「花咲く山へ」シリーズ 大佐渡山脈縦走 添乗記


「佐渡は山野草の宝庫」。
何度も聞いてきたこの言葉。ようやくこの目で確かめるチャンスが巡ってきました。5月のゴールデンウィーク、カタクリやニリンソウ、そしてシラネアオイと、春の山野草がそこかしこに咲き乱れる大佐渡山脈の花畑の様子を、写真と共にお届けします。

<1日目>
初日は移動日。関越道を北上、車窓より雪を纏った谷川岳や八海山、越後駒ヶ岳を眺めながら、新潟へ。さらに2時間半のフェリー旅で、70 キロ沖合の佐渡ヶ島へと向かいます。
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2時間半の優雅な船旅で佐渡ヶ島へ上陸

船旅のおおらかでゆったりとした速度、水平線の奥に広がる島の景色が徐々に近づいてくる様子は、「ああ、はるばると海を渡って島へたどり着いた」と感じられる時間で、これから出会う景色への期待度値を高めてくれます。夕陽で輝く大佐渡山脈を眺めているうちに、両津港へ到着。
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デッキから見る大佐渡山脈は夕陽で輝く
港から宿まではほんの5分ほど。ロビーの窓からは、加茂湖の鏡のような静かな湖面が、明日歩く稜線をくっきりと映し出していました。
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宿の前は湖。夕暮れの綺麗な時間帯

宿での夕食は、佐渡、新潟の幸をふんだんに使ったお皿がドドーンと並びます。カニやお刺身、目の前の湖で採れた牡蠣のお椀に、佐渡コシヒカリのツヤツヤご飯。口にいれるもの全てが美味しく、なんとも「口福」な時間です。ご飯のおかわりをする方も、晩酌をする方も、いつものツアーよりも多かったのがその証拠でしょう!

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新潟の美味しいもの勢揃いの夕食
<2日目>
快晴、無風。
絶好の登山日和に、皆、笑顔がこぼれます。
バスで一気に標高890mのドンデン山荘まで上がると、眼下に両津湾、そして今から歩く大佐渡山脈の稜線と、パノラマが広がり、気分が上がります。登山道入口に目をやれば、早速一輪のカタクリとキクザキイチゲが風に揺れながら、春の光を楽しんでいるではないですか!おお、これは楽しみ。
 現地ガイドとして私たちを案内してくれたのは、佐渡生まれ、生粋の佐渡っ子である塚本さん。毎年、まいたびでお世話になっている頼もしいガイドさんです。「カタクリは、佐渡ならどこでも咲いています。時期によって咲いている標高が違うだけで、どこかで必ず見られます。今は、標高800m以上あたりがちょうどいい時期です」との説明。今日歩くルートは、標高800−11100mのあたり。これは期待できそうです。
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登山口横のキクザキイチゲに期待高まる

登山道に入ったとたん、1 歩歩くとオオイワカガミ、さらに3歩歩くとと、エンレイソウと、次々と春の花がお出迎え。花を愛でながら、また写真を撮りながら、ゆっくりと歩き始めます。
 この辺りは昔牧場があり、牛の放牧をしていたため、木はなく牧草地が広がっています。
なんとなくヨーロッパのハイキング道を思い出させるような、景色良い、広がりのある風景。花だけでなく景色にも心を奪われます。行く道、来た道が見通せる、どこまでも気持ちの良い縦走路。天気も良いし、この日はどこまでも歩いて行けそうです。
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尻立山近辺の広々と気持ちの良い道

小さな沢に差し掛かると、真っ白なドレスを纏った水芭蕉に、サンカヨウ。水辺が好きな花たちがお出迎え。また私たちの歩みは止まり再び写真タイムへ。
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冬眠明けのクマが下剤としてムシャムシャ食べる水芭蕉
(*佐渡ヶ島に熊はいません)
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雨に濡れると花びらが透明になるサンカヨウ。

