蓮華温泉~白馬岳~雪倉岳~朝日岳
新潟、長野、富山三県ぐるりと一周 北アルプス最北へ(もぎたて葡萄付)

 
<1日目:トラベルの語源はトラブル?>
8月なのに梅雨前線がかかってぐずぐずとしていた今年のお盆。
ようやく前線がなくなり、本当に久しぶりに、新宿の空は、ギラギラとした太陽が眩しく、夏の爽快さを思い出させてくれた。
参加者12名と今回の同行ベテラン添乗員小室氏&ひよっこ青崎を乗せたバスは、空いている中央高速を順調に走る。
今日向かうは新潟の蓮華温泉ロッジ。
白馬の北からの登山口でもあり、また、温泉好きの間ではかなり有名な秘湯の宿だ。
今日は登山靴履いて15分歩いた先に点在している野趣溢れる露天風呂に浸かって、明日からの長いトレッキングに備えるのだーーと思っていた、その時。

「あれ?」
バス運転手さんの声。
異常を知らせるサインがついたので、ちょっと点検のため止まりますね、と、インターチェンジを降り、一面の葡萄畑の前で止まる。
ちょっとした修理が必要ということで、予期せぬ1時間半の途中停車。
早めのお昼を食べたり、葡萄畑の主に訳を話したりして、特別にもぎたての巨峰やデラウェアを分けてもらい味見をしているうちに、バスは無事復活、再び高速へ。
その後は順調に、蓮華温泉まで進んだ。
結果的に、温泉を楽しむ時間は少し短くなってしまったけれど、それでも我々はあきらめない。
夕食前の少しの時間で露天風呂を楽しみ、温泉成分でツルツルほかほかになった体で、翌日からの縦走に向けて布団に滑り込んだ。


写真01:旅にアクシデントはつきもの。
旅にアクシデントはつきもの。
それでも柔軟に、その場を積極的に楽しんでくださった参加者の皆様に助けられました
(そしてもぎたて葡萄は、本当に甘くて美味しかった!!)


写真02:この野趣あふれる露天風呂は、ぜひ体験しておきたいー!
この野趣あふれる露天風呂は、たとえ宿から15分歩くとしても、
ぜひ体験しておきたいー!


<2日目:雨、晴、風、霧の後に晴れた白馬岳>
この日より、新潟、長野、登山、合計30キロ強の縦走開始。
初日はコースタイム7時間。休憩もいれたら9時間コースだ。
夜明けとともに、朝5時出発、長い1日が始まる。
初夏の花であるはずのチングルマがまだ咲き乱れている白馬大池を通り過ぎ、景色良い稜線を歩きながら、百名山の一つである白馬岳へ。
どんな登山が好きかと言われたら、私は、登頂よりも、何日もかけてバックパックを背負って歩くロングトレイル派なのだが、そんな私にとって、この日の道はお気に入りのひとつだ。
振り返れば歩いてきた道が見え、前方には今から進む道が見える。
翌日以降に行く雪倉岳や朝日岳もすぐそこに。
一歩一歩歩いていれば、人力でもこんなに遠くまで来れるのだ、あそこまで行けるのだ、と、思えるのが、どうも良いのかもしれない。 
ウメバチソウ、トウヤクリンドウ、ウサギギク、コマクサ、カラマツソウ、ジャコウソウ、可憐な高山植物たちの応援がつづく。
山の天気はめまぐるしい。
晴れたり、霧になったり、雨が降ってきたり、稜線上に吹く強風に耐え…しかし宿を出て8時間後に到着した白馬岳山頂では、私たちの頑張りを讃えてくれるように再び青空となり、登頂記念写真をパチリ、と。

この日の宿泊、白馬山荘は、日本最古で最大の収容人数を誇る山小屋だ。
標高3000m近いのに驚くほど居心地の良い絶景カフェ「スカイプラザ」の窓際に陣取り、本日の山歩きを振り返りながら、生ビールで乾杯。


写真03:小さな高山植物の可憐さ。
小さな高山植物の可憐さ。
花が出てくると、皆に元気が戻って会話が増えるのは、気のせいじゃないです!


