西表島大横断と竹富島・波照間島 
~世界自然遺産ジャングルトレック!~
 
1西表島へ向かう
西表島へ向かう

2021年世界遺産に登録された西表島。
沖縄県八重山郡竹富町に属する八重山諸島に含まれ、天然記念物のイリオモテヤマネコが生息する島としても知られています。
今回は浦内川を船で遡行し、軍艦岩からジャングルを大横断。
現地ガイドは島内のツアーも行っているバナナハウスの森本さんにお世話になりました。
さて、添乗で皆様と同行することになった上野は、さっそく「西表島フィールドガイド」を購入。
西表島独特の花や木々に出会えるのが楽しみです。
ジャングルトレックの記事をインターネットで検索すると、ちょっと気になるワードが…その名はヒル。
ジャングルだし暖かいし、いるのだろうなーとちょっとテンションが下がったものの、忌避剤「ヤマビルファイター」・ブヨ対策に虫よけスプレー・防虫ネット・蚊取り線香等々いろいろ用意して臨みました。

2023年2月19日(日)
まだまだ寒さ厳しい東京から南国八重山諸島へ。
羽田空港第1ターミナルでは、韓国・開門岳へ向かう清野・奥谷チームも早朝の出発。
修学旅行へ向かう高校生の皆さんも同じ飛行機。
羽田空港はコロナ前に戻りつつあります。
那覇空港へ向かい、昼食を済ませ飛行機を乗り継ぎ石垣島へ。

2日本初。自治体によるガイド事業者免許制度
日本初! 自治体によるガイド事業者免許制度
 
3西表島大原港に到着
西表島大原港に到着

石垣空港からタクシーで離島ターミナルへ。
事前に船会社にも到着がギリギリになることを連絡したものの、意外とのんびりな対応(汗)
それでも予定通り西表島大原港に到着。タクシーでホテルへ。
タクシーの運転手さんが、道中色々説明をしてくれました。
道路を渡る小動物が交通事故にあわないように側溝や、道路を走る車の音を知らせるゼブラゾーン等工夫しているそうです。
運よくカンムリワシを見る事ができました。

4交通事故が多いそうです。
交通事故も多いそうです

夕食後、ガイドの森本さんが説明に来てくれました。明日は長い一日。

2023年2月20日(月)
夜半からの雨が少し残る朝、浦内川ボート乗り場へ。
過去の報告書を見るととにかく暑い! 熱中症注意の文字が並びます。
今回は珍しく気温が低く歩きやすいです。
西表島で先ず見るべきはマングローブの林と言われます。
よく聞く“マングローブ”ですが、これは植物の名前ではありません。
熱帯や亜熱帯地域の海水と淡水が混ざる、特殊な環境に生きる植物の総称との事。
西表島では日本に生育するマングローブ植物のすべてが見られるそうです。

5マングローブの森を眺めながら
マングローブの森を眺めながら

軍艦岩に到着、ここから歩き始めます。
カンビレーの滝までは往復する方も多いそうです。

6寒くて動けないミカドアゲハ
寒くて動けないミカドアゲハ

7ジャバジャバと沢の中を歩きます
ジャバジャバと沢の中を歩きます

8カンビレーの滝
カンビレーの滝

「カンビレー」とは方言で「神の座」を意味します。
西表島の15ヶ所の神が集まり、シマづくりの談合をしたといわれる聖地です。
足元や周辺で見られる植物や昆虫は初めて見るものばかり。
アオミオカタニシの殻は白色半透明で、体が緑色をしているとの事。

9コモウセンゴケ
コモウセンゴケ

10ハートのポケットホール
ハートのポケットホール

11アオミオカタニシ
アオミオカタニシ

12ナガバイナモリ
ナガバイナモリ

13エクボサイシン(エクボカンアオイ)
エクボサイシン

14板根(ばんこん)
板根(ばんこん)

15レンギョウエビネ
レンギョウエビネ

「板根」とは、幹に近い根が地上に露出し板状になったもの。
根なので呼吸もしますが大きくなった幹を支える役割も担っているそうです。
横断道はカンビレーの滝の先、「カンビレー口」の1番から「大富口」の24番まで道標が立てられています。
昨日ガイドさんからは、いくつかのチェックポイントでその時間までに到着できなかったら戻りますと言われていました。
先が長いので休憩の間隔も長いうえ時間も短め。
みなさん頑張って歩き、無事クリアして先に進みます。
ヒル対策で休憩は沢の岩盤上等で。