そして出てきたカタクリとシラネアオイの大群落。どこまで行っても続く花畑に、ため息が出るばかり
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カタクリに覆われた登山道
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シラネアオイは女王の品格。
オオミスミソウは、別名雪割草の名の通り、雪を割って咲く花とのことで、最盛期は4月とのこと。それでも、標高高い場所で、可愛らしい姿を見せてくれました。
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白、ピンク、紫と、カラフルさが楽しいオオミスミソウ
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マキノスミレ発見!
「佐渡らしい、他にはない景色といえば、右にも左にも海が見えることでしょう」と塚本さん。確かに!左に両津湾と加茂湖、右には尖閣湾が広がり、ここが島であることを思い出させてくれます。
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海に向かって歩く
「ここは常に強風で、植物も生えないような場所。数日前も歩くのが大変だったんですよ」との説明された場所も、この日は無風で、快適なパノラマトレイルでした。
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遠くに見える金北山。まだまだ先は長い
花というと地面にばかり目を落としがちですが、もう一つ心に残ったのは、コブシに似た、モクレン科のタムシバ。「噛む枝」が語源だそうで、枝はいい香りがするのだとか。遠目で見ると、緑の森の中にくっきりとした白い花が浮き出て見え、目を引く木でした。
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タムシバの花
金北山は標高1172m。頂上近辺には、雪も少し残っており、冬道と夏道が入り混じり、途中ちょっとした難所もありましたが、塚本さんの的確なルート選択と指示で、安心して歩けました。
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残雪残る金北山山頂付近
無事金北山を越え、バスが待つ白雲台へ向かう林道には、無数のフキノトウが顔を出し、春の生命力を感じます
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おいしそう!なフキノトウ。
<3日目>
最終日も快晴は続きます。
朝、食事前に宿の前を散歩。田んぼにはちょうど水が張られ、日本の里山の美しい光景が広がっていました。上空から聞こえる、カラスにも似た鳴き声に空を見やれば、朱鷺が2羽、気持ちよさそうに横切ります。
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朱鷺を探して朝散歩。
さて、この日は半日使って、アオネバ渓谷歩き。沢沿いの木陰、瑞々しいトレイルです。
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沢沿いの道を登っていく

標高300mからのスタートなので、前日とは全く雰囲気も植生も異なり、新たな気持ちで新緑の下を進みます。車窓からもよく見えた道路沿いの白い花は、オドリコソウの群落。
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オドリコソウは道路沿いに
昨日ずっと見てきたカタクリは、この標高ではもう時期をすぎており、今日の主役はオオイワカガミやニリンソウでした。
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ニリンソウ続く道
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ピンクだけでなく、白いイワカガミにも遭遇

そしてとても地味な姿ではあるものの、ぜひ見ておきたかったヤマトグサもたくさんありました。牧野富太郎氏が1885年に生まれ故郷の土佐で見つけ、新種として発表した日本の固有種です。
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細すぎて上手にピント合わず。。。ヤマトグサは見慣れるとあちこちにありました。
何度か沢を渡り、標高を上げていくと、シラネアオイが再び両脇に咲き誇り、
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シラネアオイ街道

最後は、見事なザゼンソウが出てきて、アオネバ十字路へ到着、前日歩いた道へ出て、2日間の大満足な山歩きは終わりです。
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発熱する花、ザゼンソウ

佐渡の花というと、初夏、海辺に咲き乱れるユリ、トビシマカンゾウを見にいくのが一般的のようで、今回のような登山道に咲く花々は、まだあまり知られていないようです。
 ですが、花よし、バラエティに飛んだ景色よし、食事良し、と、多彩な魅力がぎゅっと詰まった春の佐渡ヶ島。まいたびでは毎春定番の大佐渡縦走、自信を持ってお勧めします!
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(金北山山頂にて。今回のスタッフ三人。右より、豊岡添乗員、塚本ガイド、そして私)

【写真/文 青崎涼子】