花の大雪山系を満喫
大雪山の高山植物を訪ねて

パンフレットに「ゆっくりとお花を愛でる登山です。大雪山系の高山植物がベストな時期をねらい、ロープウェイを利用して高山植物帯へ移動します。…」と掲載された新コース。
久しぶりに山岳会の先輩である花岡さんがガイドを務めるツアーに同行しました。

1エゾノツガザクラ
エゾノツガザクラ

2023年7月23日(日)1日目
早朝の羽田空港から旭川空港へ。空港出口でドライバーさんの迎えを受けて、愛山渓温泉へ。ここで自由昼食。今日は、雲井ヶ原湿原を散策。歩き出すとすぐにアリドウシラン。

2アリドウシラン
アリドウシラン

水芭蕉の花後の大きな葉がたくさん見られる場所に到着。冬眠後に熊が食べると言われる水芭蕉。冬眠中は絶食している熊。冬眠前に大量に食べた木の実などが腸内で発酵し、それらの毒素を出すために下痢などの作用のある「水芭蕉」を冬眠後に食べるのだそうです。北海道のお花畑は魅力的ですが、正直熊との遭遇は避けたい。本州でも会いたくありませんが、ヒグマはサイズが違います。
北海道の熊や鹿のサイズが大きいのは、「ベルクマンの法則」によって北に行くほど大きくなるそうです。
ツキノワグマ⇒ヒグマ⇒ホッキョクグマ。
エゾシカは屋久島のヤクシカの約2倍。
なぜ北に行くほど大きくなるのか?
答えは、「大きな器に入れたお湯の方が冷めにくい」のと同じ理由で、体温維持のためとの事。そして北に行くほど小さくなるのは、「耳」などの突出した部分。これは「アレンの法則」と言って体温を奪われるのを防ぐために、寒冷地に生息する動物は体の突出部分を小型化させたものと考えられているそうです。
3湿原を行く
湿原を行く

木道が続く湿原に出るとトキソウ。マルバモウセンゴケの白い花も見る事ができました。
そして振り返ると、愛別岳~比布(ピップ)岳~安足間(アンタロマ)岳~永山岳の山並み。

4振り向けば
振り向けば
5シロバナウツボグサ
シロバナウツボグサ

木道が1本しかなく、おまけにすれ違う場所も整備されていないのが残念です。
駐車場に戻ると、花岡ガイドが昼食時に見つけたという、コイチヤクソウの咲く場所に立ち寄りました。歩く道でもあるだろうと思ったが、ここだけだったとの事でした。私は、この先でもまた見れるだろうと写真を撮らなかった名前のわからない花やせっかく撮った写真がピンボケで同定できない等、失敗の連続・・・
短い時間ですが、湿原のお花と景色を楽しみました。今日から2連泊で協和温泉のお宿です。

7月24日(月)2日目

旭岳ロープウェイで姿見平へ。上に上がるにつれ、ガスの中。今回持参したのは、梅沢俊さんの「北海道 山の花図鑑 大雪山」。北海道新聞社から出されたこの本を購入したのは、まいたびで初めて「大雪山~トムラウシ」のテント縦走に行った帰りの新千歳空港。
花岡ガイドもスタート時にお客様に話していましたが、縦走時はロープウェイで姿見の駅に降り立つと、20kgのザックを担ぎ、「さーいくぞ」と歩き出すのですが、今回は山頂を目指さず、裾合平のお花畑をピストン。お天気はいま一つですが、お花はたくさん。気温は16.8度。猛暑の東京に比べたら天国。暑がり上野には心地よい良い気温ですが、普通の方?は涼しさを通り越して少し寒いくらいです。

6お花畑と残雪
お花畑と残雪
7裾合平へ向かいます
裾合平へ向かいます
8メアカンキンバイ
メアカンキンバイ
9エゾコザクラ
エゾコザクラ
10アオノツガザクラとエゾノツガザクラ
アオノツガザクラとエゾノツガザクラ
11イワブクロ
イワブクロ

