sea to summit in 道央
積丹岳と羊蹄山 北海道下見日記

写真1 しゃこたんブルー鮮やかな女郎子岩
しゃこたんブルー 鮮やかな女郎子岩


4月下旬、上野大先輩と伊豆稜線歩道のツアー(http://maitabi.blog.jp/archives/37823195.html)を終えた直後、東京は何回目かの緊急事態宣言期間に入った。
と同時に、予定されていた数少ないツアーの仕事も全部飛んで行った。

膨大な時間を手に入れた私は、西伊豆の宿で購入した無農薬の甘夏で瓶十個分のマーマレードを作り、八百屋に出回るようになった梅やらっきょうで保存食をせっせとしこむなど、しばしおこもり生活を楽しんでいたが、10kgのらっきょうを瓶に詰めた夜、ふと思ったのだ。

「山に戻ろう」。

ツアーの仕事はなくても、次のシーズンの仕込みはできる。下見という名の山行だ。
日本の山はそれほど詳しくない私、どこに行っても初めて見る景色が多く楽しいのだが、今回の行き先は、北海道。
梅雨の気配が漂う本州でなく、カラリと晴れた青空を求めて北海道。

久々の山旅にテンションが上がりながら、6月のある日、からりと晴れた千歳に降り立った。


<1日目 積丹岬自然遊歩道>
「6月の積丹」と聞いて、思い浮かぶものと言えば「ウニ漁解禁」。
地元の北海道民も、新鮮なウニを求めて積丹半島を訪れるという。

私の頭の中は朝からウニウニウニ、ほぼ100%ウニで占められていたが、山の下見という名目上、歩けるトレイルは歩いておきたい。
東京から半日かかる場所なので、移動日に使えるのは午後の数時間。民宿のすぐ北にある積丹自然遊歩道を歩くことに。

民宿のおかみさんから「熊出るから気を付けるんだよー」と送り出された私は、
バックパックには熊鈴、そしてひとりカラオケ大会で歌をうたい、熊に私の存在を気づかせる作戦で進む。

このあたりは積丹きっての観光地でもあるため、遊歩道はよく整備され歩きやすい。

海岸沿いからの崖から眺める「しゃこたんブルー」の色鮮やかな海、断崖絶壁の下に広がる奇岩群、昔ニシン漁で使っていたという小さなトンネルをくぐって到着する島武意海岸で陸を振り返ると、斜面一面にオレンジ色のエゾカンゾウ(ニッコウキスゲ)が、初夏の風に吹かれてそよそよと笑っていた。

自然の中に身をおくことは、私にとってはやっぱり必要だ。
夜は希望通り、とろけるようなバフンウニ、ムラサキウニに囲まれて大満足。

写真2 地産地消の夕食。豊かな食は旅の楽しみのひとつ
地産地消の夕食。豊かな食は旅の楽しみのひとつ


<2日目 積丹岳>
北海道出発前、まいたびオフィスで油を売っていると、(初夏にもかかわらず、すでに真っ黒に日焼けした)まいたびスタッフの西山さんが耳元で囁く。

「積丹半島、夏山でいける一番高い山は積丹岳、積丹岳、積丹岳」。

登れと言うことか。

前日、積丹遊歩道から見えた積丹岳は、なだらかな稜線が特徴的で、優しい顔立ちをしていた。

朝からイクラと鮭の豪華海鮮朝ごはんを食べさせてくれた宿のおかみさんは、さらに巨大なおにぎりを持たせてくれ、
「ちょっと天気悪いかなー、熊に気を付けるんだよー。わたしたちは、あそこは竹の子取りで行くところだけど、上にも登れるんだねえ」と
ひらひらと手を振って送り出してくれる。

おかみさんは、宿の前に笑顔で立ち、車のバックミラーに映らなくなるまで、ずっと見送ってくれた。きっと今日もいい日。

写真3 積丹岳全景
積丹岳全景


平日の早朝、しかも霧雨、積丹岳入口には他に車はない。

おお、この山は今日は私だけのものなのか!と嬉しくなりながら進む。

入口から最初の2kmは、林道が続くのだが、この林道の終点に、なんと地元ナンバーの車が8台も止まっていた(レンタカーの軽自動車で、ワダチ深く刻まれているワイルドな林道を走る勇気はなかったので歩いたけれど、車でこようと思えば、この3合目の避難小屋まで入れる)。

先客の皆さんは、宿のおかみさんが言っていたように、皆、竹の子取り。入口で「この山に一人きり」と思ったのは早合点も良いところ、実際のところ、彼らのおかげで、森は実に賑やかだった。

拡声器でラジオやサイレンの音を鳴らし、道をはずれた藪の奥から、根曲り竹(チシマザサ)を籠いっぱいに詰め込んでいる彼らと挨拶をしながら、私はひとり上を目指す。

5合目、6合目、7合目。。。
途中小さな雪渓を横切ったり、雪解け水の小さな沢を飛び越えたりしながら、この冬の大雪で倒れてきたダケカンバの巨木たちををくぐったり跨いだり、ダケカンバとチシマザサで見晴らしのないままに、高度を上げていく。

