「紋別・生命の輝きあふれる「陽殖園」と北海道ガーデンと美術館だけをめぐる旅」添乗記

こんにちは。青崎です。
今回は、6月の北海道、ガーデン&アートをめぐる3日間。富良野にいるのにラベンダー畑にはめもくれず、北海道ガーデンと、北海道にゆかりある芸術家の方々の美術館だけをまわる、テーマをぎゅっと絞った贅沢な旅です。心洗われる花々とアートの数々。写真とともに、旅の記録をご覧ください。
<前田真三ギャラリー 拓真館>
1
一面広がるパッチワークのようなラベンダー畑。
広い大地にぽつんと生える白樺の木。前田真三さんの写真は、誰もが馴染みのある、北海道の風景写真、いや日本の風景写真の第一人者ではないでしょうか?
前田さんが写真家になりたての頃、日本一周撮影旅行の帰りに立ち寄ったこの美瑛の丘に惚れ込んだのが、北海道の景色を撮るようになったきっかけなのだとか。廃校になった小学校を利用したアトリエ。写真の世界は、今でもギャラリーの目の前に、そのままの姿で広がっています。
2
<美唄出身の彫刻家、安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄>
3
有楽町の東京国際フォーラム。中庭にあるあの巨大な丸い大理石の作品が、彫刻家、安田侃氏の作品です。東京在住の方なら、なんとなく目にしたことがあるのではないでしょうか?北海道の美唄市に生まれ育った安田氏は、炭鉱閉鎖で淋しくなった町に、再度、子供たちの笑顔を、心を広げられる場を作ろうと、廃校となった小学校に、この場所をアトリエとすることにしたそうです。
4
芝生広がる気持ち良いオープンエアな空間に、安田氏の作品が点在しています。この作品群は、触るのも座るのもなんと自由!丸く削り出された大理石の作品に、そっと手を触れてみる参加者の皆様。その滑らかさに驚いていると、案内してくださるガイドさんが加えます。「幼稚園生がこの作品を目にすると、ボールはどっちに転がっていくんだろう」って言うんですよ。幼稚園生がいちばん作品を楽しめる感性を持っているのかもしれません」
5
ガイドツアー後は、木造校舎の中の作品や、広い敷地内を、皆様思い思いに歩かれ、安田ワールドを堪能していらっしゃいました。
<(星野リゾート トマム、安藤忠雄の水の教会>
6
広大な敷地を誇る星野リゾートトマム。朝の雲海テラスはとても有名ですが(今回は悪天候でゴンドラが動かず中止になってしまいましたが…)、ここには、プリツカー賞受賞の建築家、安藤忠雄氏の水の教会があります。夜の1時間、宿泊者は自由に見学することができるので、我々も、夕食後に訪れました。
7
ガラスとコンクリートの十字架に囲まれた入り口からすぐには入れず、コンクリートの壁沿いにぐるりと歩いて行く、その遠回りなアプローチが期待感を高めてくれます。果たして、ライトアップされた鉄骨の十字架、それを反射させる池と、さらにその奥に浮かびあがる森は幻想的な光景でした。
日本人が祈る気持ちになるのはただ十字架の前に立つ時ではない
あるがままの自然と対峙する時である
– 安藤忠雄
<1000年後の未来を見据えてつくられた 十勝千年の森>
8
日高山脈の麓に広がる広大なこの森は、地元の新聞社が、環境貢献活動の一環として、森の大きな時間、1000年という単位で考え、未来へ遺していく場所として生まれた場所。その一角に造られた庭園は、整然と整えられたというよりは、少しワイルドな印象も受けます。それもそのはず、この庭園は「花が咲く時だけでなく、芽吹きから結実まで全ての過程を楽しむ」コンセプトで造られた庭とのこと。雨の中ではありましたが、思い思いに、庭を散策。
9
この森で飼育しているヤギのチーズが売店に置いてありました。旅のお土産にお求めになる方も。
10
<十勝生まれの画家、神田日勝のベニヤに描かれた黒い馬>
11
今回のおすすポイントは、訪問する場所が、北海道出身や、北海道の大地を愛した人々の作品であること。バスの車窓から見える土地に根を下ろし、今見ているのと同じ景色を見ながら、生活していたのだなと思うと、作品の息遣いがより身近に聞こえてきます。神田日勝氏は、鹿追町で農業をしながら、絵筆を握り続けた画家。彼の地元にある美術館を訪問します。ベニヤ板2枚に描かれた馬の迫力、農具をつけていた跡であろう、毛の縮れ具合の表現に魅了されます。
