充実の北アルプス縦走 添乗レポート

百名山を5泊6日で一気に5座登るロングコース。北アルプスの夏を満喫するにはうってつけのコースに興味ありますか?

2022年8月1日(月)
初日は新穂高からわさび平小屋まで4キロ程度の林道コースを歩くだけ。翌日の難敵、「笠新道」へ立ち向かうにはやや物足りないくらいの行程ですが、都心からのアプローチを考えると初日はこれが限界。
 毎年のように暑さが厳しくなる街中を抜け出して、沢が流れて涼しさたっぷりのわさび平小屋には新穂高温泉から1時間ほどの林道歩きで到着。1時間程度でも大汗をかいてしまった。いやー、今年は山も暑い。
そんな時に目に飛び込んでくるのは、くりぬいた丸太の中に沢水を流して冷やしてあるドリンクや夏野菜。なんとも涼しげで登山者を癒してくれるものばかり。手を伸ばさない人がいるだろうか。さらに、ここにはお風呂もある。入らない人がいるだろうか。まずいないだろう。登山者にはありがいたいものばかりのわさび平小屋で初日の夜を過ごした。
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百名山1つ目「笠ヶ岳」
2022年8月2日(火)
翌日からが登山本番。空がわずかに白む中、アルプスの三大急登と言われる笠新道の登りからスタート。笠新道の入り口から山頂までは標高差約1500m。標高差も標高差だけど、暑い中に登るのはさらにつらい。ということで早朝に出発。この日だけに限らず、毎日早朝に出発。5泊分の荷物の重さをいやというくらい感じる急な樹林帯の道をひたすら登る。まだまだ早朝だというのに、汗が止まらない。今回は、男性陣よりも女性陣のほうがきつそうだった。どうしても調子が上がらないお客さんと途中からグループを分けて、わたしが後ろから仙石ガイドが率いるグループの後を追うことにした。暑さと急登の両方と格闘すること数時間、樹林帯を徐々に抜けて景色が望めるようになると気分も違う。じりじりと容赦なく照りつける太陽を浴びて、こちらはどんどん汗だく、でも山はますます見映えがして槍ヶ岳から穂高連峰までの贅沢な稜線の光景が背後に現れた。南の方角には、焼岳、乗鞍岳、さらに御嶽山までくっきりと見える。山の斜面には、高山植物が咲き乱れ、緑色の草地の中に群生するニッコウキスゲや、クルマユリの色がとにかく目立つ。これぞ夏山!
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穂高連峰を一望
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稜線に上がったところが杓子平。それまで全く見えなかった笠ヶ岳とそれに連なる稜線が目の前に8K映像のように飛び込んできた。半円を描くようなカール地形は何かの舞台のようだった。

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ここでいったん前を行くグループに追いつき、入れ違いのような形で前のグループが出発。まだまだ登りは続くが、この景色の中を登ると思うと気分が断然違う。稜線から細くなって下る谷筋には残雪がわずかに残り、白っぽい岩が山にアクセントを付け、背後には真っ青な空が広がっていた。花が残るチングルマと花がなくなって吹き流しのようになっているチングルマもどちらも絵になる。
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                 チングルマ

笠ヶ岳から続く稜線との合流地点が、抜戸岳への分岐。ここまで来ると今度は、鷲羽岳、水晶岳、黒部五郎岳、薬師岳など、これから登る目的の百名山がすべて一望できた。そして、その反対側には、どっしりと存在感を示す笠ヶ岳が聳える。
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薬師岳(右)と黒部五郎岳(左)を望む
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鷲羽岳(右)と水晶岳(中央)を望む
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堂々とした笠ヶ岳