最後の急勾配を抜けるともう頂上。
ご褒美は雲を抜けての青空に、雲海の上に浮かぶ山々。
冬スキーでのみアクセスできるという余別岳、遠くにニセコ 連峰と羊蹄山。

北海道の最初の登山が積丹岳っていう人間も、あんまりいないだろうなと思いながら記念撮影。
標高1255m、無事登頂。

写真4 「北海道百名山」積丹岳頂上より
「北海道百名山」積丹岳頂上より。遠くに羊蹄山。ニセコ 連峰。

写真5 ようやく出会えたシラネアオイ
ようやく出会えたシラネアオイは、うすーい花弁、ピンクの可憐な花。

写真6 濡れると透明になる花びら、サンカヨウ
シンデレラのガラスの靴。
濡れると透明になる花びら、サンカヨウ、こちらもお初の花でした。


<3日目 羊蹄山>
積丹岳から遠くに見えた羊蹄山は、蝦夷富士のニックネームのとおり、綺麗な円錐形の山。

海の幸を満喫したので、次は山の幸、収穫したての旬のアスパラガスが食べたいな、と、食い気が先に来るのもどうかと思うが、積丹岳下山後、2時間ちょっと車を走らせ、羊蹄山の麓ニセコの、羊蹄山麓の山小屋に滑り込む。

本州の前線がじゃまをするのか、ずっとガスが掛かり気味で、下からは山の姿は何も見えないが、雲の上に抜けられるだろうという天気予報を信じて、翌日朝5時にひらふ登山口からスタート。

トレイルは整備されているものの、それ以上に野草の成長が早い。
傘として使えそうなほど巨大なフキの葉が両側から私の道を塞ぐ。
朝露と霧雨で濡れている葉っぱに撫でられて、歩きはじめて15分後には全身が濡れる。

ここも、この冬の大雪で両側の木々が倒れており、ほぼアスレチックゲームのように跨いだりくぐったりを繰り返しながらひたすらに登ること3時間、稜線に出る。
ちょうど良い具合に雲の上に出たようで、下界は雲で真っ白なのだが、御鉢と火口だけはクリアに見える。

登っている最中はダケカンバやハイマツの緑色の感じが強かっただけに、ゴツゴツした岩と残雪、茶色と白の景色に、キバナシャクナゲの淡い黄色や、コメバツガザクラ、エゾノツガザクラの濃いピンク色の差し色のコントラストが新鮮な景色だった。

最高地点は、御鉢のちょうど逆側、喜茂別コースの方にあるので、ぐるっと半周回って、朝9時、登頂。
下から全体像を見ることなく、いきなり頂上に立ってしまったので、嬉しさもちょっと微妙な山頂だった。

午後は希望通り、無農薬アスパラガス畑を訪問。
夜はアスパラガスや、インカノメザメ(じゃがいも)や、北海道ビーフやら、山の幸の食を満喫し、こちらも大満足。


「不要不急の外出を控えて」と言われてきた2021年の上半期だったが、自然の中に身を置いて五感を研ぎ澄ませていく時間は、私の人生の中では絶対に必要な時間であると感じさせてくれた旅だった。
少しずつでもよいので、自由に旅に出られるような、かつての日常が戻ってくるように祈ります。

写真7 登山翌日に、ようやく姿をみせてくれた羊蹄山
登山翌日に、ようやく姿をみせてくれた羊蹄山

写真8 標高300mから1896mまで高度に
標高300mから1896mまで高度に応じて変化する植生を楽しめるので、全然飽きることない登山道。
頂上近辺の高山植物のけなげさに、ぐっとくる。

写真9 1898m、羊蹄山登頂。
1898m、羊蹄山登頂。気にしたことないけれど、ここは百名山なんだな。

写真10 五色温泉にて。ニセコは温泉天国。
写真10-2 五色温泉にて2。
五色温泉にて。ニセコは温泉天国。

海外で山に登っていると、日本の「山の後は温泉」という楽しみ方の贅沢さに気づく。
源泉掛け流し。山の中のいいお湯です。



■まいたび参考ツアー
M1049 積丹半島トレッキングと積丹岳 6/13~14
(緊急事態宣言延長にともないツアー中止・終了。次年度にご期待ください!)

M1010 羊蹄山とニセコアンヌプリ 道央の秀峰蝦夷富士
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?course_no=1438



■文、写真/青崎涼子
こんにちは&初めまして。
今年より毎日新聞旅行の国内山旅でガイド、添乗をすることになりました、青崎涼子です。
ここ10年、夏の時期はフランス/スペイン国境のピレネー 山脈界隈で仕事をしており、海外ツアーでお会いした方もいるかもしれません。
社会情勢により海外旅行がままならぬ今、国内の旅で、大自然を満喫するような時間のお手伝いをできたらと思います。
トレイルで皆様とお会いできるのを楽しみにしています!