<ナイタイテラス、十勝平野を一望…?>
12
移動途中で立ち寄った十勝平野のビューポイントは、あいにく霧の中の景色でした。まあ、旅はこんなこともありますね!気を取り直し、牧場から直送のソフトクリームを楽しむことに。「しろ(バニラ)、くろ(ショコラ)、牛(ミックス)」と、ソフトクリームの名称がユニークです。
みなさんもノリ良く、口々に「牛1つ!」「牛ください!」と定員さんに注文。笑い声に包まれます。
<67年間、たった一人で作り上げた、花が伸び伸びと育つ高橋武一さんの陽殖園>
13
最終日にこのツアーのハイライト。ちょっとグズグズしていた天気がようやく回復、この日は真っ青な空が広がりました。気持ち良い初夏の陽気に恵まれ、滝上町にある、高橋武市さんの陽殖園を朝一番で訪れます。武市さんが14歳から始め67年間、コツコツとたった一人きりで作り続け、今も進化中の、自然の声を聞き、無理をせず、「太陽が育て殖やしてくれる」庭、陽殖園。庭師の仕事だけでなく、受付も案内も、とにかく全部の担当が武市さんお一人!忙しい中を縫って、一般開園時間10時までの2時間、我々だけの特別庭園ツアーをしてくださいました。次から次に現れる花を、どれも我が子のように慈しみながら、撫でながら、話をしてくださいました。
「今はね、ウツギと手毬灌木が綺麗な時期だよ」
14.5
14
15
「ルピナスは、外国からきた花だけど、今では北海道ならどこにでも見られるよね。白、ピンク、紫と色も多いけれど、だいたい青色に引っ張られて、どんどん色が濃くなるんだ」
16
「これがチシマタンポポ。ありふれている花?珍しかったり値段が高いのが綺麗な花っていうわけじゃないよね。タダでも綺麗なものはたくさんある」
17
「ここね、空気の通り道なんだよ。気持ちいいんだ。ちょっと振り返ってみてよ。いいでしょう?ここに森のベンチを用意しておいたから、あとで一人で来て、ゆっくりと座ってほしいな」
18
「案内番号板が、小さく隠れるように置いてあるのは、景色の邪魔をしてほしくないから」
19
「ここは4月から10月まで開けている。いつきたって、何かが咲いているよ。だから、何度も来てくれるリピーターも多いんだ。もし花が咲いていなかったら…? 僕が話に花を咲かせるよ」
あっという間の2時間。
暑さも出てきたため、道の駅へ戻って一度休憩を挟みます。次は自由に、園内を散策される皆様でした。私も少し歩きましたが、蝶々が次々と蜜を吸いにきていて、農薬を全く使用しないこの庭園は、人間だけでなく、虫たちにとっても楽園なのだと気付かされます。
20
午前いっぱい、たっぷりと時間をとっての陽殖園訪問、皆様心ゆくまで楽しまれたのではないでしょうか?
<最後は、英国式でなく、北海道式ガーデンを目指す、大雪森のガーデン>
https://www.daisetsu-asahigaoka.jp/index.html
最後は、2016年にできた、大雪森のガーデンを訪れます。向かう途中、遠くには雄大な大雪山塊がどーんとお出迎え。
21
テラスで軽くランチをいただいたあと、こちらも庭師の方に、今旬の花を案内していただきました。午前中の陽殖園とは全く趣の違う、モダンで、綺麗に手入れされたカラフルな庭園。作り上げる人の想いによって、こんなにも表情の違う庭になるのだと、二つの対比が面白い1日となりました。
22
最後、旭川空港に向かう途中、車窓からみえた「天使の梯子」。
幸運の印なんだと、教えていただきました。3日間、北海道の美しいアート&ガーデンを堪能した私たちは、幸運よね、という誰かの一言に、バス内の皆様も大きく頷かれ、帰路につきました。
23
次の出発は2022年8月24日。
8月末の庭園は、どんな色で彩られているのでしょうか?

【写真/文 青崎涼子】
通訳案内士(英語)、JMGA認定登山ガイド。
通訳案内の仕事もしています。海外からいらっしゃるお客様と、京都などで歴史ある日本庭園を鑑賞することは多々あれど、「北海道庭園」は初の体験。その土地ならではの環境や文化、歴史、そして何より、情熱と愛情が伝わる訪問箇所が多く、アートやガーデンという切り口での北海道体験の面白さを感じました。より北海道愛が深まった3日間でした。
24