櫛形山 南アルプス前衛

1アヤメ
アヤメ

2022年6月23日(木)
甲府盆地から見ると和櫛を伏せたような山容の櫛形山へ。
『花の百名山』の著者田中澄江さんがこの山を登ったのは本を書き終わったあとで、この山こそ載せるべきだと悔やんだそうです。
かつては3000万本のアヤメが咲き乱れていたというアヤメ平。
鹿などの食害で激減。
現在は「櫛形山を愛する会」のボランティア活動などで、鹿柵の設置や補修・点検のおかげで、植生が少しずつ回復し、鹿柵内では色々な花が見られるようになってきました。

新宿をバスで出発。
空は明るいものの中央高速から見える山の上部は雲の中。
櫛形スポーツ公園でジャンボタクシーに乗り換え、池の茶屋林道を終点まで。
スタート地点の標高は1850m。山頂の標高は2052m。標高差202m。
靴マーク2の設定ですが、標高差1100mの下りが長く侮れません。
鹿柵を開けてスタート。
足元にはシロバナヘビイチゴ。
そしてベニバナノツクバネウツギ。
木が伐採され、展望地となった場所にはベンチが整備された箇所がありますが、今日は残念ながら富士山を見る事が出来ませんでした。
アヤメの季節は梅雨の最中。

2ベニバナノツクバネウツギ
ベニバナノツクバネウツギ

ダケカンバやツガなどの原生林の森を緩やかに登っていきます。
サルオガセに覆われた森は幻想的です。
空気のきれいなところにしか生息しないというサルオガセ。
ウメノキゴケ科サルオガセ属の植物で、樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣。
サルオガセに覆われる事で枯れてしまうと思っていましたが、調べてみると地衣類は独立栄養生物なのでキノコのように樹木から栄養を取ることは無いそうです。
地衣類が作る固有の化学物質(地衣成分)は植物成長抑制作用を持っているので、細い枝は枯れてしまうことがあるそうです。

3サルオガセに覆われた森
サルオガセに覆われた森

三角点のある奥仙重を経て、日本二百名山・山梨百名山の櫛形山山頂で昼食。
裸山の麓に到着したもののアヤメはどこ?
それでも反時計回りに一周するとわずかにアヤメやグンナイフウロなどを見る事が出来ました。
お客様から柵の中の遠い位置ですが、赤紫の花は何でしょう?と聞かれました。
以前櫛形山にはアツモリソウがあったけれど、盗掘でなくなったとのお話も伺いました。
位置が遠い事、後ろ姿なので特定できませんでしたが、次回訪れるのが楽しみになりました。
アヤメの見頃には少し早いようです。

アヤメ平には「手折られしアヤメの花のあわれさよ 君にも命のあるものを」と書かれた碑があります。
アヤメはまだ咲いていませんでしたが、マイズルソウの群落が見事です。
ここから長い下りが始まります。
だいぶ前ですが、この下りでコヒナリンドウを見かけました。
初めて見る花でしばらく名前もわからず、「聖岳周辺の花」という冊子で名前を知りました。
つい先日その時の話を岩手の山でお客様に話した後で岩手でも偶然再会。
今回も会うことが出来ました。

4ウメガサソウ
ウメガサソウ

5コアジサイ
コアジサイ

クサタチバナ・コアジサイなどの花々を眺めながら見晴平へ。
ここで一度林道に出るので、終了と思いきや残念ながらバスは入れません。
でも、ようやく富士山の姿を見る事が出来ました。
ここから約1時間、さらに下って北尾根登山口でバスに乗車。
道の駅しらねの向かい側にあるJAの直売所で買い物をして新宿に戻りました。
季節を変えて花を愛でながらゆっくり歩きたい。
そんな気持ちになる山旅でした。

写真・文 上野ひろみ
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1