スペインの最高峰はどこ?


知っている方はかなりの重症な山好きです。

フランスとスペインの国境となっている山岳地帯のピレネー山脈にありそうですが、実はスペイン本土からはるか南に2000km近くも離れたモロッコの沖に浮かぶカナリア諸島にあります。

日本なら石垣島に日本の最高峰があるような感じでしょうか。

 
長いフライトをこなしてカナリア諸島のテネリフェ島に降り立つと、まず目に入ってきたのが多くのヤシの木、南国の象徴です。
体全体で感じるその空気はとても爽やかで、長距離フライトの後だけに、一気に心が解放されたように思えるほど全身に染み入るようでした。


まずは、カナリア諸島の中でも中心的なテネリフェ島の観光からスタートです。

世界遺産にも登録されているサンクリストバル・デ・ラグーナの街にはあまり高い建物もなく、南国の空気にふさわしいカラフルな建物が多く連なり、通りの間から見える青空はまさにスカイブルー。

自然と言葉にしてしまうほど、「きれいな街」だと誰もが感じました。

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街の中にある教会の塔に上るだけで街は一望できます。



あちこちにヤシの木があり、多くの観光客が通りを歩いているのがよく見えます。
走る車も少なく、散策が楽しい街であることは上から見てもよく分かります。
古き良きスペイン繁栄の時代はもっと賑やかだったのだろうと、美しい街並みを見ながら意識がタイムスリップしそうでした。

午後はテネリフェにある樹齢500年以上ともいわれるリュウゼツラン科の島固有の巨大な竜血樹ともうひとつの美しい街のオロタバを見学して過ごしました。
竜血樹はその構造上、あまり大きくなることはできないので、樹齢500年以上というのは非常に珍しく、また貴重な島の宝といえます。それにしても不思議な形をしています。
まぶしい太陽のもと、バラ、ジャカランダ、ブーゲンビリアにプルメリアなど色とりどりの花々があちこちで咲き、街中がほんとうに華やかな季節を迎えていました。

陽気も最高です。
この空気感と自然、そして街の雰囲気に早くも虜になってしまったようでした。

 
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翌日からいよいよ最高峰のテイデ山、3718mの登山です。


車でホテルを出発し、テイデ山に向かって尾根のような道を走り、景色がひらけてくると思わず歓声があがります。
正面には尖った山頂を持つテイデ山、右手には私たちが走っている尾根から海までなだらかに傾斜する斜面。
そして、その斜面にはスパニッシュブルームという真黄色な花がテイデ山に近づくにつれて絨毯のように斜面を覆っていました。

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 一見すると、乾燥しきって植物の生育には過酷な環境に思えますが、そんな中でもいろいろな植物が花をつけて、私たちと同じようのこの時期の陽気を満喫しているようでした。 いや、そうとしか思えないくらいの花の咲きようです。
数台の車が止められた駐車場からゆるい未舗装の砂利道をしばらく歩きます。
乾燥した空気の中、まったく水がないような場所でも黄色や青紫などの花が咲き、 発光しているのではないかと思えるくらい色鮮やかで荒涼とした山の楽しみとなってくれました。
スパニッシュブルームがひときわ多く咲く分岐を過ぎると普通の登山道になり、ここからが本番です。

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つづら折りのつけられた道をくねくねと登っていきます。

日差しは強いですが、湿度がかなり低いのであまり不快感を感じることなく登ることができます。 山肌と同じ色をした石造りの山小屋は夕方の5時にならないと開かないので、すでに到着した人たちは外でのんびりと時間をつぶしていました。
「午後早めに山小屋に!」という日本とは大違いです。
むしろ、「日が長いから焦らない。焦らない。」と言うほどです。
 