写真04:行く道、来た道。大池を過ぎたあたり
行く道、来た道。大池を過ぎたあたり。


写真05:天気がくるくるかわり、ウエアリングで歩く
天気がくるくるかわり、この時は雨風対策のウエアリングで歩く


写真06:これから歩く道。雪倉岳、朝日岳。
これから歩く道。雪倉岳、朝日岳。
目を凝らすと、稜線上に赤屋根の朝日小屋が小さくみえた。


写真07:白馬岳2932m。
白馬岳2932m。何度来ても、おきまりの記念写真撮ってしまいます。


写真08:小屋の天気予報。
小屋の天気予報。その通り、くるくると変わっていく空でした。


<3日目:人より雷鳥の気配濃ゆし、広い草原を抜けて向かうは赤屋根ロッジの朝日小屋>
前日の稜線歩きが比較的メジャールートだとしたら、この日、白馬山荘から朝日山荘へ向かうルートは、がくっとマイナーになる。
つまり、見渡す限り誰もいない、貸し切りの山の中を歩ける幸せが待っている。
向かう朝日小屋までは、前日同様、7時間のコースタイム、つまり、休憩いれて行動時間は9時間近くの長丁場ではあったが、その時間を感じさせない素晴らしい場所だった。
雨や霧になると「雷鳥が出そうだね」と予想し(そして実際に母子雷鳥がひょこひょこと歩いていたりする!)、その後にさっと青空が広がると、草原に残っている雨粒がキラキラと光りだし、ある場所では巨大なマツムシソウが群生して重たそうな頭をゆらゆらと揺らしており、角を曲がれば、クルマユリが咲き乱れ斜面一面がオレンジ色だったり、ゴツゴツした岩肌が出てきた後には、女性的な、まるで尾瀬と錯覚するような湿地帯に木道が続いていたりする。
なんと多彩な大地。
2日目の縦走も満喫し、この日のゴールの大きな赤い屋根が印象的な朝日小屋では、名物の女将さんと富山の幸を使った御馳走の数々が、疲れた体を癒してくれた。


写真09:朝日に輝く白馬槍ヶ岳方面
朝日に輝く白馬槍ヶ岳方面


写真10:あら、これは影白馬岳かな!?
あら、これは影白馬岳かな!?


写真11:雪倉岳の手前はトウヤクリンドウが満開。
雪倉岳の手前はトウヤクリンドウが満開。
ところで、トウヤクって漢字では「当薬竜胆」で、胃腸の薬になるんですね!


写真12:この広い景色が1日ほぼ貸し切り。
この広い景色が1日ほぼ貸し切り。マイナールートは良いなあ。


写真13:湿地帯の木道沿いにはハクサンフウロの群生が
湿地帯の木道沿いにはハクサンフウロの群生が


写真14:キヌガサソウ
キヌガサソウ(paris japonica)は、海外の夏山しかほとんど知らない私にはお初の花。
そう、ラテン語名を見れば、日本固有種。


写真15:地元の幸を使った食事は旅の楽しみの重要な要素でしょう?
地元の幸を使った食事は旅の楽しみの重要な要素でしょう?
朝日山荘には、富山の幸が並びます。
ホタルイカの沖漬けが山の中でいただけるなんて!


写真16:わざわざ訪れる価値のある素敵な山小屋。
どこの登山口からも遠いけれど、この赤屋根の朝日小屋は、
わざわざ訪れる価値のある、素敵な小さな山小屋。


<4日目:山をなめるな塩を舐めろ 北又登山口へ>
朝日小屋の入り口には、登山の塩が入った小袋と、こんなキャッチコピーが。
「山をなめるな塩を舐めろ」。
汗ででていく塩分をこの塩で補給してください、との、小屋の小さな心遣い。
こういう小さな心遣いが小屋のあちこちにあって、それだから、朝日小屋って、登山者からの評判良いんだなー。

さて、なんでこんな話を持ち出すかというと、この日、私は、急遽、体調不良のお客様と一緒に、オリジナルのルート(蓮華温泉まで戻る、コースタイム6時間のアップダウン長距離ルート)を行くグループから離れ、一番早く下山できる、富山側の北又小屋までエスケープルートで帰ることになったのだ。
近いといっても5時間以上。
日本海を見下ろしながら、美しいブナ天然林をゆっくりゆっくりと降りながら、お客様がおっしゃった。
「今回は身にしみたわ。今まで大丈夫だったからって、過信してはいけない。山はなめちゃいけない。塩舐めるわね」と。

山、自然の前では人間は小さい。
あくまでも謙虚に、これからも安全な登山を続けていきたいと誓った最終日だった。


写真17:日本海、黒部川の下流を眺めながら下山。
日本海、黒部川の下流を眺めながら下山。


写真18:お昼寝中のマムシ
お昼寝中のマムシ


写真19:明るいブナ林を降りていく
明るいブナ林を降りていく



<文章・写真>
添乗員/青崎涼子
通訳案内士(英語)、JMGA認定登山ガイド。 海外のトレイルを日本の方に、日本のトレイルを海外の方に案内する仕事を天職と思って 長らく続けていたが、2020年、海外旅行が止まってしまったため、今年より日本のトレイ ルを日本の方々と歩く新しい仕事様式に挑戦中。 ずっと遠くばかりを見ていたけれど、足元(日本国内)の美しさにはっと気づかされる。
初夏に訪れて大好きだった北海道、今度は秋の景色を探しに再び出発です。