上野ひろみと行く!
伊豆・子浦日和山と燈明ガ崎、室岩洞

風待ち港の自然と歴史の散歩径


1大田子夕陽展望所からゴジラ岩(メガネッチョ)
大田子夕陽展望所からゴジラ岩(メガネッチョ)

「新年は暖かい伊豆を歩きましょう」そんなお誘い文を書いて募集したツアー。
1月だというのに最高気温15度の予報。朝の東京駅は冷え込みましたが、歩き始めの陽だまりは春のよう。桜もほころび始めていました。伊豆半島ジオパークの海岸線は見どころがたくさん。
3つのプレートがひしめき合う本州で唯一フィリピン海プレートの上に位置する伊豆半島は、約2000万年前には数百kmも南にあった海底火山群でした。フィリピン海プレートの上にできた火山島は、プレートとともに北に移動。やがて本州に衝突し現在のような半島の形になりました。約60万年前のできごとです。

2023年1月12日(木)
快晴!富士山もばっちり。
大田子(おおたご)夕陽展望所で各自昼食を済ませてからスタート。下見時はここに車を停めて歩き出し、歩いて戻ったのでちょうど夕陽の時間。下見時も快晴だったので素敵な写真がとれました。

2下見時の大田子の夕景
下見時の大田子の夕景

3桜もほころぶ暖かさ
桜もほころぶ暖かさ

しばらくは田子湾にそって歩きます。造船所の跡を過ぎると左手に終戦末期、「震洋」を格納した洞窟が、説明版とともに入口を見ることができます。

4田子瀬浜海岸から尊之島
田子瀬浜海岸から尊之島

田子瀬浜海水浴場から目の前の尊島へは泳いで渡れるそうです。以前の田子はカツオ漁が盛んで、カツオ船や田子節といわれるカツオ節の加工所も多くあったそうです。現在カツオ船は無く、工場が数件残っているのみとの事。当時の隆盛を偲ばせるカツオ供養塔があります。ここまでは舗装路ですが山道に変わります。

照葉樹の森をひと登り。燈明ガ崎の展望台へ。しばし展望を楽しみ元のルートへ戻ります。
下見で見落としてしまった「五輪さん」手前でお客様には待機していただき、あるとしたらここしかないと思っていた荒れた斜面をひと登り。ロープの張られた先にありました。取り付きの部分もちょっと悪いので、20mのロープをセットしてご案内。

5燈明が崎
燈明が崎

6燈明が崎の展望地から
燈明が崎展望地からの絶景!

7五輪さん
五輪さん

浮島(ふとう)海岸に到着。三ツ足と呼ばれる奇岩を見に海岸へ。大きな岩がゴロゴロして少し歩きにくいので注意。地下深くからマグマが地表を目指して移動するとき、上昇するマグマは亀裂を作りながらその中を移動してきます。そのため、マグマが移動した後には亀裂の中でマグマが固まり、板のような形をしたマグマの通り道ができます。こうした板状のマグマの通り道のことを「岩脈」と言います。
浮島(ふとう)海岸にそびえる奇岩はかつての海底火山の岩脈群(火山の根)です。この通り道が地殻変動などで隆起し地表に姿を現したものです。

8浮島海岸
浮島海岸

浮島海岸の駐車場近くにあるカフェのオーナーさんにご挨拶。
下見時に歩いて車に戻るために坂道の車道をてくてく歩いていると、「どこまで行くの?」と車から声をかけていただきバス停まで送ってもらいました。ありがとうございました。おかげで大田子の夕陽を見る事ができました。

浮島海岸の駐車場からバスに乗車し室岩洞へ。駐車場から道路を渡るのですが、カーブの先に駐車場があるので山ではありませんが今回のコースの注意箇所。室岩洞は昭和29年頃まで活用された伊豆石の石丁場跡です。洞内の広さは約2,000㎡。
半島が海底火山であった時代に海底に降り積もった火山灰は、長い年月を経て凝灰岩へと変化し「伊豆石」となりました。加工しやすく伊豆軟石として重宝されました。
天井に残る「火山弾」は溶岩の破片などが火口から飛び出したもので、火山灰が降り積もった石より硬いため、よけて採石したのではないかと言われているそうです。

9室岩洞の火山弾
室岩洞の火山弾

ここしばらく雨が降っていないので、天井から滴り落ちる水音は静かでしたが、下見時は一人静かに耳を澄ませて聞いていると素敵な響きでした。
「上野と行く!」で企画した新年ツアーですので、ちょっとサプライズで「カリヨンチャイム」の音を聞いていただきました。
 その後は切り出した石をここから降ろし船で運んだという船積み湾の展望地へ。右下に水冷破砕溶岩を見る事が出来ます。輸送は道路が未開発だったので、海岸へ斜面を滑り下ろし船で運んだそうです。
昔の人の技術や力に感心します。

