登山コラム《山記者小野博宣の目》
二上山(517m)-大阪・毎日登山塾2021-ステップ1


初心者や入門者が富士山登頂を目指す「毎日登山塾2021」のステップ1が3月13日、奈良県と大阪府にまたがる二上山(517m)で開かれた。講座は、山に不案内な皆さんが低山から3000mの高峰まで毎月ステップアップして、8月には富士山(3776m)に登るというものだ。
第1回の会場となった二上山は、北側に位置する雄岳と南側の雌岳(474m)の2つの山頂を有する双耳峰だ。昔から頂(いただき)と頂の間に日が沈むため、神聖な山と人々の尊崇を集めてきた。近鉄線の駅が近く、ハイキングコースとして親しまれている。

二上山=2019年3月4日撮影
二上山=2019年3月4日撮影

参加者19人は午前9時半に、二上神社口駅に集合した。高山宗規・登山ガイドが「出発しましょう」と声をかけて、登山口の神社に移動した。雨模様のため、参加者は雨具を身に着けた。ザックカバーも登山靴も真新しい。この日のためにそろえた登山道具に、参加者の意気込みがうかがえた。神社では、登山塾の塾長でもある筆者が「中高年者が富士山に登るためには、体力、登山の技術、登山用の装備が必要です。しっかり学んで8月には富士山に登りましょう」とあいさつした。村野匡佑・登山ガイドが行程の説明などをした後、午前10時10分過ぎに高山ガイドを先頭に登山道に入った。二上山は500m余りの低山だが、二上神社口駅の標高は80mであり、山頂までは430m余りを登る。登り初めから急峻な山道が続く。高山ガイドは「ゆっくりゆっくり歩きます」と励ました。濡れた木の根や石の階段に気をつけながら、高度を稼いでゆく。一度休憩をとった後、11時半ごろに雄岳にたどりついた。参加者に安どの表情が広がった。

雄岳に到着しひじタッチ
雄岳に到着しひじタッチ

ここで10分程度休み、雌岳を目指した。いったん馬の背と呼ばれる鞍部(山と山の間の低くなっている部分)に下り、再度登り返した。昼食は雌岳山頂手前の東屋(あずまや)でとった。東屋の目の前には野鳥のえさ台が設置され、シジュウカラやヤマガラ、ソウシチョウがえさをついばむ姿が観察できた。

山頂目指して歩む
山頂目指して歩む

午後1時過ぎ、雌岳に登頂した。雨は上がり、満開の馬酔木(アセビ)の花が揺れていた。山頂からは大和平野、大阪平野が一望できた。超高層ビル「あべのハルカス」も玩具のようだ。高山ガイドが風景の説明をした後、ほどけにくい靴ひもの結び方についてレクチャーした。「結ぶ時に二回結べばほどけにくくなります」などと語り、実演した。参加者も靴ひもを結びなおしながら、うなずき合っていた。
下山は当麻寺駅に向かった。下りの坂道も濡れて滑りやすく、参加者も私も慎重に足を下ろした。日の当たる登山道には紫色のスミレが咲いていた。春はもう間もなくやってくる(2021年3月13日登頂)。【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】

咲き誇る馬酔木(アセビ)の花
咲き誇る馬酔木(アセビ)の花


雌岳の山頂
雌岳の山頂
靴ひもの結び方を講習する高山ガイド
靴ひもの結び方を講習する高山ガイド

山のコラム(1)

今では登山ガイドの資格を得て、いっぱしのことを口にしているが、私にも初心者の時代はあった。大学山岳部というエリートコースではなく、40代になってから登り始めた。いわゆる中高年登山者だ。初めての山は、那須の茶臼岳(1915m)だった。登山靴だけは新調したが、ジーパンに娘のお下がりのリュックサックといういで立ちだった。
登りの山道が本当に苦しく、「登山とはこんなにもつらいものなのか」と息を盛大に切らせたことを覚えている。それから幾星霜が経ち、どんな登山道でも息をつくことはなくなった。仲間の助力を得て場数を踏み、自分のペースをつかむことができたからだ。
歩きながら仲間と語らい、草花を観察し、野鳥の声を聴く。こうなると登山というスポーツは、実に快適なものになる。都会のビルに囲まれて働く私にとって、ストレス発散の場となった。登山なくして、私の健康法はない(小野)。


●筆者プロフィール●
 1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長