ここでお客様の一人が昼食時冷え防止に靴下を変えようとするとヒルを発見。
ヤマビルファイターは予防だけでなく退治することができます。
お客様は、退治をしていたら昼食を食べ損ねてしまいました。
他のお客様から「ヒル退治で、昼抜き!」と…底抜けに明るいパーティーでした。

16   24番まであります。まだまだ長い!
24番まであります。まだまだ先は長い

17ヒカゲヘゴ
ヒカゲヘゴ

ヒカゲヘゴは西表島で見られる最も大きなヘゴ科のシダ植物で、日本最大級の大きさを誇ります。
高さは10m、葉は2m以上になるそうです。
シダ植物は約1億年前から生き続けており、中でもヒカゲヘゴの大きさは別格。
古生代に繁殖した仲間だと言われています。

18ジャングルを進む
ジャングルを進む

19ヤエヤマスミレ
ヤエヤマスミレ

20ムサシアブミ
ムサシアブミ

21横断道のゴール
横断道のゴール

横断道は時にはロープを頼りによじ登る箇所やひざ下まで水に入ったり、ぬかるみあり。
道もなかなかの難路。
大変でしたが足元の花も楽しめました。
横断道のゴールでは皆さん「やったね!」とよい笑顔でパチリ。
ここからまだ林道を約1時間歩き、仲間川のボート乗り場まで歩きます。

22森本ガイドとお迎えのチャターボート
森本ガイドとお迎えのチャーターボート

チャーターボートに乗り、仲間川を今度は海に向かって下ります。
仲間川のマングローブは、流域面積が日本一だそうです。
ボートを降りて歩いて宿へ。ここでガイドさんとお別れ。
携帯電話がほとんど通じない横断道。

程なくしてスマホを見ると会社から着信履歴がありました。
電話をすると明日乗船予定の波照間島行の船が欠航との事。
担当社員が色々手配をしてくれ、明日の午前中は予定通り由布島へ。
午後は竹富島経由で石垣島に渡ることとなりました。
そして最終日は沖縄県最高峰の於茂登(おもと)岳へ。
夕食時お客様にご報告と相談をしました。
すると「波照間島も行きたかったけど、於茂登岳も登りたかったから嬉しい」とのお言葉が…。

今回登山靴は滑るので沢シューズや滑りにくいスニーカーでの参加をお願いしておりましたので、足元が少々心配でした。
しかし、10時間に及ぶ難路続きのジャングルを歩き通したみなさんからは、大丈夫との返事。
私もびしょびしょのスニーカー(愛用のシグマ)に新聞紙を入れて乾かしました。

2023年2月21日(火)
23長命草(ボタンボウフウ)
長命草(ボタンボウフウ)

ゆっくり朝食をいただき、共同売店に立ち寄り宿の周りを散策。
長命草は道端にたくさんあり、宿の食事にも添えられていました。
タクシーで由布(油布)等へ渡る水牛車乗り場へ。
由布島は西表島の与那良川から流出した砂が海流により運ばれて、砂などの堆積物によって形成された島。
由布島はかつて竹富島や黒島から人々が移り住んでいたそうですが、1996年の巨大台風により由布島は壊滅的な被害を受けて、多くの住民が西表島へと移り住んで行ったそうです。
西表正治おじい夫婦は島に残って再び島に人々が戻ってくることを願い、亜熱帯の植物を植え続けて、今は島全体が亜熱帯植物園になっています。
島には、人口(9名)より水牛の方が多く、蝶々園では優雅に羽根を広げるオオゴマダラがたくさん(木々に咲く花のように)見る事ができました。
まいたびで昨年実施した「宮古島・3橋ウォークと5島巡る旅」に行った際、オオゴマダラは牧山展望台で見かけましたが、黄金色のサナギには驚きました。
その宮古島ツアーの様子はこちら
24オオゴマダラ
オオゴマダラ

25黄金色のサナギ
黄金色のサナギ

26帰りもお世話になります
三線の音色を聞きながら、帰りもお世話になります

大原港で昼食の予定でしたが食堂がお休み。
由布島の滞在時間を伸ばし、島内のレストランでの食事をタクシーのドライバーさんに勧められましたが、開店時間が遅く食べる事ができませんでした。
そこで港に行く前に島内のスーパーに立ち寄りお弁当を購入。港の待合室で食べる事になりました。
行程が急遽変更となり下調べが追い付かず、参加してくださったみなさま、ごめんなさい。