あとは、そこに向かって贅沢な景色を楽しみながら小屋を目指すだけ。小さなアップダウンを繰り返して、岩がゴロゴロした最後を登りきって小屋に到着した。いったん荷物をおいて先に山頂に登ることに。雲がやや多くなってきてはいたものの、360度のパノラマを楽しむことができた。山頂に限らず、ガイドの仙石さんの解説は、多くの経験を積んできているだけにいつも頼りになる。
ダイナミックな夕焼けとはいかなかったが、小屋の上で夕陽の当たる積乱雲が印象的だった。
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2022年8月3日(水)
3日目は、双六小屋経由で三俣山荘までの行程。笠新道のような登り一辺倒の行程ではないものの、アップダウンを繰り返すので地味につらいルート。おまけに、この日は予報に反して午前中の早い時間からガスがわき、双六山荘を過ぎてしばらくすると雨になった。前日のあの青空が1日で真っ白な景色になってしまうので、山の天気は変わりやすいことをしみじみ感じさせられる。
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朝陽が当たる笠ヶ岳
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あっという間にガスの中

 昼食を食べる予定の双六山荘まではとりあえず景色を諦め、花を見ながらの歩きとなった。昨日は、暑くてどうしようもなかったのにガスが立ち込めるこの日は肌寒かった。それでも高山植物が咲いているだけまだましと思うしかない。でも実際の花はとても多くきれいだった。
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アオノツガザクラ
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ミヤマダイモンジソウ
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ハクサンイチゲ
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キヌガサソウ
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クロユリ

 そして、天気が悪いとよく目にするのがライチョウです。天敵に見つからないように、曇りや雨の日うろうろとして高山植物を食べている姿は本当に愛らしいものです。
 双六山荘ではほとんどの方が五目ラーメンを注文し体を温めた。こんな日は温かい食べ物が本当にありがたい。双六岳中腹の巻道を進むころから雨が降り始め、カッパを着ての三俣山荘到着となった。
三俣山荘の魅力は2階にある展望食堂兼カフェ。本格的なサイフォンで抽出したコーヒーなどでお客さんをもてなしています。鷲羽岳のすぐ下にあるだけに、晴れていれば本当に贅沢な景色の食堂だったんですが・・・。
そして、もうひとつ忘れてはならないのが、復活プロジェクトが進行中の「伊藤新道」。受付横の壁にはかつての伊藤新道の様子が当時の写真とともに飾られています。この道が復活すれば、さらにこのエリアの魅力が高まるに違いありません。現在は、復活にむけて資金を募るためのクラウドファンディングを行っているようです。
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百名山2つ目&3つ目「鷲羽岳」「水晶岳」

2022年8月4日(木)
4日目は私たちの期待を大きく裏切る雨の朝となった。参加してくれたお客さんの中には、遠くからわざわざ来てくれた方もいらっしゃるのに、お天道様はそんなことは微塵も気にしていないかのような2日連続の雨。目の前にある鷲羽岳すらまったく見えない。それでも、雨風がひどくならないことを祈りつつ出発。
とりあえずは順調に鷲羽岳に登頂し、さらに水晶岳を目指した。
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 水晶岳は遠くから見ると、ギザギザとして険しく見える山で鷲羽のようになだらかではない。梯子があったり、岩峰がある岩山で荒々しい。こんな悪天の時はさらに慎重にならなくてはならない。雨の中でしたが、途中にある水晶小屋の外でひと呼吸ついてから気持ちを切り替える。すれ違う人もごくわずか。晴れていればもっと登りに来る人も多いのだろうなと思いながら、西から回り込むように岩稜帯を越えて、なんとか水晶岳の山頂にも立つことができた。相変わらず、まわりは真白なガスの中なので、あまり長居をせずに下ることにした。
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荒々しい水晶岳の上部
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水晶岳の山頂
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谷を埋め尽くすような高山植物

 復路は黒部川の源流碑がある道で三俣山荘へといったんもどった。源流といえども、雨の影響で水はそれなりに流れており、今日の源流はもう少し上にあるような感じだった。こんな天気ですが、鷲羽岳から流れる沢沿いの谷を下る途中には、多くの高山植物が咲きそれなりに見事な光景でしたが、特にクルマユリの多さには驚かされました。

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黒部の源流
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クルマユリ

