中倉山
足尾山地の隠れた秀峰

1孤島のブナと男体山(4月10日撮影)
孤高のブナと男体山(4月10日撮影)

「有名な山の専門誌に掲載されて、コロナ渦に入ってから、登山者が急に増えてね」そう教えてくれたのは、足尾環境学習センターのスタッフ。何名かのお客様も雑誌を見て来てみたいと思ったと話してくださいました。今回も平日設定のツアーでしたが、多くの乗用車が駐車場に停まっていました。このコースは荻野ガイドが提案し、以前実施したコース。今回は上野がご案内。スタッフは、岡野・渡辺四季穂の2名。  
 足尾銅山は、1610年(慶長15年)備前楯山で初めて銅が発見されて以来、江戸幕府直営の銅山として栄えたそうです。日本初の公害が起きた場所として有名になりました。銅の精錬時の排煙が周囲の山々の木々を枯らし、銅山用坑木の乱伐や、1888年(明治20年)の松木の大火災で多くの山林を失いました。貯水能力を失った山が原因で洪水が起こり、有害な排水は近くを流れる渡良瀬川を汚染し、川の水を引き入れた土地の稲は枯れ、川の生き物が大量死することになりました。河川や土壌の汚染は人にも影響をもたらし、周囲の村々では下痢・嘔吐や肝機能障害、腎臓障害などを訴える人も多く出現。原因は硫酸や鉱毒からのカドミウム中毒と言われていますが、おおよそ1060人近くの死者・死産が出たと記録に残っています。

2023年5月12日(金)
駐車場からスタート。50分強の林道歩きが少し退屈ですが、足元にも小さな花たち。余り興味のないお客様はスタスタと先に行ってしまいます。林道わきにも色々なお花もあるのですが・・・歩き始めるとすぐに携帯(ドコモ)は圏外。
2中倉山登山口
中倉山登山口

林道脇に登山口を示す看板があります。ここからしばらく急登が続きます。休憩ができる広いスぺースも限られるので、30分ほど歩いた所で休憩。ロープがかけられた急な斜面もありますが、登りは使わなくても大丈夫です。雨の時は嫌な斜面です。
「登りが続きますが、時々顔を上げて上を見てくださいね」。見上げれば、トウゴクミツバツツジ。
稜線に上がると、シロヤシオが!そして、アカヤシオも少し残っていました。
冬場は葉が落ち展望の良い場所も葉が茂り少し展望が悪くなってしまいましたが、お天気が良ければ男体山を始め、日光の山々の展望が良いところで昼食。コルに降りるとシロヤシオが満開!!
3シロヤシオ満開
シロヤシオ満開

4第1展望台から
第1展望台から

山頂に向かうルートは3本。上野が勝手に名付けた、第1展望台と第2展望台を経由しました。松木のグランドキャニオンといわれる荒涼とした風景を見ることが出来ます。
5蕾もたくさん
蕾もたくさん

6中倉山山頂
中倉山山頂

7孤島のブナ
孤高のブナ

山頂で写真を撮った後、孤高のブナへ。男体山が見えずに残念。帰りは、山頂下をトラバースルートで下山。第3展望台からは、備前盾山を始め、足尾銅山の被害を受けた山肌を見ることができます。
8トウゴクミツバツツジも満開
トウゴクミツバツツジも満開

9第3展望台
第3展望台

往路を戻るので、急な登り=急な下り。慎重に降ります。ほどなく林道に降り立ちました。
駐車場に戻る手前に「ナツグミ?」でもちょっと様子が違います。調べてみると「アキグミ」でした。

10アキグミ
アキグミ

思いがけず、色々な種類のツツジが見ごろで花を楽しむことができました。展望はいまひとつでしたが、春の花と一度失った自然を元に戻すことの大変さを実感した山旅でした。

【写真・文 上野ひろみ】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1
信州登山案内人
【写真 渡邊四季穂】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1


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2023年8月2日(水)M3133 三ツ峠山クラシックルート レンゲショウマと夏~秋の花

2023年9月12日(火)M5146 軽井沢・小浅間山から白糸の滝/ビスターリ倶楽部