2015年第17回ショパンコンクールは、10月3日からの1次予選に始まり、10月22日の入賞者のガラコンサートで無事に幕を閉じました。

韓国のチョ・ソンジンさんが優勝、残念ながら日本人の入賞者はいませんでしたが、小林愛実さんがファイナリストに選ばれました。78名中12名の日本人演奏者と指定ピアノ4社中2社が日本メーカーで、日本の存在感を示すことができた大会でした。

 弊社では、今大会も1次予選から決選、ガラコンサートまで鑑賞ツアーを催行しました。さすがに3週間に及ぶ大会期間全てを鑑賞されるお客様はいらっしゃいませんでしたが、1次~2次と3次~ガラコンサートまでのツアーに大勢のお客様がお集まりいただきましてありがとうございました。中には2~3次まで鑑賞する変則的なコースにご参加いただいた方も。古くからショパンコンクールを手がける弊社では、お客様のご希望でいかようにもコースを組めるのが強みです。5年後の大会に行ってみたいと思う方はぜひご相談下さい。弊社員も2名が前半と後半に分かれて添乗させていただきました。これは、その時の添乗員の同行記です。
 

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コンサート会場

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コンサート会場

① 周辺環境

 宿泊ホテルは、マルシャウコフスカ通りとイエロゾソムスキエ通りが交わる交差点にあるノボテルワルシャワです。この場所は大会会場まで徒歩数分。レストランやファーストフード、スーパーマーケット、ショッピングセンター、デパートが隣接する、まさに中心部です。長い大会期間中、とても便利に過ごせました。また中央駅や社会主義時代まるだしの文化科学宮殿があり、朝から夜まで大変にぎやかで治安や交通の便も良い、最適の立地です。ホテルはデラックスとは言えませんが、とても機能的で清潔です。ロビーにはインターネットもあり、部屋には無料のWI-FIも完備しています。大会演奏者も宿泊しているようで、ロビーで出会えることもたびたびありました。

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ノボテルワルシャワ

 弊社は、このホテルを定宿にしていますが、取れない場合でも必ずこの地区のホテルを利用しています。何度もお客様の送迎でタクシーに乗ってホテルと空港間を移動しました。約25分程です。ホテルから空港へ向かう際に、エアポートに行ってほしいと言うと、「OK、ショパンエアポートね。」と返事が返ってきます。正式名はオケンチェ空港なのですが、どのドライバーも愛称で呼びます。それだけショパンは有名なのですね。
 
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文化科学宮殿


② コンクールのある1日

 朝はホテルでブッフェスタイルの朝食。種類も豊富で、朝からたっぷり食事を取ります。コンサートは午前10時から始まるので、9時30分にロビーに集合、歩いて数分の会場へ向かいます。とてもわかりやすいので、1度往復すれば道順はどなたも覚えていただけました。
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コンクールポスター
 
 会場のワルシャワ国立フィルハーモニーホールには、参加者の国旗とコンクールのポスターがあるので、一目瞭然なのですが、それがなければ余り目立たない建物です。とても重い扉をあけて中に入ると当日券を買い求める人たちの長い行列。知らなければその列に並んでしまいそうです。

 前売券を持っている人たちは、その列をかき分けながら中へ進みます。係員がオレンジ色のチケットのバーコードを読み取ります。中に入ると両側にクローゼットがあるので、コートなどを預けます。10月のワルシャワはコートなしでは少し寒く感じることもあります。1~3次予選までは、地元(欧米)の鑑賞者はとてもラフな服装です。若い男性はGパン姿も。まあ似合うからとてもおしゃれに見えますが、日本人だけがばっちりおしゃれをしている感じです。3日目くらいから少しずつ着崩していくというところでしょうか。ばっちり決めている方がおのぼりさんっぽいので恥ずかしくなってきます。

 立ち飲みのカフェテリアラウンジの左右の階段を登り会場へ。いよいよコンサートホールです。ホールの左外側には、コンサートのパンフレット(ハードカバーかなり分厚く重い)やショパンのグッズを販売しています。席に着く前にトイレを済ませたり、「GCC」と呼ばれる毎日発行される新聞を手に入れたりして開演を待ちます。  
 
 いよいよ開演です。1~2次予選は一人15分から30分くらいの持ち時間です。1次予選などは玉石混交(もちろんある一定の実力は持っていますが)で、かえって聞いていて大変興味深いとおっしゃるお客様もいます。技術だけではなく、表現力も上がっているのかなと。とても人間的なものを感じられるのは確かです。ですから、1~2次予選だけを聞いて損するなんてことは決してありません。

 1階の座席フロアはフラットになっています。広からず狭からずといったところです。2階席は審査員が陣取ります。今回は5回大会で入賞した海老彰子さんが加わっていました。演奏はいくつかの課題曲の中から演者が選択しますので、同じ曲が重なるのは否めません。耳の超えたお客様の中には同じ曲でもかなり印象が違うそうです。演者と演者のインターバルは10分程。その間にトイレに行ったり、途中から入館した人が着席したり。後は大勢の方が咳き溜めしたりしますので笑いが起こることもありました。  
 