大原港から竹富島へ。
水牛車やレンタサイクルで観光される方が多いのですが、私たちは前日の疲れも何のその。
歩いて島内を巡りました。

27竹富島の水牛車
27竹富島の水牛車
竹富島の水牛車

28赤瓦の街並み
赤瓦の街並み

29屋根を眺めても個性的
屋根を眺めても個性的

30お客様の合作
お客様合作の作品

31郵便局も素敵
郵便局も素敵

郵便局からお手紙を出したいとのお客さんがいらしたので、港へ向かう道の途中でお客様と分かれ、あとから追いかける事に。
郵便局を出ておしゃべりしながら歩いて行き、最初の曲がる方向を間違えるというミスでドキドキ。
なかなか戻らない私たちにご心配をおかけしました。お恥ずかしい…
石垣島フェリーターミナルへ戻り、急遽予約したホテルへ。
コロナの影響で食事提供の無いビジネスホテル。
周辺に飲食店が少なくご迷惑をおかけしました。
夕食は唯一空いていた地元の方たちに愛される沖縄料理のお店へ。
感染対策に気を付けながら、いろいろな料理をシェアして楽しみました。

2023年2月22日(水)
ホテルからタクシーで於茂登岳登山口へ。
サキシマハブが生息しているので、藪には入らないようとの事。
最初は心配でストックで厚く積もった枯葉を突きながら進みましたが、山頂直下の電波塔で工事をしており、工事関係者や他の登山者も登られていて途中から気にならなくなりました。
於茂登岳の元来の表記は「大本嶽」(おおもとだき)で、石垣島の「おおもとをなす山」の意味だそうです。
歩き始めるとすぐに「大御岳ぬ清水」と書かれた石碑。
シダやイタジイの巨木、そして琉球竹のトンネルの道を登り、気象台の施設のある広場へ。
シダとは思えないような大きなヒカゲヘゴ。
ヒカゲヘゴは枝を出さず成長するごとに下の葉を落してしまうので、樹皮には葉柄の脱落痕が残るそうです。
少し先に漁業無線所の鉄塔(工事中)があり、その左の竹藪を漕いでいくと山頂です。
琉球竹が視界を遮り残念。
石の上に登るとようやく海が見えました。
なぜ藪を刈らないのかと思い、帰宅してから調べました。
石垣島と西表島で見られる蝶アサヒナキマダラセセリ(RDB:絶滅危惧Ⅱ類)保護で一切琉球竹を刈らないそうです。
氷河期からの生き残りと言われていて、発生地が琉球竹の生える山頂のみとの事。なるほど!

32琉球竹の薮を漕いで、山頂へ
琉球竹の藪を漕いで山頂へ

33沖縄県最高峰、於茂登(おもと)岳山頂
沖縄県最高峰 於茂登岳山頂

34岩の上に立つと海
岩の上に立つと海!

35ヒカゲヘゴの脱落痕
ヒカゲヘゴの脱落痕

タクシーでホテルへ戻り、着替えをさせて頂き荷物も預け観光へ。
ひとまずバスでターミナルへ。
バスでは本数が少なく移動は難しく限られた時間を有効に使うため、ここから観光タクシーを利用。
パンナ公園・川平湾・御神崎(うがんざき)を観光。
御神崎にある、落ちそうで落ちない岩は受験生に人気との事。

36川平(かびら)湾
川平(かびら)湾

37落ちそうで落ちない岩
落ちそうで落ちない岩

38イリオモテアザミ
イリオモテアザミ

タクシーの車内からカンムリワシを近くで見る事ができました。

39カンムリワシ
カンムリワシ

ホテルに立ち寄り荷物をピックアップ。
帰りは羽田空港への直行便。
元々22時羽田着の最終便。
石垣島への到着便の遅れや天候もあり、荷物を受け取って空港を出る頃には23時近くとなってしまいました。
後日ぎりぎり最終に間に合ったとお聞きしてほっとしましたが、最後までドキドキ。
でもその後のツアーで再会したお客様が、バスの隣に座るお客様に「すごく楽しかった」とお話しているのをお聞きしました。
ジャングル横断の大変さや行程変更といろいろありましたが、元気でユーモアあふれるお客様とご一緒できて、添乗した私にとっても思い出に残る山旅となりました。

写真・文 上野ひろみ
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1
信州登山案内人