2020年7月12日(日)午前8時30分JR初狩駅(山梨県大月市)。連日続いた雨が止み、駅前のアスファルトが乾いている。天候の回復に感謝しつつ冷涼な朝の空気に自然と顔が綻ぶ。
電車を降りた後は線路を渡り、一つしかない改札に向かう。そこには、いつもは社内でしか見ることのないメンバーが一人また一人と集合してきている。普段はノートPCより重いものを持たない主義の理系男子、数十年前富士山に登ったことがある程度の登山初心者である私もそこにいた。
写真:初狩駅
まいたび 登山部(仮)は、旅行部門・登山担当に限らず、「山に登ってみたい」というメンバーの集まりとして、今回が初登山となる。世の中では登山者の高齢化が伝えられたり、女性向けの山ガールという言葉などが聞こえて久しいが、今日集ったメンバーは20代から40代の男女8名だ。登山技術の高いメンバーだけではなく、初心者も多い。今日のために急いで装備を買い揃えたメンバーもいる。わたしもそのうちの一人だ。
そんなメンバーに合わせて、記念すべき初回は「高川山(976m)」が選ばれた。
高川山は、(1)JR中央本線沿線にあり電車の便が良く(2)登頂が容易で(3)富士山などが見えて展望が良い、という日帰り初心者にはもってこいのコースとも言われている。山梨百名山、秀麗富嶽十二景にも選ばれる山で、山頂からの360度展望もよく知られている。
初心者には選択肢は少ない方が良い。特に自然の変化に合わせて持ち物も体調も、選択の幅は広い。であればこそ、コース選定などはプロにお任せしたいところだ。
初心者には選択肢は少ない方が良い。特に自然の変化に合わせて持ち物も体調も、選択の幅は広い。であればこそ、コース選定などはプロにお任せしたいところだ。
初狩駅から登山口までは徒歩約30分。ここは無人駅であり、トイレは構内にある。山頂にはトイレはないので事前に利用すべきだろう。改札を出ると自販機が並ぶ。また、駅から少し歩くとコンビニもあるので飲料水や備品など上手に利用をしたい。登山口までの道路には、登山者向けにいくつかの標識も見える。ただし、車で登山口駐車場まで行く場合は、道幅が狭く、駐車台数も数が少ないので要注意だ。
登山口に到着した。せっかく社員が揃っているので、爽やかに添乗員役を演じてもらった。
今日の予定上りコースは、沢コースを避け、男坂コースを選ぶ。下りは女坂コースを選び、初狩駅に戻る予定だ。距離にして約2.5km、登山口から男坂コースの標高差500m弱およそ行程2時間を見込んでいる。
ガイド役からは登山の基本や注意事項を学び合いながら、みんなで山の楽しさ・魅力を感じたいとの話があった。有志のグループ登山とはいえ、今日はそれぞれ特技を持っている精鋭メンバーが揃っているので、期待に胸が高鳴る。カメラの準備や、準備運動、すでに口元が緩んでいるメンバーもいる。きっと天候の良さと登山を終えた後の一杯が想像されたのだろう。それも一つの楽しみ方だ。
最初の分岐に到着。右は沢コース、今日は左の男坂・女坂コースを登っていく。「熊に注意」の看板に初心者驚く。
木の根が表に出ている急坂を登っていくと、男坂・女坂コースの分岐点が現れた。男坂は急登、女坂は緩やかに登ることを想定されていて、どちらを選んでもこの2つのコースはのちに合流する。合流手前の休憩時では「疲れにくい歩き方のコツは、一歩を小さく」と的確なアドバイスがあり優しさを感じた。山が人を優しくしてくれているのかもしれない(決していつも優しくないわけではないのだが)。
山頂までは森林の中を進むので多くの展望は望めないが、ふとした緑の隙間に、青空に映える富士山が見えた。ちょうど男坂と女坂の合流地点に差し掛かる。山頂への期待が心地よい疲労感を適度に潤し、身体を動かしてくれる。
そしてついに登頂、大きく息を吸った。
全員揃って360度の展望を味わい、富士山の勇姿を眺めることができた。誰もが心の底から望んでいた緑と青空に囲まれた山々の姿に触れ、自然と写真撮影がはじまった。前日までの雨、これほどの天候に恵まれると予測していなかったこともある。そして、強めの陽射しを感じるほど、暑い。後日わかったことだが、大月市のこの日の最高気温は31.1℃を記録していた。
