嵩山(たけやま)~岩場歩きと鎖場、奇岩、怪石を楽しむ
2022年12月11日(日)
夏のアルプス難所コースへご参加のお客様に、参加をお願いしている岩場に慣れていただくコースでもあります。参加者の半数以上の方はそのためにご参加いただきました。今日は宮崎ガイド。スタッフは奥谷と上野の三人態勢。
「道の駅霊山たけやま」からスタート。道の駅から眺めると下からワイヤーのようなロープがかかっています。「なんだろう?」するとお客様から、鯉のぼりを下げるものだと教えていただきました。帰宅後調べると、毎年5月5日に親都(ちかと)神社の春のお祭りと合わせて開催される「嵩山祭り」、約100匹の鯉のぼりが大空を泳ぐそうです。
嵩山全体が親都神社のご神体です。太平洋側は快晴でしたがここ吾妻地方は少し雲が多めです。ぐるり時計回りで周回して歩きます。嵩山(坂東)三十三観世音巡りや鎖場、上信越の山々の展望も期待できるコースです。
「ここは標高634m。スカイツリーと同じ高さです」地元の方の手作りと思われる看板に心が和みます。二の丸跡の「天狗の広場」に希望者はザックをデポして小天狗と不動岳をピストン。落ち葉が滑りやすくて慎重に歩を進めます。小天狗の山頂は展望が良く、草津白根や山頂付近は雲の中でしたが、浅間山など眺めることが出来ました。
不動岳の山頂直下は鎖のかかる岩場。中間地点にスタッフが入りサポート。不動明王の立つ山頂は狭いので2班に分けました。
天狗の広場に戻って各自昼食。休むと寒く、やはり12月。広場には一つですがトイレがあるので助かります。広場から少し進んだ東屋にスタッフもザックをデポ。
「はい、いよいよメタボチェックです」と宮崎ガイド。胎内くぐりへ。本当に狭い。狭い岩の間を抜けた先は鎖のかかる急な下り。落ち葉とちょっと湿った土が滑りやすく、鎖を掴みながら下ります。顔を上げると観音様。途中から左の鎖に移りスタート地点に戻ります。
本丸跡の「実城(みじょう)の平」には説明板。西国・秩父観音71体(観音70体・阿弥陀如来1体)が安置されています。永禄8(1565)年11月、武田信玄方の真田幸隆に攻められ嵩山城は陥落。若き城主、城虎丸(当時18歳)は大天狗の岩の上から飛び降り自ら命を絶ち、女性や子供も後を追ったという悲話が伝わっています。「実城の平」には、戦い命を落とした魂を弔うためのたくさんの石仏が並びます。
烏帽子岩と五郎岩もピストン。登山道から見上げる烏帽子岩は確かに烏帽子。五郎岩は左右の展望を楽しめます。左は浅間山。右は日光白根、縦縞の雪模様が付いた男体山など。
次は大天狗へ。傾斜は緩いですが長い鎖がかかる岩尾根です。岩の上に溜まった落ち葉が厄介で滑るので慎重に。
山頂標識のある場所には三等三角点。その先の女岩には鎖が1本。左のルンゼ(岩溝)からも登ることができます。
岩尾根は当然下りが要注意。途中から巻き道を行きますが、これも落ち葉が滑りやすくて侮れません。
最後は岩尾根の末端に戻り一休み。弥勒穴は全員ではいけないので、先に降りたチームを宮崎ガイドがご案内。後半チームは少し時間差で出発。
弥勒穴は最後の岩の部分が狭いので、3人から4人程度に分けてご案内。弥勒穴は穴の中に20番観音「南無当来導師弥勒菩薩(みろくさん)」が安置されています。みろくさんは古くから「夫婦円満の神」と信仰があり、娘が年頃になって嫁入りが決まると嫁入り前に母親が連れてお参りにいったといわれているそうです。
「連れてくるお母さんがすごい」そんな感想が聞かれるほど。
鎖がかかっているので大丈夫ですが、短いですが岩のトラバースは鎖がなかったらかなり緊張します。
登山道に戻ると宮崎ガイドが、「小天狗・不動岳・胎内くぐり・五郎岩・大天狗、そして弥勒穴とめぐってきましたが、お楽しみはここで最後です。楽しんでいただけたでしょうか?」と話すと拍手が起こりました。ここからは15分ほどで道の駅に戻ります。道の駅では、野菜や果物、お餅などを売っていてお買い物タイムに。
標高も低く狭い山域の嵩山ですが、「山椒は小粒でピリリと辛い」岩のトレーニングと短いながらも変化にとんだ山旅でした。
【写真・文 上野ひろみ】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ
信州登山案内人
【写真 奥谷昇】
日本山岳ガイド協会 フリークライミングインストラクター
信州登山案内人