北秋田、初夏の旅。
高山植物と滝探し
秋田最後の秘境小又峡と花の百名山森吉山ツアー



<初めに>

緊急事態宣言が明けたばかりの6月下旬の火曜日。
久々に仕事だ仕事だと、スキップしながら久々に出向いた九段下のオフィスは、この日の梅雨晴の空のように爽やかで活気にあふれていた。
およそ2ヶ月ぶりに国内ツアーが再開するのだ。
スタッフの誰もが笑顔で業務に取り組んでいた。

今回の行き先は、初夏の北秋田。
秋田県は大きい。
全国で6番目に大きな面積を誇り、それなのに人口は東京の世田谷区より少し多い96万人しかいない。
つまり、町を離れて一歩奥へ入れば、そこには手付かずの大自然が広がっているということで、まだ見ぬ場所に期待も高まる。
今回訪問する小又峡は、「県内最後の秘境」と呼ばれる場所。いったいどんな素敵な景色が待ち受けているのだろう?

出発当日、参加者9名と私を乗せた全日空719便は、羽田を出発してぴったり1時間と10分後、緑眩しい大館能代空港にするりと降り立った。

写真01 窓からの景色は眩いばかりの一面の緑
大館能代空港に近づくと、窓からの景色は眩いばかりの一面の緑


<1日目 小又峡 沢と岩の競演>

到着日は東京からの移動で時間を使ってしまうため、歩けるのは午後の数時間。
大したことができるわけない、2キロほどの遊歩道歩いて、滝を見に行くのか~、
と、そこまでの期待はしていなかった。が、ダム湖である太平湖を遊覧船で横切り、峡谷沿いを歩き始めると、その浅はかな考えは一蹴される。

―――ここは岩と水の天国だ。

人の手のほぼ入っていない原生峡。前日の雨のおかげで水量は十分、曇りがちの空模様も神秘さをプラスしてくれている。次々と続く大小の滝、少し暑かったらぽちゃんと浸かりたいなと思ってしまう小さなプールは、 pot hole - おう穴と呼ぶのだそうだ。
川底が岩石で硬いため、水流やら礫によって丸い穴が開いていく現象とのこと。
飽きることなく1時間歩いた先に現れる、ダイナミックで涼しげな三階滝。飛沫とマイナスイオンを浴びて、森のエネルギーを体内にチャージ。

写真02 小俣峡のポットホールと滝。
小俣峡のポットホールと滝。豊かな水、原生峡ならではのダイナミックな景色。

写真03 ゴールは三階滝
ゴールは三階滝

写真04 小俣峡の岩と水に魅了された
小俣峡の岩と水に魅了された


<2日目 森吉山は花の百名山。花 花 花>

「早池峰山、鳥海山、焼石岳がすごく有名だけれど」
森吉山の花図鑑の筆者、田中さん(宿泊した山荘のスタッフなので、気軽に直接お話が聞ける!)は言う。
「ちょっとマイナーで、でも花の宝庫なのがここ森吉山なんですよ。好きすぎて、図鑑まで作ってしまいました。明日は八重咲きのチングルマを探してみては?」。
図鑑を見せてもらったり、パンフレットの花一覧の写真を見たりしながら、参加者同士、翌日の登山、今まで登って見てきた高山植物の話で(控えめに、静かに)盛り上がる夕食の席だった。

マイナーだと田中さんはおっしゃったが、翌日、朝8時半には駐車場に着いた我々が目にしたのは、たくさんの車。
平日の朝一番にも関わらず、ゴンドラ乗り場は人で溢れていた。
今日が平日でよかった。
秋田市からやってきたという女性は、毎年この時期になると花を見に来るのだという。
そう、地元の登山客で賑わう山だった。

