羅臼岳・斜里岳・阿寒岳
原始の息吹を残す道東三山へ

こんにちは。青崎です。
道東。なんとロマンチックな響きでしょうか。
北海道の中でも手付かずの原野、大自然が多く残る場所、見渡す限りの地平線。
知床をはじめヒグマもたくさんいるので、歩く際の振る舞いには注意が必要ですが、そういう部分も含め文明ではコントロールしきれないワイルドさを秘めているのが魅力的な道東です。
山の視点でみれば日本百名山が3座ある場所。
一度の旅で3つの違った雰囲気の山行を楽しめる旅、一粒で2度美味しい、いや3度美味しい旅。
以前から他のツアーでご一緒した複数のお客様より、「道東はいいよー。山は大変なんだけどね、毎日下に降りてきて宿でいい温泉入って、北海道の美味しい食事にありつけるから、そんなに疲れないんだよ。山小屋じゃないっていうのは大きいね」というコメントを何度かいただいており、気になっていた旅です。
年に2回設定している人気ツアーですが、今回は秋の匂いが漂い始める8月末の旅に添乗してきましたので、写真とともにこの旅の魅力をお伝えしたいと思います。

<2022年8月21日(日) 1日目:移動日>
初日は羽田からの移動日です。北海道は広い。
女満別空港から目指す知床の宿「地の涯(はて)」までは、たっぷり100km2時間。
車窓からはオホーツク海でシャケ1本釣りをする人々、なだらかな裾野を広げている斜里岳、28km直線距離が続く地平線までひたすらに続いているような道路など、旅情を盛り上げてくれる景色を見ながら進みます。
お宿「地の涯」は知床国立公園内にある、道のどん詰まりの一軒宿。羅臼岳登山口横と完璧な立地です。
「夜になったら熊が怖いので、露天風呂は気をつけてくださいね~」とドライバーさん。
岩尾別温泉でさっぱりと汗を流し、斜里産ニジマス、羅臼産イバラ蟹、知床産エゾシカ肉と、地の食材をたっぷり使った夕食をいただき、明日からの3連続登山に備えます。

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パッチワークの畑が続く北海道へ上陸です

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知床へ向かう車窓からは美しい斜里岳が
目立つ山ですね

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日本の滝100選オシンコシンの滝へ立ち寄り

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「地の涯」で待ち受けていたのは地元の海の幸山の幸

2022年8月22日(月)2日目:知床羅臼岳登山>
2日目は知床国立公園内、標高1661mの羅臼岳。
出発地点が230mなので、単純計算で約1400mの標高差。
朝5時に出発し下山は16時予定と、最初から手強い長い1日です。
ですが、天気が我々に味方してくれました。
雲一つない青空、カラッとした空気、オホーツク海からの北国を感じさせる涼しい風が頬を撫で、標高1000mあたりまではダケカンバや背の高いハイマツが木陰を作ってくれるため、スイスイと登れてしまいます。
ただしヒグマには常に注意。新鮮な落とし物を登山道に発見し気を引き締めます。
グループで動いているのである程度安心感はありますが、それでも音を出しながら会話をしながら、気配を十分に出した上で歩きます。頂上に近づくにつれ壮大な景色が広がります。半島ならではの右も左も海、その奥に国後半島。
知床半島先端の硫黄山方向に続く稜線、そして羅臼の町や斜里の町。遠く斜里岳、阿寒岳まで見渡せます。地元のガイド、硲(はざま)氏曰く、「ここまできれいに見えることは、あんまりないよ」と。
知床半島を山上から満喫した1日となりました。車を1時間走らせ、次の目的地清里の宿へと移動。
温泉にサウナもあり汗をさっぱり流します。

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北海道でも特に知床はヒグマの生息地であることをしっかり認識して

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雪のせいか風のせいか横に生えるダケカンバの森を抜けると…

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高山植物は秋の気配

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羅臼岳山頂が見えてきました

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水平線の向こうに国後島

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オトギリソウの奥に続く稜線は硫黄山へ続く道 いつか歩いてみたいなあ

