錦燃える山肌、神の絨毯を歩く
「焼石岳と栗駒山」ツアー同行記(M1132)


山粧う、とは俳句の秋の季語だが、こんなにこの言葉が似合う山はない。
初めて出会う秋の栗駒山は、完璧に錦色に化粧した姿で、どっしりと優雅に佇んでいた。

写真01_山粧う栗駒山
山粧う栗駒山


9月28日。
岩手県側の須川高原温泉を出発し、最初は青空で始まった登山は、頂上に近づくにつれ雲の中に入ってしまった。
うっすらと白いモヤの中、見通しのきかない時間がすぎる。
登山道脇のナンゴクミネカエデは眩しいオレンジ色で揺れ、葉が落ちて枝に残る真っ赤なナナカマドの実は、早くも冬の気配すら感じさせる。
そう、近くは十分にきれいなのだが、できれば「神の絨毯」といわれる山肌全体を見渡したい――。
と、思いながら2時間、あっというまの頂上だった。

写真02_強酸性の秘湯、須川高原温泉
栗駒登山のスタートはph2の強酸性の秘湯、須川高原温泉


写真03_名残ケ原のきれいな木道歩き
最初は湿地帯(名残ケ原)のきれいな木道歩き


写真04_なかなか全貌を現してくれない
登山道両側はきれいなのだが、遠くはで白く霞み、なかなか全貌を現してくれない


写真05_チラリと錦の山肌が
時折視界が開けると、チラリと錦の山肌が


写真06_見えそうでなかなか見えない
見えそうでなかなか見えないじれったさ


頂上では真っ白な背景とともに、登頂記念写真を撮り、強風で体温が奪われていくため、早々に下山すること…およそ10分。
山の神様は、とうとう微笑んでくれた。
それまで山肌を覆っていた雲が徐々に取れ始め、空には青空が戻り、太陽の光の下、「神の絨毯」が全貌を顕す。
オオ!と広がる歓声。
「ああ、これがみたかった……」
「神様いるのかしら。ここで晴れてくれるなんて」
という声とともに、カメラのシャッターを切る参加者。

写真07_真っ白な山頂
真っ白な山頂


写真08_ああ、青空きた!
ああ、青空きた!


太陽の光の下、キラキラと輝く錦色の山肌は本当に見事で、世の中にある芸術っていうのは、こういう自然の見せる美しさを表現しようとしたものなのだなあと思わせた。
こんな紅葉は初めてだ。なんたってカラフルなのだ。
ナンゴクミネカエデの蛍光オレンジが華やかに、ミネカエデのペールイエローにコシアブラはレモンイエロー。
サラサドウダンやナナカマド、ハウチワカエデの少しずつ違う赤。
その間をハイマツと笹の緑色がリズムをとる。
遠く東栗駒の方を見ると、ダケカンバの白い幹がアクセントになり、これまた違う表情を見せてくれる。
京都の呉服屋のショーウィンドウで見かけた、錦糸の着物を思い出させるような秋の色たちが、なだらかな山肌を覆い尽くす。

写真09_太陽光で輝く栗駒山全貌
太陽光で輝く栗駒山全貌


写真10_眼下もこの通り
眼下もこの通り


写真11_東栗駒山方面
東栗駒山方面は、また少し違う表情だった


前日訪れた静かな焼石岳とは対照的に、老若男女、ハイカーからふらりとやってきた観光客まで、懐深く受け入れてくれる感じも良い。

写真12_焼石岳はブナの森から登り始め
焼石岳はブナの森から登り始め


写真13_中沼など所々小さな湖沼が点在
中沼など、所々小さな湖(沼)が点在して瑞々しい


写真14_泉水沼休憩中、見えた青空
泉水沼休憩中、見えた青空


写真15_静かな焼石岳
他の登山客にはほとんど出会わない、静かな焼石岳


最後に、これを読んで「よし、来年はぜひ行ってみよう!」と思われた方へのアドバイス。
頂上に辿り着くまでの道は長くはないですが、地元ガイドの林さん曰く「皆に踏まれ、よく練られた上質な泥」や、滑りやすい石や朽ち果てた木道が続く、地味にチャレンジングな登山道ですので、しっかりグリップのきく靴に泥除けスパッツ、最後に靴を洗うためのタワシ持参がお勧めです!

写真16_よく滑る木道、気をつけて!
よく滑る木道、気をつけて!



<文章・写真>
添乗員/青崎涼子
通訳案内士(英語)、JMGA認定登山ガイド。
ここ10年は、海外のトレイルを日本の方と、日本のトレイルを海外の方と歩いてきましたが、現在は海外旅行が止まってしまったため、日本の良さを再発見する日々です。
日本の紅葉はスバラシイ!10月もカラフルに色づく山を見に、まだまだ忙しく動き回ります。