登山コラム《山記者小野博宣の目》 富士山2泊3日
-東京・安心安全富士登山2023-ステップ7(230728)
蒼天(そうてん)の富士山山頂に、「さくらさくら」のメロディーが響いた。
篠笛の流麗な音色だ。たまたま居合わせた登山者は「さくらの曲だ」「どこから聞こえるの」と首を傾げた。
物陰に隠れるようにして吹いていたのは、参加者のお一人・小松原共子さん(73)だ。
「日本の歌ですから、日本で一番高いところで吹くのが夢でした。夢が叶ってよかった」と笑った。「(富士登山は)娘に誘われていたのですが、あきらめていました。ここ10年は」と語る。
しかし、まいたび(毎日新聞旅行)の初心者向け講座「安心安全富士登山教室」の告知を見て、「訓練を重ねれば行けるかもしれない」と思い立ったという。
ステップ1の高尾山から娘夫婦と参加してきた。
「3人でとても楽しい月日でした。人生最大のイベントになりました」と満面の笑みだ。
富士山教室の参加者19人は、23年7月29日午前4時半、7合目の山小屋・日の出館(海抜2720m)を出立した。
先頭を歩くのは、岡野明子・登山ガイドだ。
夜明け前の薄明りの中、「一定のペースでゆっくり歩きます。前の人と(の間隔が)空いても、あわてて追いかけないでください。岩場に差し掛かれば(歩くのがゆっくりになり)、必ず追いつけます」と語りかけた。
登山道は岩場が連続して現れる。
両手で岩をつかみ、腕の力で身体を支える場面もあった。
4時42分、雲間から曙光が射した。
「ご来光です。足場の良いところで見ましょう」との声がかかった。
皆、カメラやスマホをまばゆい光に向けた。
先頭を歩くのは、岡野明子・登山ガイドだ。
夜明け前の薄明りの中、「一定のペースでゆっくり歩きます。前の人と(の間隔が)空いても、あわてて追いかけないでください。岩場に差し掛かれば(歩くのがゆっくりになり)、必ず追いつけます」と語りかけた。
登山道は岩場が連続して現れる。
両手で岩をつかみ、腕の力で身体を支える場面もあった。
4時42分、雲間から曙光が射した。
「ご来光です。足場の良いところで見ましょう」との声がかかった。
皆、カメラやスマホをまばゆい光に向けた。
山中湖に登る太陽
夜が明けても、黒い溶岩の斜面をよじ登り続けた。
「マイペースでいいですからね」「前の人と間隔を空けて登ってください」とアドバイスが飛んだ。
午前7時10分ごろ、山小屋・白雲荘(海抜3200m)に到着した。今宵(こよい)の宿だ。
ここで登山に不要な荷物を預け、再び山頂を目指した。
30分に一回程度のペースで休憩を挟みながら、斜面と向き合った。
「一定のペースでいいですからね」。
9合目の標識を確認し、顔を上げると山頂は間近に見える。
だが、岩の急傾斜はいよいよ厳しくなった。
息が乱れ、足元がふらつく人も。
岡野ガイドは「ファイト―!」「頑張れ!」と何度も声を張り上げた。
そして、9時56分、先頭が山頂に到達した。
2人、3人と後に続き、岡野ガイドとグータッチを交わした。
「やっと登れた」「ここが山頂ですか」と喜びと安堵の表情が広がった。
そして、全員が山頂の土を踏むことが出来た。
「マイペースでいいですからね」「前の人と間隔を空けて登ってください」とアドバイスが飛んだ。
午前7時10分ごろ、山小屋・白雲荘(海抜3200m)に到着した。今宵(こよい)の宿だ。
ここで登山に不要な荷物を預け、再び山頂を目指した。
富士山の固有種フジハタザオ。白い花が揺れていた。
30分に一回程度のペースで休憩を挟みながら、斜面と向き合った。
「一定のペースでいいですからね」。
山中湖を背負いながら
9合目の標識を確認し、顔を上げると山頂は間近に見える。
だが、岩の急傾斜はいよいよ厳しくなった。
息が乱れ、足元がふらつく人も。
岡野ガイドは「ファイト―!」「頑張れ!」と何度も声を張り上げた。
急斜面の岩場を登る
そして、9時56分、先頭が山頂に到達した。
2人、3人と後に続き、岡野ガイドとグータッチを交わした。
岡野ガイド(左)とグータッチをする参加者
「やっと登れた」「ここが山頂ですか」と喜びと安堵の表情が広がった。
そして、全員が山頂の土を踏むことが出来た。
休憩の後、山頂郵便局、最高峰の剣ケ峰を歩き、火口一周のお鉢巡りに挑戦する人もいた。
下界は猛暑日が続いているが、山頂の気温は10数度の涼しさだ。
笑顔の人々は冷涼な大気の中を、下山の途についた。
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
下界は猛暑日が続いているが、山頂の気温は10数度の涼しさだ。
笑顔の人々は冷涼な大気の中を、下山の途についた。
5合目にて全員で記念撮影
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長。