三俣山荘に戻った後は、荷物をまとめ雷鳴がなり始めた中を黒部五郎小屋へと進み、途中からはさらに雨が強くなるという忍耐を試される4日目となりました。

百名山4つ目「黒部五郎岳」

2022年8月5日(金)
翌5日目は、前日とは違い明かに晴れを感じさせるような空。まだうす暗い時間帯に外に出てみると、空には星が残っていた。よし、今日こそは。2日間景色を楽しめなかった分、皆さんも期待を大きく膨らませながらの出発。今日こそはまた夏山の景色を見せてほしいと、祈るような気持ちで樹林帯を抜けてカールへと上がった。
 そして、笠新道の登りで感じた太陽を首筋に感じた。振り返ると、まぶしい太陽の光。色を無くしたかのように黒く沈んでいたカールの内部に陽が差し込むと、みるみるうちに色がつき、そして濃くなり、昼間とも違う朝露に濡れたみずみずしい光景になった。ずいぶん待たされた気分だった。
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まだ日が当たらないカール
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カールに差し込む太陽
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今回4つ目の百名山、黒部五郎岳もはっきりと近くに見える。ガスがかかる前に早く山頂に立ちたい、いや、この景色をゆっくり楽しみながら登りたいのか、皆さんはどう思っているのだろうかと考えていた。高度を徐々に上げていくと、槍ヶ岳や穂高も一望でき、カールの縁に上がると今度は薬師岳から剱岳まで見ることができた。
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薬師岳とその奥に剱岳
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いかり肩のような剱岳(望遠)

山頂にいる時間は、わたしたちにとっては今回のルートがほぼすべて見渡せる至福の時間となっていた。そして、目指す太郎平までの道もよく見えた。
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「近くに見えますが、意外とこの道が長いんですよ」と仙石さんが解説。わたし自身も何度か歩いたことがある道ですが、上から見るととても歩きやすそうに見えて意外とハイマツなどがあり全部が歩きやすいわけではないんです。それでも、進む道が見えているというのは安心できるものです。
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しっかりと山頂からの景色を楽しんだ後、太郎平に向けて夏雲が浮かぶ空とハクサンイチゲやチングルマなどが咲く花畑を見ながら気分よく太郎平小屋へと到着。
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百名山5つ目「薬師岳」

2022年8月6日(土)
6日目は最後の百名山、薬師岳を往復して折立へと下る日です。朝起きてみると、朝焼けは微妙かなと思わせるやや雲が多めの空。半分諦めつつも、期待は捨てずに出発。薬師岳は雲というかガスの中というか。
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樹林帯を抜けて、開けた道の脇には咲き終えたチングルマがごろごろとした石の道を飾るように群生していた。花がなくなっても“花”があるチングルマはいいものです。
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 ガスが濃くなったり、薄くなったりする中、黙々と山頂へと向かい、ガスが晴れないままとうとう薬師小屋へ。休憩を取りながら、毎日晴れるというのは難しいのかと思っていると、どんどんガスが切れて空が青みを増し、北東側には富山湾、東には穂高連峰が眩しい太陽光とともに現れたのです。俄然、登る足にも力が湧いてきた瞬間でした。歩き始めて振り返れば、薬師小屋は雲海に浮かんでいるかのようで、その奥にはぽっかりと笠ヶ岳が頭を出していました。
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薬師岳山荘
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頭を出す笠ヶ岳(左)

 到着した山頂からは360度の大展望。最後に皆さんにこの景色を見てもらうことができたことは本当にうれしいものです。お薬師様のお陰でしょうか。そんな風に思わずにはいられません。ガスの間から少しだけ見え隠れする剱岳の景色を楽しんだ後、満たされた気分で下山の途につきました。
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【文と写真:渡辺和彦】

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2022年9月14日(水)M2433 槍ガ岳~南岳と氷河公園 逆さ槍や穂高連峰、大キレットを望む

2022年9月15日(木)M2422 燕岳~大天井岳~常念岳 展望抜群の稜線歩き 常念山脈縦走

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