sea to summit
「月山と鳥海山 温泉に二泊、万全の体調で」ツアー報告


<1日目:梅雨明けから10日、夏真っ盛りの東北へ>
7月。梅雨は明け、夏空眩しい日々が続く。
東京都内は毎日うだるような暑さで、山好き人間としては、雪渓から吹き下ろす冷涼な空気を求めて、高山へ出かけたくなるのは当然だろう。
オリンピック開会式が終わった4連休の最終日、混雑する上り電車を横目に、今回の参加者12名と女子添乗員コンビ、朝妻&青崎の一行は、北へ向かう新幹線に乗り込んだ。
行先は、山形の新庄。
花図鑑を広げ、翌日見る花の予習に励んでいるうちに、あっという間に列車は新庄に到着。
午後の早い時間に2泊お世話になる遊佐町の温泉宿へ投宿。
目の前は、関東の人間にとっては、ちょっと「遠くまで来たな」感のある日本海のビーチ。
今年初の海水浴場。
水着を持って来なかったことを猛烈に後悔しながら、せめて足だけはと、登山パンツをたくし上げ、水に浸かるのだった。
振り返れば、明日登る山、鳥海山。

写真01:宿の前の西浜ビーチ、標高0mから、明日向かう2236mを望む。
宿の前の西浜ビーチ、標高0mから、明日向かう2236mを望む。


<2日目:11時間の長丁場。天気を味方につけて頂上へ>
鳥海山。またの名を出羽富士。
鳥海山のルートは長い。
今回は、最もポピュラーな、鉾立山荘(標高1160m)からの象潟口往復ルート。
往復15kmの距離、山頂2236mまでの標高差1100mは、休憩なしのコースタイムだけで9時間を越す長丁場。
さらに、このスタート時点ですでに森林限界を超えており、ギラギラした夏の太陽を遮るものはない。
現地ガイド渡辺さんの「暑さとの勝負です。途中で買う水を考慮しても、最低2Lは持参して」の言葉を思い出す。
ところが!天は私たちに微笑んだ。
往路はほぼ雲の中。あたりは濃い霧で覆われており、景色が見えない代わりに、涼しさという武器を手に入れることができたのだ。
さくさくと好調に歩を進めていく。
景色はないが花がある。
チングルマの白、クルマユリのオレンジ、ニッコウキスゲの黄色、ハクサンシャジンの青紫。
そしてこの山だけにいるという固有種「チョウカイアザミ」は、シックなルビー色の大きな丸い花。
チアガールがボンボンを持っているみたいだった。
次々と現れる花々の応援を受けながら、信仰の山らしく整えられた石畳、なだらかで広い緑の丘陵地帯、大きな雪渓を横切り、そして最後は北アルプスを思わせる岩稜と、景色姿をダイナミックに変えながら、飽きることなく登頂。
嬉しいことに、頂上に着くと空は晴れ渡り、青空の下での登頂記念写真。
さらにはメンバーの中に10年かけての百名山達成の方がいらっしゃり、記念すべき瞬間に立ち会えて、皆で嬉しさを分かち合う。
今日の夜は、地元の「鳥海ビール」で乾杯しなくては。

写真02:霧の中、幻想的な花畑。色とりどり百花繚乱。
霧の中、幻想的な花畑。色とりどり百花繚乱。

写真03:森林限界はかなり下。見晴らしの良いルートが続く
森林限界はかなり下。見晴らしの良いルートが続く。

写真04:頂上直下は荒々しい岩が待ち受ける。
頂上直下は荒々しい岩が待ち受ける。最後の難関を楽しみ頂上へ。

写真05:鳥海山・新山2236m 無事登頂。百名山達成のお客様も。
鳥海山 新山2236m 無事登頂。百名山達成のお客様も。
私の何倍もの嬉しさでしょう!

写真06:下山時は、きれいな青空となり、足並みも自然と軽くなる。
下山時は、きれいな青空となり、足並みも自然と軽くなる。

写真07:チングルマも太陽の光を受け嬉しそうに揺れていた。
高山植物の夏は短い。
チングルマも太陽の光を受け嬉しそうにさわさわと揺れていた。

写真08:鳥海山にある固有種のうち、1つがこのチョウカイアザミ。
鳥海山には固有種―chokaiense―が2つ。このチョウカイアザミがその1つ。

写真09:石畳で整備されているのは、古くからの信仰の山の印。
石畳できれいに整備されているのは、古くからの信仰の山の印。

写真10:青空の下の花畑も素敵。今年はコバイケイソウの当たり年。
青空の下の花畑も素敵。今年はコバイケイソウの当たり年。

<3日目:月山は次回のお楽しみ。自然には逆らえない>
翌日は月山。
…だったのだが、台風8号は不思議なルートをとりながら北上し、東北地方に向かってきた。
この日の夕方には上陸するかもとニュースは言っている。
乗る予定の新幹線も、前日から既に運休が決まるほどだった。

朝の時点での登山口は、どんよりとした曇り空&微風で、まあチェアリフトも動いていることだし、撤退も頭にいれつつ、状況をみながら柔軟に判断しようということでとりあえず出発。
15分後。
少しだけ標高を上げ、少しだけ歩く向きが変わっただけなのに、立っていられないほどの強風に煽られる。
風力階級表の目安では「風に向って歩けない。転倒する人もでる」のが15~20m/s。
私たちは笑っちゃうほどに無力だった。
「今日は無理。安全第一だ。帰ろう」全員が納得した瞬間だった。
山は、自然は、優しくもあるし、時に厳しくもある。
逆らってはいけない存在なのだなと肌で実感できる、よい機会となった。

花は豊かで歩く人も少なく、自然が野生の自然として残る素敵な東北。
また来れば良いよね!


写真11:南の朝日連峰側はきれいに見えていたが、
南の朝日連峰側はきれいに見えていたが、

写真12:月山山頂方面は雲の中。
月山山頂方面は雲の中。

写真13:皆で「強風に降参」ポーズで集合写真。
思わぬ強風体験をした後、皆で「強風に降参」ポーズで集合写真。
笑顔絶えない素敵なメンバーでした!



■まいたび参考ツアー
M1168 月山と鳥海山 温泉に2泊、万全の体調で 8/9~11・8/29~31



<文章・写真>
添乗員/青崎涼子
通訳案内士(英語)、JMGA認定登山ガイド。
海外のトレイルを日本の方に、日本のトレイルを海外の方に案内する仕事を天職と思って長らく続けていたが、2020年、海外旅行が止まってしまったため、今年より日本のトレイルを日本の方々と歩く新しい仕事様式に挑戦中。
ずっと遠くばかりを見ていたけれど、足元(日本国内)の美しさにはっと気づかされる。海外にはない、日本固有の高山植物に出会うのが楽しいこの頃。短い夏山、楽しんでます。