10船積み湾と水冷破砕溶岩
船積み湾と水冷破砕溶岩

今日のお宿は松崎温泉のホテル。温泉を楽しみ、新鮮な海の幸と美味しい夕飯を頂きました。

2023年1月13日(金)
今日も快晴。
朝食にでた自家製のアジの開きは炭火焼き、小ぶりのアジですが、身はふっくら肉厚。白いごはんも美味しいと、昨夜の夕飯も朝食も大好評。子浦へ向かう前に、昨年のツアー時は通行止めで途中までしか行けなかった千貫門へ。ちょっと急な坂を上り、下った海岸から眺める千貫門はなかなか見ごたえがあります。昨年登った烏帽子山もよく見えます。

11千貫門
千貫門

千貫門は高さ30mで、岩の中央部に高さ15m・幅10mほどのトンネルがあいています。
火山の根の一部が波の浸食により海食洞(地層の弱い部分が波に削ら出てできる洞窟)を作り、門の形になったものです。この門は烏帽子山の山頂にある雲見浅間神社の門(浅間門)・海の鳥居と称されましたが、周辺の奇勝とともに「見る価値が千貫文にも値する」という意味から千貫門の名がつけられました。

12白いヤブツバキ
白いヤブツバキ

13雲見海岸から牛着岩と富士山
雲見海岸から牛着岩と富士山

白山神社をお参りし雲見海岸へ。富士山と牛着き岩のビュースポット。
このツアーは当初雲見温泉泊で企画しましたが、コロナの影響で団体を受け入れていただけるお宿が見つからず松崎でお世話になりました。
貸し切りでご対応いただけるお宿が見つかり、早速5月に新コースを企画しました。3月中旬発行のパンフレットに掲載予定です。お楽しみに!

バスへ戻り落居口近くの峠の茶屋(閉店)前からスタート。すぐに優しいお顔の慈母観音。子浦日和山の方向石はルートから少し外れた場所にあります。以前は展望が良かったのでしょうけれど、現在は樹木に覆われ展望がありません。方位石の側面には明治8年と彫られています。国土地理院の地図には三角点の印があります。
周囲を探しても三角点が見つからなかったので、下見から戻って現地へ問い合わせると方位石が三角点とのお返事でした。
 しかし、お客様の助言を受けて調べると、日本で最初に三角点が設置されたのは明治15年。三角点は別の場所のようです。機会を見つけて探してみます。

しばらく行くと展望が開けます。しばし展望を楽しみ一休み。ヤブツバキの花が緑の森に彩を添えています。ヒメユズリハやウバメガシの木のトンネルを歩きます。

12方位石(方角石)
方位石(方角石)

13展望を楽しみながら
展望を楽しみながら

14フウトウカズラの実
フウトウカズラの実

下りは少し急なところや岩交じりのところがあり要注意。ころばし地蔵をピストンします。登山道がイノシシに掘り返され、歩きにくく荒れ気味。風待ち港から出航した船員さんを港に戻すために、遊女がお地蔵さんを転がし悪天候にしたとの言い伝えがあります。ここで各自昼食。

15美しい縞模様の地層
美しい縞模様の地層

16ころばし地蔵
ころばし地蔵

往路を戻りさらに進むと弁財天があり、その上には三十三観音。土石流地層の半洞窟の下に安置されています。

17三十三観音
三十三観音

ここまでくれば子浦漁港は目と鼻の先。
防波堤で釣りをしている方に、「何が釣れるのですか?」と声をかけると「さかな!」との返事。
「それはわかりますが…」「なにも釣れないからわからないんだよ」とのことで、残念ながら今日は不漁のようです。
子浦ビジターセンターの駐車場に戻ると待機していた運転手さんが、近くの洞窟を歩いてきたと写真を見せてくれました。往復10分程度との事なので、行ってみることに。砂浜に降りるとここも良い景色。
洞窟の先には海! 観音様も安置されていました。残念ながら観音様のところで通行止め。海までは行けません。

18子浦の洞窟
子浦の洞窟

無事行程も終了し、舩原温泉「湯治場ほたる」へ。100度近い源泉を持つ温泉は、「熱め」「ふつう」「冷水」と三つに分かれています。とっても広い湯舟で泉質も良好。

最後まで富士山はその姿を見せてくれましたが、夕方になると山頂に笠雲。この辺りも21時頃になると雨予報。途中道の駅伊豆ゲートウェイ函南に立ち寄り東京駅に戻りました。

途中心配した渋滞もなく予定通り帰ってくることができました。神奈川で生まれ育ち、こどもの時から家族旅行で何度も訪れた伊豆半島。まだ見たことの無い素敵な景色が見られるトレイルがたくさんありそうです。海辺のトレイルは雨風がちょっと辛い…でも今回は風もなく快晴の二日間。
海辺の絶景を楽しんだ山旅でした。

【写真・文  上野ひろみ】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1
信州登山案内人
(写真は一部、下見時の物を使用しました)
写真:添乗員 水村春代
写真:添乗員 渡邉四季穂


↓現在ご予約受付中の上野ガイド同行予定ツアーはこちら↓
2023年2月11日(土)M4047 雪の小浅間山 軽アイゼン体験

2023年2月16日(木)M5020 真鶴半島ウォーキングと灯明山

↓現在ご予約受付中のテーマある山旅特集ツアーはこちら↓
2023年5月14日(日)M1593 大力山と権現堂山 新緑と展望の尾根歩き