チングルマの群落を過ぎて、しばらく行くとチングルマが穂になっているところも。日当たり・雪解けの時期や積雪量など地形によって花の状態も変わります。途中、雪渓や沢を渡る個所もあり、初級コースとはいえ、苦労された方もおられましたが、安全なコース取りでクリア。どこを行けばよいやらと躊躇していた一般の方も後に続いてこられました。ロープウェイで気軽に上がれる場所ですが、装備はしっかりしないとだめですね。
   12一面に広がるチングルマの花穂
一面に広がるチングルマの花穂
13チングルマの花も見れました
チングルマの花も見る事ができました

裾合平の手前で、昼食を食べようと立ち止まると、雨がザッと降ってきてしまいました。慌てて雨具を着込み、傘をさしての食事となってしまいました。同じ道を戻るのですが、登山道もあっという間に水たまりができ始め、行きは楽々飛び石で渡れた小沢も小さなお客様は少し大変。サポートさせていただきました。
   14マルバシモツケ
マルバシモツケ
15ホソバノキソチドリ
ホソバノキソチドリ

姿見の池に立ち寄り、ロープウェイで下山。
立派なビジターセンターもありますが、皆さん濡れてしまったので、早く温泉に浸かりたいとの事で、お宿へ直行。濡れてしまった靴を乾かすために新聞紙をお宿で用意していただきました。インソールを取り出し、新聞紙を入れ替えたので、私の靴は翌日には乾きました。

7月25日(火)3日目
層雲峡からロープウェイとリフトで黒岳7合目へ。リフトを降りると目の前に、チシマノキンバイソウ。
   16チシマノキンバイソウ
チシマノキンバイソウ

前日の雨で雨具の防水に不安な方や、無理しないとの判断をされた方はここで戻ることに。残ったメンバーは雨にも負けず山頂を目指します。下山してくる方は皆さん「上は風が強いよ」と言われます。
「山頂にはコマクサが咲いていたよ。」との情報も。

17カラフトイチヤクソウ
カラフトイチヤクソウ
18ハクセンナズナ
ハクセンナズナ

雨はさほど強くならず、降ったり止んだり。そして明るくなって太陽の暖かさを感じる場面も。
そして一瞬青空も広がり、これでお天気も回復かと思ったものの、残念ながら願いはかなわず。
次々に現れるお花を楽しみながら登ります。

19トカチフウロ
トカチフウロ
20ダイセツトリカブト
ダイセツトリカブト
21カムイレイジンソウ?
カムイレイジンソウ?

トカチフウロは、チシマフウロより淡い花色。現地ではエゾレイジンソウと思ったのですが、帰宅して調べるとがく片先端部に紫褐色の斑紋があるのは、「カムイレイジンソウ」との記載がありました。もう少し開花が進まないと、私でははっきりわかりません。また山で会えたらじっくり観察してみたいです。
   22エゾヒメクワガタ
エゾヒメクワガタ
23黒岳山頂
黒岳山頂

山頂近くなっても、それほど強い風は吹いていません。しかし、山頂に立つと強風!コマクサはどこかな?と探していると、岩陰にエゾツツジ。周りを見渡してみると、コマクサやサマニヨモギ、チシマツガザクラ等々。
   24エゾツツジ
エゾツツジ

ここまでお花もたくさんで、予定していたより時間がかかり下山が遅れそうです。山頂からドライバーさんに連絡。花がたくさんあるとどうしても先に進むのに時間がかかります。7合目からリフトとロープウェイを乗り継ぎバスへ。すぐ近くにある層雲峡温泉で入浴と遅めの自由昼食を済ませ、旭川空港へ。
 あえて山頂を目指さず花を満喫!
そのようなツアーも「動く植物図鑑」と上野が勝手に言っている花岡ガイドが同行するから楽しめたのではないでしょうか?
北海道の花に出会える機会は限られますが日々勉強。花の世界は奥深く、先輩には及びませんが、花の名前を少しでも正確にお伝えできるように頑張ります。

【写真・文 上野ひろみ】
日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージ1
信州登山案内人


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