 さらに、寝室へ入れる時間も決められています。ちょっと変わったスタイルの小屋ですが、こぎれいで清潔感があり、安心して使うことができます。 食事の提供がないため、宿泊客は自分たちで用意した食べ物で手早く済ませて床につきます。
とは言っても、まだ日があるのにそんなにすぐに寝るのもなんとなくもったいないので、夕日が沈んで徐々に影が伸びていくテイデ山の影の景色を眺めてから寝ることにしました。

 
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翌朝はまだ暗い中、ヘッドライトをつけて出発。


風も弱く思ったほど寒くはなく一安心。ごつごつとした、いかにも火山という道を登っている途中で日の出を迎えました。 赤く染まった水平線の上に残る三日月がとても印象的でした。太陽が出れば気温はぐんぐんと上がり、テイデの山頂もだいぶ近くに見えるようになりました。かなり上のほうにあるケーブルカーの駅を過ぎ、山頂まではあと一息です。 山頂から続く尾根の上を人が歩いているのがよく見えるほどです。

 
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徐々に高度を上げて振り返ると、このテイデ山の周囲には実は巨大なクレーターが囲んでいて、山頂はその中にちょこんと突き出た突起のようなものだということがよく分かります。 さらに、もちろん今は冷えて固まっていますが、溶岩の流れそのものが、生々しく残っており、どこを流れたかというのがとてもよくわかります。その中を私たちは歩いているのです。
 

山頂には特にそれを表すような標識はなく、360度ぐるりと見渡すことができます。

海岸線はもちろん、ゴメラ島やラ・パルマ島、イエロ島まで見ることができました。
山頂は風が強かったものの、山の条件としては最高と言っていいでしょう。
 
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ケーブルカー駅まで下山し、そこからケーブルカーで下まで降りました。
下に降りると、その周辺にもエキュムというこの島の固有種があちこちにあるではないですか。
小さな花が数える気にもならないほど無数に咲いて全体が塔のように先細りになってニョキニョキと伸びるその姿は、まるで生き物のようです。この島に来たら絶対見ておきたい植物です。

そして、この大物とは比べものにならならいくらい小さなスミレも是非見ておきたい荒地に咲く固有種です。車両で山を離れながら、途中の景色も素晴らしく、テイデ山をバックにもちろん写真ストップ。

 
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テイデに登頂したのち、私たちはフェリーでゴメラ島へと渡りました。


月桂樹を中心として、豊富な植物の多様性から世界遺産にもなっているガラホナイ国立公園をハイキングし、旧市街にあるコロンブスの家を訪れました。 コロンブスが目にしたこの街の景色と今とではどれくらい違うのだろうか。それともほとんど変わらないのだろうか。建物の数は増えたものの全体としての街並みは変わらないのではないかと思ってしまいます。
古い街を訪れたとき、常にその当時の景色を思い浮かべるのが私は大好きです。

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この後、3つ目の島ラ・パルマ島へと飛行機で移動しました。この島の見どころは島の最高点から見る絶景とスパニッシュブルームの絨毯です。

海までつながっているかのように一面に敷き詰められた黄色の絨毯は圧巻でした。

まずはバスで最高点のロケ・デ・ムチャチョスヘと向かうのですが、その途中の道路沿いで再びあのエキュムが立ち並んでいる光景に遭遇。もちろん写真ストップ。海を隔てて遠くにはテイデ山とエキュムのコンビはまさにカナリアらしいコンビです。

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最高点は巨大なクレーターの上にあり、ここからお鉢をめぐるようにクレーターの縁を歩きます。


右手にはクレーター火口の断崖絶壁の光景とエキュム、左手には黄色いスパニッシュブルームの鮮やかな光景が雲海と一体になって水平線までつながっているかのような絶景が続いていました。
皆さんここまでの景色は想像していなかったでしょう。私もそうでした。

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 花と山、それに海にまで囲まれた最後の絶景ハイキングも最高の青空のもとで楽しむことができました。
自然というのはどこまで人を魅了するものなのかと、今回も“美の暴力”に打ちのめされたのでした。

 
  (文と写真/渡辺和彦)2016.5.30~6.8