登山コラム《山記者小野博宣の目》
富士山2泊3日
-東京・安心安全富士登山2022-ステップ7

83歳
富士山登頂を果たした83歳の佐々木さん

「もう本当に、感謝感激です」。好好爺はそう言って、相好を崩した。
佐々木勝範さん、83歳。「富士山に登るのは、もうあきらめていた」。そう言葉を継いだ。
2022年8月30日朝、佐々木さんらはスバルライン五合目のレストハウスにいた。まいたび(毎日新聞旅行)の「安心安全富士登山教室」に参加、富士山山頂に登り、無事に下山を果たした。

教室は、登山初心者が8月の富士山登頂を目標に、3月の高尾山(599メートル)から月ごとに標高を上げて、体力と技術をつけてゆく。佐々木さんは、高尾山から7月の硫黄岳(2760メートル)まですべての教室に参加した。「(5月の)筑波山(877メートル)だけは、両神山(1723メートル)に変えてもらいました。筑波山はよく登っていたので」。リュックサックに2リットルの水を4本入れて、両神山に登ったと話した。「きつかったなぁ」とまた笑顔となった。さらに、自宅近くの川沿いの散歩道を雨の日も風の日も歩き続けたという。
「富士山に行こうという気持ちがあったから。普段は、雨の日に歩かないよ」。柔和な眼がさらに細くなった。
佐々木さんら参加者14人は29日午前4時半ごろ、吉田ルート・七合目の山小屋・日の出館を出立した。小田口尚史・登山ガイドを先頭に、夜明け間近の薄明りの中を進んだ。「岩場が続きます。ゆっくり歩きましょう」。小田口ガイドが声をかけた。
DSC_0349 富士登山教室3 日の出
富士山吉田ルート七合目での日の出(22年8月29日午前5時過ぎ)

午前5時10分ごろ、夜明けを迎えた。闇を払う太陽の光に、女性参加者は「生まれたての太陽、すごい」とため息をついた。同7時半過ぎ、二泊目の宿となる山小屋・白雲荘に到着した。ここで登山に必要のない荷物を預かってもらう。
DSC_0367 富士登山教室3 岩場
岩場を登る

「山頂まで3時間くらいかかります。30分ごとに休憩を入れます」とガイドが声をかけて、出発した。急傾斜の岩場が続く。「歩幅を狭く、ゆっくり」「安定した場所を探して足を置いて」とガイドは注意喚起を怠らない。同10時半ごろ、山頂に到達した。「やっと着いた」「ついに来た」。
グータッチ2

山頂で小田口ガイド(右)とグータッチをする参加者

1人1人に喜びと安堵の表情が広がった。それぞれが記念撮影をし、喜びを分かち合った。だが、山頂は強風が吹きつけ、かなり寒い。それぞれが手早く食事をし、急いで山頂を後にした。
山頂から5分も歩くと、山陰に入った。風はぴたりと止んだ。砂と石が混じった滑りやすい下山道を慎重に歩いた。そして、午後零時半ごろ、白雲荘に戻った。
DSC_0461 (2) 富士登山教室3 雲の中を下山
雲がわく中を下山する

目標だった富士登山を成し遂げた喜び、無事に山小屋にたどり着いた安心感。
参加者の表情は穏やかだった。
RIMG2386 富士登山教室3 トリカブト
トリカブト

【毎日新聞元編集委員、日本山岳協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。
毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長