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知床半島方面を見る 海が両側に

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斜里岳はこの日もよく見えました

2022年8月23日(火)3日目:斜里岳登山>
「この山は北海道らしさを楽しめる山。沢道を詰めていきます。右に左に沢を何度も渡りますが、飛石に上手に足を置けば大丈夫。飛ばないように前の人が足を置いた場所をよく見て」と硲氏の朝のアドバイス。
一言でいえば沢登りまでは行かないまでも沢歩きを満喫できるはずでした。
が、そんなに簡単にいかない北海道の天候。
前線通過のこの日の天気予報は、風と小雨そして風が強いとあまり登山には好ましくない天候。
朝は曇りだった天気は徐々に霧雨、雨となり、また風も強くなってきて時折吹き上げる突風。
濡れた岩は滑ります。
互いに声をかけあい励まし合い、かなり難儀しながら標高1230mの上二股(かみのふたまた) まで進みます(斜里岳は標高1535mなので、あと1時間半ほどの場所でした)。
ですが、稜線に出てから想像される強風とここまでの疲労度を考え、安全策をとって下山。山は逃げません。安全に下山するのが最善策。
日本百名山登頂としては次に宿題を残してしまいましたが、ちょっとしたアドベンチャーな体験ができた貴重な1日となりました。
2時間かけて阿寒摩周国立公園へと移動。
この日の宿はわざわざお風呂に入りに来る人も多い秘湯中の秘湯、山の中の一軒家野中温泉です。
手作り感あふれる、体に優しい温かなお食事が疲れを癒してくれます。
ここも登山口が横にあるのが嬉しい立地。

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参加者の方からご提供いただいたお写真 沢沿いを進みます

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飛石を上手に使って対岸へ 滝を見ながら
いくつの滝が出てきたことか

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上二股にて 撤退判断を告げる硲ガイド

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野中温泉 トドマツでできたこの湯船の風情 源泉掛け流し

2022年8月24日(水)4日目:雌阿寒岳登山と阿寒摩周国立公園観光>
最終日、雌阿寒岳は半日の山行。
昨日の雨はどこへやら、再びの真っ青な空に皆さんの顔も少しリラックスした表情の朝。風は少し冷たく一雨越して、夏から秋の空へと変わったのを感じます。北の大地は季節の進み方が早い。羅臼岳と斜里岳の大変さに気を取られ、あまり注目していなかった雌阿寒岳ですが、エゾマツの貴重な自然林、ハイマツ地帯を歩くこと2時間で稜線へ。
 そこで目にしたのは活火山らしい水蒸気あがる茶けたカルデラ。阿寒湖と雄阿寒岳、遠くにくっきり斜里岳まで見えます。お釡をぐるりと回ると真っ黒で端正な姿の阿寒富士。
ザレ場にしがみつくように生えているメアカンフスマの白い花。日本が火山の島であることを感じられる光景が目の前に。羅臼岳とも斜里岳とも違う山でした。お昼には下山できる気軽な山なのも最終日には嬉しいものです。

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えぞまつ自然林から始まる登山道

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何合目の表示があるのは嬉しい

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この山で目立った植物 ガンコウラン
国立公園なので採取できませんがジャムにすると美味しいですよね

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パイオニアプラントなのかな
ザレ場にしがみつくメアカンフスマ 可愛らしい花

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9合目過ぎて出てきた火山の荒々しい光景に歓声あがる

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逆を向けば雄阿寒岳、阿寒湖が

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火口を歩く

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ぐるりとまわると阿寒富士がドーンと目の前に

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森の住人にも出会いました

阿寒湖畔の温泉でさっぱりした後、アイヌの人たちが作る木彫りの熊を見たり、緑色のマリモ羊羹をお土産に買ったり、しばしゆっくりした時間。
午後はバスに乗り込み、近くにある摩周湖や屈斜路湖も十分堪能し帰路につきました。
4日間盛り沢山の旅でした。

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霧のない摩周湖 深い深い青
「摩周ブルー」は北海道三大ブルーのひとつなんだとか

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真っ白な大地、噴き出る水蒸気と黄色い硫黄
硫黄山に立ち寄り


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美幌峠からは屈斜路湖、斜里岳(また見えた)、緑の大地と地平線
見事な景色が

このツアーは靴マーク4。
3日間しっかりと歩きますので、体を山に慣らし準備をしたうえでぜひ来年以降道東の山旅をご検討ください。
本当に良い旅でした!

【写真/文 青崎涼子】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1
英語通訳案内士

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雌阿寒岳山頂でのスタッフショット
長田ガイドとは6月の積丹岳に続き今年2回目