていたのに加え、ベースキャンプで馬がつながれている地面がなんとなく色づいているような気がしました。さらに近づいてみると、はっきりと薄い紫色の絨毯のようになってその中に時々黄色が混ざっているような感じに見えたのです。そうです、サクラソウの絨毯です。この年はちょうどその時期にあたりました。花畑のベースキャンプは桃源郷となって迎えてくれたのです。

P1090652

P1090701

P1090719

P1090674

P1090684

翌日は、ベースキャンプの周辺で高度順応をするためのトレッキングです。実はベースキャンプの周辺だけでもいろいろな花が咲いていて、花を楽しむには本当にここは最高におすすめしたい場所です。山頂に興味がなくてもかなり花を楽しめると思います。
花びらの先端がつながっている不思議なユリ、真っ青なかき氷のシロップをかけたようなエンゴサクの仲間、カラフルな手まりのようなクサジンチョウゲ、どこかのゆるキャラのような得体の知れない不思議な高山植物、ここでも咲いているホテイアツモリソウ、黄色いサクラソウは斜面一面のお花畑などととにかくいろいろな花がありすぎてまったく飽きません。おかげでカメラもかなり忙しかったです。

P1090761

P1090767

P1090804

P1090808

P1090740

P1090788

P1090797

P1090811

こうして花を見ながら歩いているうちにいつの間にか高度順応も終了です。そして、この上には野生のポピーが待っているはずだと思うと、思わず高度を忘れてしまうほどです。

テントに戻れば、コックが手早く作ってくれる食事がたまらなくおいしく、ついつい食べ過ぎそうになってしまいました。街中で食べる料理より、山で食べるこういう食事のほうがおいしいと感じることがよくあります。体が山向きなのでしょうか。いずれにしても高所で食欲が落ちることはよくあるので、そんな時に心強いサポートです。
P1090760


P1090819

P1090825

P1090826

P1090836

そして、今度は紫の絨毯が出現。つつじのような小さな花がついた背丈の低い木があちこちで紫に染まっていました。これはのちほどもう少し写真を加えてご紹介します。
さらに、小さな沢沿いにとうとう顔を出したのが紫色のポピー。花をつけた株は生き生きとして、やっとやってきた短い夏を謳歌しているかのように見事に咲いていました。
さらに進むと今度は黄色いポピーがあっちにもこっちにも。ポピーは微妙にいろいろな色があります。

P1090842

P1090847

P1090887

P1090888


P1090978

これにはみんなが大興奮。時折マーモットの鳴き声が響く谷には、私たちの興奮の声も響いていたことでしょう。他に誰もいない2つ目のキャンプ地はポピー観賞のためのキャンプ地です。


雪の山頂へ
翌朝はそれほど極端な寒さも感じることもなく、軽い食事を済ませてからまだ暗い中を出発。涸沢のようなカール上になったところをまっすぐ尾根を目指して上がっていきます。雪はあるものの、軽アイゼンで間に合う程度でした。徐々に高度を上げていくと、数十歩でも景色はみるみる変わるように感じます。見えていなかった山や谷がよく見え、尾根に出て下を振り返ると私たちがいたキャンプ地がよくわかります。尾根の反対側を見れば、無数の鋭い岩峰群。上から下へと少しずつ陽が当たり山劇場の幕が開いていくような感覚です。
P1090896

P1090902

P1090913

P1090912

雪で平らになった山頂直下の平地の向こうには、ひときわ大きく見事な三角錐の四姑娘(スークーニャン)。前回は雪がなかった時でしたが、今回のように雪があると高い山が引き締まってさらに引き立つような気がしました。
写真だけ見たら、おそらくかなりの標高で、しかも難しい山に登っているかのような印象を与えてしまうのではないかと思います。天気も申し分なし、あと一息で山頂。雪がついた最後のやや急な斜面を頑張って登りました。
P1090920

P1090922

そしてついに訪れた登頂の瞬間。「さあ、皆さん、ここが5025mの山頂です!やりました!!」

P1090921

P1090934

想像していた以上の景色が山頂にはあったことは間違いないでしょう。雪があるおかげかもしれません。貸し切りだったからかもしれません。どれも正しいですが、やはり全員で登れたからでしょう。実はこの時、参加者の1人が九塞溝で右手を負傷してしまいました。成都で病院に行き、一時は登頂を諦めていましたが、全員でサポートをして励ましてなんとか山頂にたどり着いたのです。技術的には難しいところももなく、それでいて景色は素晴らしいので、是非味わってほしかったのです。登ってもらえて本当によかったです。もちろん最後まで怪我もなく無事に下山していることを先にお伝えしておきます。
P1090933 - コピー

P1090935 - コピー
ほぼ無風、流れる雲をのんびり見られるほどたっぷりと山頂の景色をしみ、思い思いに写真に収めて、心おきなくキャンプへと下山を開始。
すっかり陽が差し込んだカールは、尾根から続く岩と雪のまだら模様がくっきりと照らし出されていました。上から見降ろし、時には下から尾根を見上げてその美しい模様と登頂の名残を楽しみながら下っていきました。
P1090949

P1090952

P1090954

P1090960

もうたっぷりと山頂からの景色を楽しんだ、そう思っても下におりてくるとやはりなんとなく名残惜しいものです。だから山は飽きないのかもしれません。

下山の途中で見かけた植物は。岩の上にぴったりとはりつき、まるで山にはりついた自分の気持ちのようでした。キャンプ地が間近になって皆さんと記念撮影をパチリ。最高の景色の中でのひととき、いい笑顔が思い出されます。

P1090963

P1090970

P1090973

上のキャンプ地を後にして、往路とは別のルートで紫色の花がたくさん咲いている中をベースキャンプへ。カールの住人のマーモットも何事かと顔を出していました。
写真だけではよくわからないかもしれませんが、とにかく足元には伝えきれないほど無数の花が一面咲いています。歩きにくい場所もなく、歩けば花の上、ある程度は踏まないと歩けないのが時に悩ましいほどです。しかも人は少ない。こんな心躍る楽しい道はありません。花好きはまずここに来て損はありません。

P1090994

P1090985

P1100003

P1100024

P1100037

P1100033

全員登頂と感動的な花の多さの余韻に浸りながらこの日の夜もおいしい食事をいただいてぐっすりと眠りました。

そして翌朝も見事な快晴。山に咲いている花に負けないくらいのカラフルなテントとサクラソウ咲くキャンプ地を後にして下山しました。

P1100116

登山口近く、青空の下で緑が一層濃く見え、すっかり夏らしい景色に戻り放牧地ではチベット仏教のカラフルなタルチョがはためき、その奥には昨日まで間近に見ていた四姑娘山の白い頂が青空をバックにそびえていました。登るときにはわからなかった旗のカラフルさをこの時は感じました。

P1100146

P1100149

目的を達成できた皆さんの足取りはとても軽く、おしゃべりも弾んでいました。白い峰に見守られながら尽きないのは野に咲く花ばかりではありません、参加者みなさんの話にも青空をバックに色とりどりの花が咲いていたようでした。

P1100162

P1100171


P1100223

P1100262

P1100244


P1100258

ファインダーを覗きながら、こういう景色の中に皆さんをご案内できたことをまたうれしく思える瞬間でした。

(文と写真:渡辺和彦)