ゴンドラ山頂駅(1176m)を降りるや否や、満開のコバイケソウがゆらゆら揺れながら、我々を迎えてくれる。
歩を進める度に出てくる可愛らしい花々。
花の山ツアーに参加されただけあり、今回の皆様はお花に詳しい方も多く、目にする花の名前が即座に判明する。
標高差300mの、たった3キロほどの登山道の間に、雪解け最初のイワカガミから初夏を教えてくれるニッコウキスゲまで、次々と我々の目を楽しませてくれた。

写真05 今年は花付きの良いというコバイケソウ
今年は花付きの良いというコバイケソウ

写真06 ウラジロヨウラクの森を歩く
ウラジロヨウラクの森を歩く

写真07 頂上付近はチングルマ&イワカガミの白赤コンビで彩られる
頂上付近はチングルマ&イワカガミの白赤コンビで彩られる

写真08 ニッコウキスゲと森吉山。初夏の花も咲き始めていました
ニッコウキスゲと森吉山。初夏の花も咲き始めていました

写真09 私の個人的お気に入りはシラネアオイ。良い感じの株
私の個人的お気に入りはシラネアオイ。良い感じの株。

写真10 四つ葉のクローバー? 八重咲きチングルマ!
四つ葉のクローバー? 八重咲きチングルマ!


<番外編1 旅は地元の人々との触れ合い>

旅の醍醐味は、現地に根を張り住まう人々との出会い。
今回(というか、毎年)現地で我々を案内してくれたのは、農業と二足の草鞋を履く地元在住の山岳ガイド、タクマさん。
初日の小又峡は、「小さい頃、親に連れられて夏水遊びに来た場所」というくらいに彼のテリトリーなので、安心してお任せできる。
歩く場所の見え方も、彼の説明で二次元が三次元、四次元になっていく。
植物の名前から遠くに見える山々、違う季節のこの地の様子まで、タクマさんのガイディングによって、旅はより深みを増す。

最後に、お土産にどうぞ、と、この日ガイド前に朝一番で収穫してきたというキャベツを、一人1ついただく。
秋田空港を歩く皆のバックパックの上部が丸く膨らんだ姿は、まるで登山用ヘルメットを収納しているように見えるが、実はヘルメットでなくキャベツの丸味なのは、私たちだけの秘密なのだった。

写真11 キャベツお土産にどうぞ!と現地ガイドのタクマさん
キャベツお土産にどうぞ!と現地ガイドのタクマさん


<番外編2 旅は食欲>

今回、もう一つ付け加えておきたいのは、宿泊と食事でお世話になった森吉山荘。
国道105号を離れ、ロックフィルダムを右に左に眺めながら、山奥へと進むこと30分。
山奥にひっそりと一軒だけ現れる国民宿舎。
シンプルではあるが、清潔な部屋、山好きの親切なスタッフ、肌に優しい弱アルカリ性の温泉。
そして、素朴だけれども秋田らしい、地産地消の食事。
夕食のきりたんぽ鍋、あきたこまちのご飯に添えられたいぶりがっこ、杉のわっぱに入ったおかず、比内地鶏の炊き込みご飯(筍載せ)は竹の皮に包まれ、秋田杉の間伐材で作られた割り箸は、ほのかに良い香り。
1泊2日。4回の現地の食事は、味覚でも秋田までやってきた旅気分を、十分に満足させてくれた。

写真12 パノラマ、お花畑、そして花より団子
パノラマの景色、咲き乱れるお花畑、そして花より団子、比内地鶏のお弁当に舌鼓


<文章・写真>
添乗員/青崎涼子
通訳案内士(英語)、JMGA認定登山ガイド。
海外のトレイルを日本の方に、日本のトレイルを海外の方に案内する仕事を天職と思って長らく続けていましたが、2020年、海外旅行が止まってしまったため、今年より日本のトレイルを日本の方々と歩く新しい仕事様式に挑戦中。
ずっと遠くばかりを見ていたけれど、足元(日本国内)の美しさにはっと気づかされる日々。
7月も再び東北へ。

写真13 皆様に山でお会いできること楽しみにしています!
皆様に山でお会いできること楽しみにしています!