登山コラム《山記者小野博宣の目》
日帰りツアー「毎月高尾山」レポート(2022年4月)


高尾山(599m、東京都八王子市)のベストシーズンを問われると、紅葉の時期と言う方が多いかもしれない。確かに高尾山の紅葉は、見事の一言に尽きる。薬王院近くのモミジが赤やオレンジ色に染まる様は、山門のたたずまいと相まって名画のようだ。
一方、筆者がとても好きなのは新緑の季節だ。生き生きとした緑が登山道を覆い、青葉がまぶしい。吹く風もさわやかで、前向きな気持ちになる。

22年4月26日午前9時過ぎ、京王電鉄高尾山口駅前に11人の女性が集まった。それぞれが登山用の靴や衣服を着ていた。まいたび(毎日新聞旅行)の日帰りツアー「毎月高尾山」の参加者たちだ。
「登山は初めて」「とても久しぶりで、登れるかなぁ」。緊張気味の人が多い。ツアーは4月から9月まで毎月行われ、高尾山や周辺の山々を歩く。

01_出発前の準備体操は入念に
出発前の準備体操は入念に


「さぁ、出かけましょう」。そう声をかけたのはベテランの山岳ガイド、太田昭彦さんだ。
太田ガイドを先頭に近くの広場へ。ここで準備体操の後に、山歩きのコツなどを伝えた。太田ガイドは実際に斜面を歩きながら、「足の裏全体で静かに着地してください」「傾斜が急になればなるほど、歩幅を狭く、足を下ろすのがポイント」と語りかけた。

02_自然や施設を解説する太田ガイド
高尾山のあちこちで自然や施設を解説する太田ガイド


この後、「高尾登山鉄道」のケーブルカーで山上の「高尾山駅」へ向かい、駅前から歩き始めた。付近には、アヤメ科のシャガの青紫の花が揺れていた。「これはシャガという花です。仏教と一緒に日本に入ってきたと言われています。シャガは釈迦(しゃか)に通じています」。早速、解説が始まった。仏舎利塔の前では、煩悩について「1つや2つの夢は煩悩とは言いません。欲しがり続けるのが煩悩です」と話した。太田ガイドは、山の神仏に詳しい。著書に『山の神さま・仏さま』(ヤマケイ新書)があるほどだ。

03_鮮やかなシャガの花
鮮やかなシャガの花


さらに「本当に緑がたくさんありますね。より取り見取り(みどり)」と冗談を言って、皆を笑わせた。
太田ガイドはツアーの最中にジョークや駄洒落をよく口にする。サービス精神の表れだろう。

04_新緑の山道を歩く
新緑の山道を歩く


都内や横浜市街まで見通せる霞台園地に到着した。参加者から「良い眺め」「空が広い」と歓声が漏れた。薬王院を経由して高尾山山頂へ歩みを進めた。
平日だが、大勢の登山者や観光客でにぎわっていた。神奈川県の丹沢山地も遠望できる。

05_平日でも込み合う高尾山山頂
平日でも込み合う高尾山山頂


ここで参加者はそれぞれ昼食をとり、下山にかかった。新緑の山道をゆっくり歩いた。太田ガイドは、「高尾山全山で約1600種類の植物があると言われています。イギリス一国の植物の種類と同じ数だそうです」と語りかけた。
路傍に白いスミレの花が揺れていた。コミヤマスミレだろうか。

06_コミヤマスミレ
コミヤマスミレ


午後3時ごろ、元の広場に到着した。体操の後、太田ガイドは「来月もお待ちしています」と呼びかけた。参加者の一人は「何とか歩きとおせました。山歩きはいいですね」と笑顔だ。


ツアー「毎月高尾山」について、太田ガイドは「これから登山を始めてみたいという方に、高尾山を楽しみながら、山の基本をお伝えしたい」「久しぶりの登山という方にも、復習として楽しんでいただきたいと思います」と語った。
次回5月26日は、山頂から「いろはの森」と呼ばれる山道を歩く予定だ。
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】


●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長



<「毎月高尾山」ツアーの詳細・ご予約>
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