 午前の部は午後1時半頃に終了しますので、おなかはペコペコです。朝食をたっぷり食べておく理由もご理解いただけると思います。三々五々レストランで遅めの昼食を取ったり、ファーストフードやスーパーでパン、チーズ、ワインを買い込んでホテルの部屋に戻り、夜の部に備えお昼寝をする方もいらっしゃいます。会場から10分程の所にショパン博物館や旧市街もあり、2~3時間街の散策をされる方もいます。観光については、④の休演日の1日でご案内します。午後の部は、午後5時から9時頃までです。午前の部とは別のチケットが必要となります。さすがに午後の部ともなると居眠りをする方もいます。世界3大コンクールとはいえ、聴く側は緊張せず、あくまでもリラックスして演奏を楽しむというのが欧米流だそうです。緊張しているのは、演者の身内か生真面目な日本人だけですね。

 コンサート終了後、入口で待ち合わせをしてホテルまでエスコートするのが添乗員の日課となります。 時にはお客様を空港まで送迎することがあり、お客様だけでホテルにお戻りいただいたこともありました。そんな時も危ないことはなく治安も良好です。バーで一杯やってからホテルに戻る方もいれば、部屋で昼休みに買い込んだ物で夕食を済ませる方などさまざまです。

③ 予選通過 

 予選通過者の発表は、予選会の最終日毎の演奏終了後に発表となります。午後8時頃に演奏は終了し、9時頃発表すると伝えられますが、その時間に発表されたためしはありません。だいたい10時を過ぎます。いったん食事などに外出した観客が、カフェテリアのあるラウンジに三々五々集まってきます。そこへ入るのにチケットも何もいりません。観客と演者が入り乱れ、読み上げによる発表を待ちます。3~4名の審査員が登場すると、ざわつきがおさまります。

 いよいよ発表です。

 名を読みあげられた演者の歓声があがります。発表はあっという間に終わります。その後、テレビクルーのインタビューがあり、時には観客にもマイクが向けられました。格式高い3大コンクールですが、すぐ隣りで演者の歓声が聞けるなんて思ってもみませんでした。

④ 休演日のある1日 

 予選と予選の間、3次予選と決選の間(この日はショパンの命日になります)、決選と入賞者のガラコンサートの間に1日の休演日があります。

 基本的には自由行動日となっていますが、弊社ではいくつかのオプショナルツアーを用意しました。まず1番人気は、ショパンの生家があるジェラゾヴァ・ヴォラです。ワルシャワから約50km、ポプラ並木の続くのどかな公園の中に生家があります。通常ですと、10月も後半になると観光客も少ないのですが、大会期間中は、人気スポットとなります。生まれてすぐにワルシャワへ移り住むのですが、夏には度々避暑に訪れた場所だけに、ショパンの感性に大きな影響を与えたのではないでしょうか。生家内には、出生証明書や洗礼証明書など貴重な資料を見ることができます。玄関脇には、日本ショパン協会から送られた桜の木(この時期は咲いていませんが)があるなど、庭を見るだけでも来た甲斐はあります。

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ショパン肖像画

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ショパン博物館

 次は旧市街です。17~18世紀のゴシックやバロック様式の建物が並びます。先の大戦で徹底的に破壊されましたが、ワルシャワ市民の情熱により細部にわたり復元したものです。復元したものでありながら世界遺産に登録されています。これは復興にかける市民の情熱にあたえられた名誉だと言われています。中でも見所は、ショパンの心臓が埋め込まれている柱がある聖十字架教会です。なぜ心臓だけがと思いますが、本人の遺言だったそうです。不思議ですね。命日の日は激混みです。ワルシャワ大学の敷地内には、ショパン一家が暮らした場所もあり見所は尽きません。
 

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旧市街
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聖十字架教会

 最後に、徒歩圏内にはないのですが、ワジェンキ公園をご案内します。ヨーロッパで最も美しい公園のひとつです。広大な森の中に巨大なショパンのブロンズ像が有名です。ホテルからタクシーで出かける際はブロンズ像を見るのが目的だと伝えないと大変な目に合うことも。広大な敷地だけにどの入口でタクシーを降りるかによって、ショパン像にたどり着けないこともあります。
 
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ワジェンキ公園


⑤ 決選とガラコンサート

 いよいよ決選です。ファイナリストは10名。課題曲はピアノ協奏曲2曲の内どちらかを選択します。ほとんどがピアノ協奏曲の第1を選びますが、今回は2位入賞のカナダの選手だけが第2を演奏しました。3日間にわたって行われますが、演奏は午後6時~8時半くらいまでです。
 決選までくるとチケットはプラチナ化します。お客様が会場に入場していただいた後、入口付近で立っていると、顔なじみになった地元の観客がチケットがないか訪ねてきます。ダフ屋をするわけにもいきませんが、お客様の分のチケットを確保するのもやっとです、添乗員の分もないくらいですから、余ったチケットはありません。ガラコンサートはなおさらです。添乗員は入口ロビーで漏れ聞こえるピアノの音を楽しむしかありません。終了後、着飾った観客が出てきます。

 弊社のツアーで参加されたどのお客様も、感激し満足した表情をなさっているのが何よりの報酬でした。

(文と写真/若山修)