お昼休憩を楽しみ、ガイド役からは、この高川山から見える多くの山々の説明を受けた。時に饒舌に、心から楽しそうに話す姿、これからも一緒に登りましょうという言葉、本当に山が好きなんだなと感じた時間だ。
全員揃って360度の展望を味わい、富士山の勇姿を眺めることができた。誰もが心の底から望んでいた緑と青空に囲まれた山々の姿に触れ、自然と写真撮影がはじまった。前日までの雨、これほどの天候に恵まれると予測していなかったこともある。そして、強めの陽射しを感じるほど、暑い。後日わかったことだが、大月市のこの日の最高気温は31.1℃を記録していた。
お昼休憩を楽しみ、ガイド役からは、この高川山から見える多くの山々の説明を受けた。時に饒舌に、心から楽しそうに話す姿、これからも一緒に登りましょうという言葉、本当に山が好きなんだなと感じた時間だ。
この後、山頂に他の登山者皆さまが一人また一人と登ってこられたため、名残惜しさとともに下山を始める。山頂で見かけた野生のクワガタともお別れだ。
下りは一層注意深く、歩みを運ぶようレクチャーを受けた。下りは、なだらかな坂が続く女坂コースだ。なだらかとはいえ、体力が落ちてくると崖側に身体がぶれた時に危ない。登山者と行き交う際にも身体の向きなどに注意が必要とのアドバイスもあった。当たり前と思われることを的確に伝えてくれるのは、初心者にとっては心強い限りだ。
下りは一層注意深く、歩みを運ぶようレクチャーを受けた。下りは、なだらかな坂が続く女坂コースだ。なだらかとはいえ、体力が落ちてくると崖側に身体がぶれた時に危ない。登山者と行き交う際にも身体の向きなどに注意が必要とのアドバイスもあった。当たり前と思われることを的確に伝えてくれるのは、初心者にとっては心強い限りだ。
そうして、全員無事に登山口まで下山した。
近隣の駅へ移動し早めの夕食を。広めの個室では和気あいあい、話に花が咲く。
いつしか外は雨が本降りになってきたようだ。窓を叩く雨音が強くなる。「電車に乗るか、あと一杯飲むか」そんなたわいのないやり取り、これはいつもと変わらない。「一杯で終わる」という約束は守られないことが多いことを知っている私たちは、冷静に潔く帰宅の途についた。
巷にはソロキャンプ、ソロ登山、といった楽しみ方があると聞く。
時代に合わせて自分の時間を楽しみ、自分の力を磨いていく。何かに出会い楽しさを知るうちに、いつからか一人の時間を楽しむことが増えていく。楽しみだけではなく技術向上にも、一人で取り組む時間というのはとても大切な時間だ、とも思う。そして実力があってこそのソロ、にも思える。
時代に合わせて自分の時間を楽しみ、自分の力を磨いていく。何かに出会い楽しさを知るうちに、いつからか一人の時間を楽しむことが増えていく。楽しみだけではなく技術向上にも、一人で取り組む時間というのはとても大切な時間だ、とも思う。そして実力があってこそのソロ、にも思える。
この「ソロ」を音楽的な対義語でいえば「ユニゾン」と。一つの旋律を複数で歌うこととある。一つの旋律を強く表現する「斉唱」とも言う。登山の初心者だからこそか、一人の良さとはまた違った「皆で登る山」というものを強く感じた一日。ぜひこのような機会が一回でも多く続くことを期待したい。
次回まいたび 登山部は「高水山(759m)」予定、準備を整えつつ来る日を待つ。
次回まいたび 登山部は「高水山(759m)」予定、準備を整えつつ来る日を待つ。
【高川山で学んだ初心者ポイント】
・荷物は推奨リストをもとに最後は自分で判断
・ウェアは綿素材を避け、乾きやすい化学繊維のものを選ぼう
・リュックを背負う時は「リュックについている腰のベルト」を活用し腰で担ぐ感じを確かめながら
・疲れにくい歩き方の一つとして「小さく歩く」
・濡れた木の根は滑りやすい、靴の裏を上手に使い重心の掛け方に注意
・登山道にあるロープはガイド、前後の人にふられることもあるので身体を預けるような使い方をせず前後の人と間をあけて利用
・すれ違うときは山側登山者が停止し、互いのリュックなどが触れて体勢を崩すことがないように
・きのこ類は見極めが難しいので原則触らない
・登山に同じ環境はないので臨機応変という柔軟性を忘れずに
(KS)